年始に泊まったホテルで大活躍
なぜ、そこまで電気鍋にこだわるかというと、それはひとり暮らしだから。火の気のないマンションに帰ってすぐに台所で夕飯の用意をするって当たり前のことがつらくなってきたの。2年前といえば19年共に暮らしたオス猫が夏に亡くなった年。「お~い、ただいまぁ~」と声をかける相手がいないことに耐えられなかったのかも。だから1200円の安鍋もそれなりの役割を果たしてくれたのよね。
で、今度の深型ホットプレートだけど、年始に泊まった銀座のはずれのビジネスホテルで大活躍よ。具材が入ってそのまま火にかけられるひとり用のアルミ鍋がスーパーで売っているじゃない。あれを丸ごと入れて、豚こまやしめじを足すのよ。こうするとかなりの豪華版になって、しかも1000円以内。
翌日は豚肉とキャベツを蒸し焼きにした。調味料は塩だけにするとキャベツの甘味がグンと引き立つの。
で、ここからがこの鍋のすごさなの。キャべツを全部食べた後、ホテルのユニットバスの手洗いで洗おうかとも思ったけど、小さな食べかすが詰まったりしたらホテルに迷惑じゃない? その前に紙タオルで拭こうと思い立ってそうしたら、あらら、すっかりキレイになって、このまま次も使えるじゃないの!
それで小さなステーキ肉を焼き、翌日は魚も焼き、さっと拭いて最後はみそ汁を作ってしめるって、やりたい放題よ。
臭いや煙は鍋にふたをしちゃうとほとんど出ないのも◎。もちろんお風呂の換気扇はつけっぱなしにしたけどね。
再開発の渋谷の裏の顔を“覗き見”
そんなわけですっかり気をよくした私は、年の初めに『新春スリバチ学会、渋谷川を歩く』に若い友だち、G夫妻を誘って参加したの。スリバチ学会は、ひと言で言えば『ブラタモリ』をリアル体験できる会で、親分の皆川典久さんの後をついて行くと、面白いことがいろいろとあるのよ。この日も再開発の渋谷の裏の顔を足で見て歩いて、それはそれは楽しかったんだけど、それだけじゃない。
同行のGさんは大手ゼネコンの営業マンで何度もお酒を飲んだ仲。その夜も渋谷駅周辺で、「じゃ、ちょっと一杯」ということになったのよ。で、お酒がすすむうちに、若い彼の腕に光る時計が気になって仕方がなくなったの。
「あ、これですか? 最新のアップルウォッチのシリーズ7で、買ったばかりなんですよ」と、グイと腕を突き出して見せてくれたの。
「知ってますよね。アップルウォッチ」
「いや、知らない。スマートウォッチは買っただけで一度も使わずに捨てたよ」
「これ、すごいですよ。まずね」
電気鍋が“当たり”だった私は、身を乗り出してそのアップルウォッチとやらの効能、効用を聞いてすっかりトリコ。でもお値段にがく然。
深型ホットプレートもそうだけど、スリバチ学会、そしてアップルウォッチと、東京暮らしには何かと刺激があるのよね。介護生活にはなかなか戻れないかな…。
で、続きはまた改めて。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
【282】93歳母ちゃんの世話を離れて得た「ひとり時間」と複雑な気持ちも