
大事な家族である愛犬。体形をコントロールして健康に導くのも飼い主の役割のひとつですが、なかなか難しいものですよね。そこで、『獣医師が考案した一汁一菜長生き犬ごはん』(世界文化社)の著者で獣医師の林美彩さんと古山範子さんから、肥満のワンコ、太れないワンコの気をつけるべき食事について学びます。食事を与えるときの参考にしてみてください。
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ワンコの理想の体形をチェック!
同じ犬種でも骨格差があるので、個々によって適正体重はバラバラです。理想的なのは過剰な脂肪がなく、肋骨が触れる程度の体形。さらに、横から見て腹部がつり上がっているとよいでしょう。
もし愛犬の体形に心配があるならば、食事の内容、食べさせ方、与え方を工夫する必要があります。どんなことをすればよいのか、ご紹介します。
肥満のワンコはここに気をつける
ワンコがぽっちゃりとする原因は、人間と同じく運動不足とカロリーの摂りすぎが主。食事が適正量だとしても、おやつを与えすぎてカロリーオーバーになっているということもあり得ます。シニアのワンコは、あまり運動ができずに太ったということも考えられるでしょう。

肥満には、心臓病、糖尿病、高血圧、高脂血症、関節疾患、尿路結石などの病気のリスクがあります。まずは食事から、体形コントロールを意識してみましょう。
食べさせ方の工夫の方法
低カロリーの食材を使い、ゆっくりと食べさせることで、少量でも満腹のサインが脳に伝わりやすく、食欲が抑えやすくなります。
また、とろみをつけると満腹感が出やすく、暴飲暴食を抑えることができるのでおすすめです。
おすすめ食材と与え方

脂身の少ない肉や魚、野菜を多めにして、炭水化物はできるだけ控えましょう。炭水化物は、食後血糖値が上がりづらい低GI食品の春雨、オートミール、玄米、さつまいもなどを選んで与えるといいですよ。また、しらたきなど低カロリーの食材ででかさましするのも◎です。
太れないワンコはここに気をつける
肋骨や腰椎、骨盤が上や横から容易に見えたり、腰のくびれと腹部の釣り上がりが顕著なワンコは、太れないタイプの可能性があります。

年齢や体重に応じた量を与えていても、運動量が多い場合は消費カロリーが摂取カロリーを上回って太れないこともありますが、場合によっては脂肪や筋肉量の減少、食欲や吸収能力の低下によることも考えられます。
もしも「元気がない」「食欲がない」など思い当たることがあったら、病院などで原因を突き止めて、早めの対処をしましょう。
食べさせ方の工夫の方法
ゆっくり食べさせる、食事の回数を分ける、消化酵素を追加する(サプリメントでも可)などをして、経過を見てみましょう。
太れないワンコは、栄養失調や骨密度の低下、筋肉量が少ないことによる代謝の低下の恐れがあるので、食事を適正量をとれているか確認を。
おすすめ食材と与え方
消化酵素を豊富に含む大根やカブなどの野菜を取り入れ、炭水化物は消化しやすいように、お粥にしたものを少し増やしましょう。

粘膜の強化ができるビタミンA(緑黄色野菜など)、亜鉛(かき・帆立貝・レバーなど)やビタミンD(きくらげなど)を増やすといいですよ。その他、干ししいたけやししゃも、しらすなどもおすすめです。
春の栄養たっぷりパスタ&ポタージュのレシピ
鶏レバーはカロリーや糖質は低めなのに、鉄分やビタミンAなどが豊富で栄養たっぷり。取り分けてから味付けをすれば、飼い主も一緒に食べられます。5kgのワンコの場合に2食分の分量です。
ワンコには人肌に冷ましてから与えましょう。飼い主が食べるときは、どちらのレシピにも塩・こしょうをくわえて混ぜ合わせ、味を引き立てましょう。「春菊と鶏レバーのパスタ」には、粉チーズをたっぷりかけてアレンジしてもおいしいですよ。

春菊と鶏レバーのパスタ(一菜)
《材料》
春菊…30g 鶏レバー…10g 鶏もも肉(ブロック)…130g マカロニ(グルテンフリーならばなおよい)…25g くるみ…4g オリーブオイル…小さじ1
《作り方》
【1】マカロニは、表示時間より多めに茹でてやわらかくする。マカロニが長い場合はカットする。鶏もも肉は1cm角に切る。
【2】マカロニを取り出した鍋に春菊とレバーを入れて茹で、フードプロセッサーに移し、くるみと茹で汁大さじ1を加えてペースト状にする。
【3】オリーブオイルをひいたフライパンで鶏もも肉を炒め、フライパンにマカロニと【2】のペーストを入れる。ペーストが全体に絡んだら完成。
そら豆のポタージュ(一汁)
《材料》
豆乳…100ml そら豆…12g(2〜3個) じゃがいも…40g 水…100ml
《作り方》
【1】そら豆、じゃがいもの皮をむく。
【2】水100mlと【1】を鍋に入れて火を通し、豆乳を加えてからブレンダーでまぜて完成。
◆教えてくれたのは:獣医師・林美彩さん
獣医保健ソーシャルワーク協会所属。学生時代に飼っていた愛犬・茜を迎えたことをきっかけに、手作り食を学ぶ。大学卒業後は、西洋医学、代替療法両方の動物病院の勤務、サプリメント会社での相談対応に従事。西洋医学と代替療法の良いところを融合させた治療、病気にならない体作り、家庭でできるケアを広めるため、2018年3月に「chicoどうぶつ診療所」を開院。https://www.chicoah.com/
◆獣医師・古山範子さん
麻布大学獣医学科卒業。中山動物病院(茅ヶ崎市)非常勤講師。ペットのためのホリスティックケアセラピスト養成講座講師。日本獣医ホメオパシー学会認定獣医師。日本ペット栄養学会会員。日本獣医動物行動研究会会員。国際薬膳師。獣医保健ソーシャルワーク協会所属。愛猫4匹と暮らし、手作り食を中心に犬猫の養生法を提案する、犬猫養生Harmonyを主宰。https://ameblo.jp/animal-harmony/