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“冷凍焼け”も今は昔! 冷凍技術が進化した冷蔵庫は30万円超えでも“買い”か

ドアの開いた三菱電機『MR-MZ60H』があるキッチン
冷凍技術が進化した家庭用冷凍庫が増えている(写真は三菱電機『MR-MZ60H』。カチカチにならず切りやすい硬さに凍らせることができる)
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新年度を前に、冷蔵庫の新調を考えている人もいるのではないでしょうか。購入時にチェックしたいポイントの1つが、「冷凍技術」。少し前までの冷凍技術といえば、食品を冷凍保存するとひとかたまりになってはがすのに苦労したり、“冷凍焼け”して食品本来の味や食感が損なわれたりと、使い勝手がよくないイメージでした。ところが現在は、こうした課題がクリアされ、冷凍技術が格段と進化したそう。その背景とは? 家電ライターの田中真紀子さんに教えてもらいました。

プロが使う冷凍技術のノウハウや知見が家庭用冷凍庫に

「進化の理由の1つは、冷凍庫の需要が急増してきていること。共働き家庭の普及で、『夕飯作りを簡単に済ませたい』、『お弁当に入れる総菜や留守番する子供が手軽に食べられるものを週末にまとめ買いしたい』と、食品を長期保存する家庭が増えました。ただその一方で、『食品を冷凍保存すると味が落ちる』という不満も。

そこでメーカーが採用したのが、年々向上している業務用冷凍機の技術です。最近の市販の冷凍食品はクオリティが高いと評判ですが、その理由の1つに、業務用の冷凍技術が向上したことが挙げられるほど」(田中さん・以下同)

冷凍の二大課題「味や風味が損なわれる」「ひとかたまりになる」が解消!

その冷凍技術とは――。

「最大の特徴は、食品の細胞破壊を抑えて食感をキープできること。急速冷凍することで、栄養もおいしさもほぼ失われず、家で作ったおかずも市販の冷凍食品のようにおいしく解凍できます。

さらに『瞬冷凍』という技術を搭載しているメーカーも。食品を冷凍すると霜がついて、解凍時に水っぽくなってしまいがちですが、その原因の1つは、冷凍時に食品の表面から中心に向かって徐々に針状の結晶が生成され、細胞にダメージを与えてしまうこと。

そこで過冷却の現象を応用。食品全体に一瞬で氷核を形成し、均一に微粒子の氷結晶を生成することで、細胞破壊を抑えて解凍しても食感やうまみ成分を維持する技術です。これによって冷凍に不向きなじゃがいもやたけのこも、食感そのままにおいしく保存できます。

そのほか、熱伝導性の高いアルミプレートを使ってすばやく凍らせる技術、野菜は細胞を壊さないようじっくり冷凍し、温かいものは一気に冷凍する技術など、メーカーによってさまざまな技術を搭載しています」

パナソニックの冷蔵庫のはやうま冷凍を利用したお肉の冷凍
パナソニックの冷蔵庫には業務用レベルの急速冷凍機能が備わっている
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こうした技術のおかげで、野菜でもきのこでも固まらずにパラパラした状態で冷凍でき、少しずつ使うことが可能に。魚肉やチーズなども切り分けがしやすく、小分けに冷凍する手間も省けます。もちろん味や風味も損なわれないといいます。冷凍に抱いていたマイナスイメージは、もはや最新の冷蔵庫にはないのです。

早速、田中さんが注目する冷凍技術のモデルを見てみましょう。

【1】パナソニック『NR-F658WPX』

パナソニック『NR-F658WPX』 
搭載の『はやうま冷凍』機能なら、通常の約5倍のスピードで冷凍。パナソニック『NR-F658WPX』(650L・フレンチドア〈観音開き〉タイプ)約39~約47万円(税込)※3月3日時点の実勢価格 編集部調べ
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食事の準備を1分でも短くしたい多忙な家庭におすすめなのが、パナソニック『NR-F658WPX』(650L・フレンチドア〈観音開き〉タイプ)。

食材の細胞を壊さない急速冷凍を搭載

「業務用冷凍機も手がけるパナソニックの冷蔵庫の最上位モデル。こちらに搭載されたのが、業務用レベルの急速冷凍(※)を実現する『はやうま冷凍』です。クーリングアシストルームで大風量の冷気シャワーを集中的に浴びせることで、通常の約5倍のスピードで冷凍。そのため食材の細胞の破壊を抑えて、解凍加熱後もおいしさをキープします」

※パナソニック調べ。運転状況や食品の種類・状態や量によって効果が異なります。

野菜などがパラパラな状態で冷凍できるのはもちろん、唐揚げなどの揚げ物も解凍後は衣はサクッ、中はジューシーなまま食べられます。また、クーリングアシストルームを利用して、すばやく食材を冷ますことができる「はやうま冷却」にも要注目。

パナソニックの冷蔵庫のはやうま冷凍を利用したお弁当の冷凍
お弁当など、早く冷ましたい食材のあら熱取りにも便利
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「お弁当や炒め玉ねぎ、離乳食など、早く冷ましたい食材のあら熱取りに便利。お弁当は約3分であら熱が取れます。共働きや子育てで忙しく、料理にも時短や効率を求めつつ手作りしたい人、休みの日に作り置きした総菜を平日においしく食べたい人におすすめです」

【2】 三菱電機『MR-MZ60H』

三菱電機『MR-MZ60H』
三菱電機『MR-MZ60H』(602L・フレンチドア〈観音開き〉タイプ)約36万5000円~約47万3000円(税込)※3月3日時点の実勢価格 編集部調べ
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解凍が苦手な人にぜひおすすめしたいのが、三菱電機『MR-MZ60H』(602L・フレンチドア〈観音開き〉タイプ)。

使いたい分だけ切り分けられ、小分けの手間なし

「三菱独自の冷凍技術といえば、やはり『切れちゃう瞬冷凍A.I.』。通常の冷凍温度より高い-7℃で凍らせることで、カチカチにならず切りやすい硬さに凍らせることができます。例えばひき肉が包丁でサクッと切れますし、まとめて作ってパッドに入れたミートソースをスプーンですくうことができます。

魚の切り身も3切れ1パックをそのまま入れても、簡単にほぐすことができます。使いたい分だけ使えるので事前の小分けが不要になり、手間が軽減されるのが助かります」

ドアの開いた三菱電機『MR-MZ60H』があるキッチン
『瞬冷凍室』の扉の開閉に合わせて自動で運転を開始するから、使いこなしもグンと簡単に
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この技術で冷凍すると、肉や魚は約3週間、野菜や生食用の魚は約2週間の目安で保存できます。例えば肉や魚をセールのときなどに多めに買ってきて、その都度切り分けて使うこともでき、経済的です。もちろん、使い勝手もよし。

「従来モデルでは、『切れちゃう瞬冷凍』機能を使うには、その都度パネル操作をする必要がありました。それが現行モデルはAI(人工知能)が今後の使い方を予測し、『瞬冷凍室』の扉の開閉に合わせて自動で運転を開始。使いこなしもグンと簡単になりました。今まで解凍が苦手で冷凍室を上手に使いこなせなかった人にぜひ使ってほしい機能です」

さらに過冷却現象を応用した「瞬冷凍」技術により、肉や魚の解凍時のドリップ(冷凍の肉や魚を解凍した際に食品の内部から分離して出る液体)が抑えられ、水分はもちろん、うまみや栄養分も損なわれないそうです。

どちらの商品も本体価格は高額ですが、食品を無駄なく使い切れ、それもおいしく食べられることを考えると、長く愛用できそうです。特にまとめ買いやまとめ調理で冷凍技術をフル活用したい人には“いいお買い物”になるかもしれません。

◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

田中真紀子
家電ライターの田中真紀子さん
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白物家電・美容家電を専門とするライター。雑誌やウェブなどの多くのメディアで、新製品を始めさまざまな家電についてレビューを執筆している。https://makiko-beautifullife.com

取材・文/桜田容子

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