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阿部サダヲ、岡田健史のW主演作、“殺人鬼と平凡な若者”の交流が観る人を魅了するのはなぜか?

自分の中に殺人鬼の持つ“何か”と近いものを感じる恐ろしさ

本作が観客に与えるのは、禍々しい物語による恐怖だけではありません。雅也は榛村との交流を重ねていくうち、彼に魅了されます。雅也は、連続殺人鬼という特異な存在と接点を持ったことで自分も特別だと思い込んでしまう若者です。これこそ本当の恐怖。相手が連続殺人鬼だとは言わずとも、似たような経験のある人は多いのではないでしょうか。

「死刑にいたる病」劇中写真
(c)2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会
写真13枚

自分の生活の範疇からはみ出した存在、自分の理解を超えた存在への憧れは、誰しも持ったことがあると思います。だからこそ私たちの社会には、善人や悪人が登場する創作物が存在するのです。そして時にそれらは私たちに間違った道を歩ませます。

他者から見れば誰もが”変わっている”

榛村は極悪人でありながら観客をも魅了します。それはなぜか。一つはそうした魅力的な人物として描かれ、阿部が魅力的に演じているから。もう一つは、観客を代表する雅也の存在があるからです。彼はやがて、自分の中にも榛村の持つものに近い“何か”があるのを自覚します。

「死刑にいたる病」劇中写真
(c)2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会
写真13枚

そしてここから描かれるのが本作の核。ネタバレ回避のため、これ以上の記述は控えておきたいところですが、人は誰しも、他者から見れば“変わっている”、あるいは“異常”だと映る部分を持っているのではないか、そんなことを感じずにはいられません。

「死刑にいたる病」劇中写真
(c)2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会
写真13枚

それとどう折り合いを付けていくのかが、この社会で生きていくということ。まかり間違っても他者を危険にさらすようなことがあってはなりません。映画が進むうち、あなたは雅也とともに何に気付き、何を思うでしょうか。『死刑にいたる病』という創作物を、観客自身によって“良いもの”にしたいものです。

「死刑にいたる病」劇中写真
(c)2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会
写真13枚

◆文筆家・折田侑駿

折田優駿さん
文筆家・折田侑駿さん
写真13枚

1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。http://twitter.com/cinema_walk

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