
春に悩まされる人も多い花粉症。今年は2月中旬からスギ花粉の飛散がすでに始まっています。花粉症のくしゃみや鼻水は薬で対応するしかない、と思っていませんか? 漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、花粉に負けない体作りを助ける食品があるそうです。さらに、症状の改善が期待できる漢方薬も小原さんに教えてもらいました。
* * *
なぜ花粉症になる?
花粉症は、花粉を浴びてもすぐには発症しません。しかし、患者数は年々増え、症状の悪化を訴える人もいます。ではどのようなメカニズムで花粉症になり、どうして患者が増加しているのでしょうか。

アレルギー症状のメカニズム
花粉症はアレルギーの一種で、免疫が深く関係しています。免疫とは、細菌やウイルス、異物などから身を守るために体に備えられている仕組みです。何らかの影響で免疫機能に異常が起こり、くしゃみや発疹といった症状にあらわれることをアレルギーといいます。
花粉症は免疫反応が花粉を異物だと誤認し、過剰に反応している状態です。花粉を体の外に出すために、くしゃみで吹き飛ばそうとしたり、鼻水や涙で洗い流そうとしたりしているのです。
花粉症の人が増加している理由
近年では、花粉症患者の増加、低年齢化が目立ち、花粉量や空気中の汚染物質の増加など環境の変化との関連が指摘されています。また、食事をはじめとした生活習慣の欧米化、腸内細菌の変化などの影響も大きいと考えられています。そのため、体質の改善が花粉症への根本的なアプローチともいえるのです。
花粉症に内側からアプローチできる食べ物
食生活で体質改善し、花粉症の発症を遅らせたり、症状の緩和を目指したりする際に重要なのは「腸内環境の改善」です。腸内環境を整えることで、免疫機能を正常に働かせることにつながるからです。腸内環境の改善に有効な具体的な食品と特徴を紹介します。
高菜漬け

高菜漬けは高菜と塩、ウコンを120日以上漬けて、乳酸発酵させた食品です。乳酸菌は善玉菌の一種で、腸内を酸性に保ち悪玉菌が増殖するのを抑える働きがあります。この菌を腸内に定着させるためには、毎日摂り続けることが大切です。
なお、浅漬けや調味液漬けの場合は含まれる乳酸菌がわずかなので、原材料が高菜、塩、ウコンのみのシンプルなものや、古漬けと表記されているものを選んで購入しましょう。高菜漬けはそのままごはんと食べるほか、細かく刻み甘辛く味付けした油炒めにしてもおいしく食べられます。
白米

お米に含まれる糖質の一部は、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)とよばれ、消化・吸収されずに腸まで届きます。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の特徴をもち、腸内の余分な糖や脂質を吸着して排出したり、腸内の善玉菌のエサになったりするので腸内環境の改善に効果的です。
さらに、でんぷんの摂取量が増えると大腸疾患の発症率が下がるとの報告もあるため、腸の健康を守るためにも、ごはんは積極的に食べたい食品といえます。
具だくさん味噌汁

旬の新鮮な野菜には抗酸化物質が多く含まれています。抗酸化物質は活性酸素による刺激から細胞を守る作用があり、健全な腸を保つのに役立ちます。数種類の野菜を入れる具だくさん味噌汁なら、少し煮込むことで抗酸化力を向上させ、汁に流れ出た成分も余さず摂れます。
冬から初春の寒い時期であれば、ほうれん草、ブロッコリー、大根、かぶ、白菜などを使うのがおすすめです。
花粉症は「漢方」で内側からケア
食事を工夫しているのにもかかわらず、花粉症のつらい症状が続く場合は、漢方薬を使うのも選択肢の1つです。鼻水や鼻づまり、くしゃみなどを治す漢方薬やアレルギー体質を改善する漢方薬は、耳鼻咽喉科でも花粉症に処方されています。また、眠くなるなどの副作用が少ないのも漢方薬の特徴です。

花粉症に悩む人へおすすめの漢方薬2つ
・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
水分代謝を整える働きをする小青竜湯は、水っぽい鼻水やくしゃみなど、鼻症状の改善に用いられます。
・越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)
越婢加朮湯はこもった熱を発散させ、炎症や痛みを和らげます。鼻アレルギー、気管支炎、目の炎症にも応用されることがあります。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。つらい症状を抑えなると同時に、花粉症にならない体づくりも目指します。
そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、効果が見込めないだけでなく、副作用が起こるということもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
食事で花粉症の症状緩和を目指すには、ごはんと味噌汁を中心にした日本型食生活で腸内環境を改善するのが近道です。また、専門家に相談して漢方薬の助けを借りるという方法もあります。自分に合った方法を取り入れ、春を快適に過ごしましょう!
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。