
YouTubeを通じて、時短術やロジカルに生きる知恵を惜しみなく発信している経済評論家の勝間和代さん(53歳)。そんな勝間さんの著書『勝間式 金持ちになる読書法』(宝島社)が話題を集めています。「読書量の累積が、金持ちになるための簡単でいちばん手っ取り早い方法のひとつ」と説く勝間さんに、その読書術の具体的な実践方法について教えていただきました。
「耳読」をしながら1日4万字を目標に
読書により物語を楽しんだり、幅広い知識を知ったりすることは人生を豊かにするとはわかっていても、本を開いただけで眠くなってしまう読書嫌いの人もいる。そんな読書に高いハードルを感じている人に、勝間さんは「耳読」をすすめる。
「Audible(プロのナレーターが朗読した本を音声で聴けるアマゾンのサービス)などのオーディオブックを、家事の合間や移動の隙間時間などに流して聞いてみるのがおすすめです。まずは『チーズはどこへ消えた』(スペンサー・ジョンソン著/扶桑社/全世界で累計2800万部を突破した世界的ベストセラーのビジネス書)のような、非常に薄くて簡単な内容の本がいいですね。
Audible の推奨スピードは慣れや個人差がありますが、あまりにも速いと人の声として不愉快に聞こえてしまうので、快適なレベル、例えば私なら2倍~2.5倍(編集部注:2倍~2.5倍は一般的には相当速いスピード)ぐらいまでは快適に聞くことができます。2.5倍にしても聞き取れるナレーターさんもいれば、2倍にしても聞き取りにくい人もいるのでナレーターさん次第なのですが、1.7倍くらいだと私にはちょっと遅いんですよね」(勝間さん・以下同)

良書の確率が高いという翻訳書を読みこなすコツ
和書に比べて出版までのハードルが高いとされ、良書に巡り合う確率が高いという理由で、読む本に悩む人に勝間さんは翻訳書をすすめている。読書習慣のない人にとっては、翻訳書は難解に感じてしまうが、読むのにはコツがあるという。
「翻訳書というと、皆さん、日本語をそのまま追いかけがちなのですが、そうではなく、その裏にある著者が言いたいことの真意を追いかけるようにすると、多少おかしな日本語でもスルーできるようになります。外国のかたが話す日本語って、ちょっと変だとしてもたいして気になりませんよね? この人は何を言おうとしているんだろうと思って、意味を探るじゃないですか。そんなイメージで、翻訳書の日本語に違和感がある点は割り切って読んでみるといいと思います」
翻訳書も含めて読書に慣れてきたら週に1冊をまず目指したい。
「紙の本でも耳読でも電子書籍でもなんでもいいので、毎日15分から30分ずつ読んでいけば、週に1冊は読めます。それも達成できたら、今度は1日4万字を目標に。時間にすると3時間ぐらいだと思いますが、それだと2~3日に1冊のペースで読むことができます。1日1万歩を歩くことを目標にしている人も多いですが、読書もそれと同じように考えればいいんです」
過剰期待せず、読書は気負わず「だいたい」でいい
Audibleは再生スピードも好みのスピードに設定でき、「ながら読書」に適しているが、気になったことをメモしたり、知らない言葉が出てきたときは、いちいち朗読を止めてから調べなければならない。その点が紙の本に比べて少し厄介だが、勝間さんはそんなデメリットを一蹴する。

「私はAudibleを流し出したら、気になる言葉やわからない言葉が出てきても、止めずに流しっぱなしにしています。皆さんは、本に対して過剰期待しすぎているのです。端から端まで読まなくていいし、片っ端から忘れてもいい。だいたいでいいんですよ。1冊の本が丸々すべて素晴らしいなんてことはまずありません。1行でも2行でも素晴らしいと思う点があれば、その本は素晴らしい本なのです。
テレビを見たりラジオを聞いたりしている時に、聞き逃したと思っても戻って聞くことはできませんよね。そもそもテレビやラジオを、明日すぐに役に立つだろうと期待して見たり聞いたりはしていないと思います。だから本も質より量を聞いて、『なんとなく役に立てばいいや』ぐらいのゆるい感じで十分。量を読めば読むほど、意識的にも無意識的にも情報が蓄積されていくという感じです。
ちなみに私がここ数日読んでいるのは、将来どんな役に立つのかわからない本ばかりです(笑い)。ここ2日間はヒトラーの自伝みたいなものをずっと読んでいましたし、今日読み始めたのは、歴史をエネルギーという観点から見つめた本です。ヒトラーの話は結構面白かったのでサクサク聞き進められたし、エネルギーの本もまあまあ面白かったのですが、少し前に読み始めた“死生観の無意識”に関する本はなかなか進まなくて、そろそろやめようかなと思っています」
「速読」は言葉をかたまりで解釈するのがカギ
1日に平均2冊というペースで本を読み切るために勝間さんがすすめているのが、「速読」や「フォトリーディング」(脳の活字情報の処理能力を活かした読書法)だ。どちらも専門のトレーニング機関があるほど本格的なテクニックだが、初心者が始めるにはまず意識すべきことがあるという。

「言葉を一語一語、解釈しなくていいんです。そうではなく、言葉のかたまりの中で筆者が何を言いたいのかということを解釈する習慣を、普段の会話から練習したほうがいいと思います。だから言語外(非言語)コミュニケーションが苦手な人はたいてい本を読むのも苦手で、言葉をその言葉通りにしか受け止められない人が多い傾向にあります。
誰だって言っていることと考えていることは違うし、言いたいことをすべて言葉にできるわけじゃないですよね。翻訳者を含め、言葉自体を読み過ぎている人が多いと私は思っています。書いてある言葉の裏側で、著者が何を言いたいのかという言語外コミュニケーションについて想像する力を養うことが大切です。
これは慣れれば必ずできるようになります。普段の会話自体が基本的には言語外コミュニケーションですから、相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、言葉の裏側にある思考を読み取るトレーニングを続ければ速読にもつながっていきます」
コツコツ実践してこそ初めて意味がある
ここまで読書法の実践テクニックについて教えてもらったが、「ただ読んだだけでは、読書する意味はない」という。その“言葉の裏側”とは――。

「読書で知り得た情報に基づいてコツコツと行動と実践を積み重ねていくことをしていくことが大事。それはそんなに難しいことではなくて、1日5分、いえ3分でもいいので、“ちょっと学んだらちょっとやってみようかな”というレベル。例えば“脳を鍛えるには運動しかない”と読んで学んだら、“ちょっと3分運動してみるか!”っていうそんなイメージです。
睡眠に関する本を5冊も読めば、絶対に6時間睡眠でいられなくなりますよ(笑い)。どの本にも睡眠がいちばん“安い薬”だと口を揃えて書かれていて、将来のさまざまな健康リスクに対しても、寝ることが“最良の薬”だということが理解できるようになります」

読書習慣を続けるための環境づくりが大切
勝間さんは、「耳読」をするための端末や周辺機器にもこだわりをもつ。それこそが読書習慣を続けるためのコツでもあるようだ。
「肩に掛けて使用するネックスピーカーを使っていますし、自宅の各部屋には音質にこだわったスピーカーが置いてあって、Chromecast(Google製のメディアストリーミングデバイス)を使ってそれぞれのスピーカーに音を飛ばせるようにしています。音がいいというのは案外重要で、耳読はなるべくいい音で聞いたほうがいい。音楽を聴くのと同じだと思っていただければわかりやすいでしょう。
私、スピーカーとヘッドホンにはすごくお金をかけてるかもしれないですね(笑い)。スマートフォンのスピーカー音はあまり好きじゃないので、スマホでは聞きません。要するに、快適でなければ続かないんですよ。“本を読まなきゃいけない”という義務感ではなく、“本を読みたくなる”ような環境を整えることが重要です」
◆経済評論家・勝間和代さん

1968年12月14日生まれ。東京都出身。株式会社監査と分析取締役。中央大学ビジネススクール客員教授。YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCWoiNwdr7EEjgs2waxe_QpA)
の登録者数は 22.7万人(ともに4月17日現在)。有料・無料メールマガジンを毎日配信し、3か月に一度、書籍を発行するなど精力的に活動。三女の母で、2度の離婚を経て現在は猫2匹、オカメインコ1匹と暮らす。 2021年12月に、お金の不自由さから解放される読書術を記した『勝間式 金持ちになる読書法』(宝島社)を出版。