
ぐっすり眠れていて、しっかり食べているのに体がスッキリしないのは、腎臓疲労が原因かもしれません。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、腎臓を労わり、元気を取り戻すには、食事を意識するといいそうです。そこで、腎臓と体調の関係や腎臓ケアにおすすめの料理、効果が期待できる漢方薬について教えてもらいました。
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その不調「免疫低下」が原因かも
体調不良の原因の1つに免疫力の低下があります。免疫とは細菌やウイルスから体を守る防御システムです。その中心となるのは免疫細胞で、粘膜や口など全身に存在しますが、およそ7割は腸に集まっていると考えられています。

免疫が落ちているときに出やすい症状
免疫機能が低下すると以下のような症状が出やすくなります。
・下痢
・便秘
・むくみ
・肌荒れ
・のどのイガイガ
・目の充血
・疲れやすい
・口内炎やヘルペス
・風邪をひきやすく、治りづらい
病院に行くほどではないけれど、ちょっと気になる症状は体からのSOSサインかもしれません。
免疫低下は、腎臓疲労が原因?
免疫細胞は造血幹細胞が成長した細胞です。造血幹細胞は白血球や赤血球などのもとにもなる細胞で、血液と深くかかわっています。腎臓には塩分を調整して、浸透圧や血圧を調整したり、血液中の老廃物をこしとって血液をいい状態に保ったりする働きがあります。

腎臓の機能が低下すると、血液の状態が悪化し、造血幹細胞に必要な栄養素や酸素を十分に届けられなくなります。同じような状態が長引くと、全身の免疫機能に影響が及び、不調が起こる場合があるのです。
免疫向上に欠かせない栄養素&食材
腎臓は一度悪くなると元に戻りにくい臓器なので、普段から負担をかけ過ぎないことが大切です。塩分の調整を行う腎臓を労る食事で気を付けたいのは、やはり塩分なので、おいしさを保ちつつ、無理なく節塩・減塩できる料理を紹介します。
ニラ納豆

食べやすい大きさに切ったニラをさっと茹で、納豆と合わせるだけの簡単副菜メニューです。納豆のようにうま味の強い食材を使った料理は、塩分を控えてもおいしく食べることができます。
また、ニラと納豆に含まれる食物繊維には、余剰な塩分を吸着して排出する働きがあります。塩分を「減らす」と「出す」の両方から腎臓の健康にアプローチできる一品です。
具だくさん味噌汁

節塩・減塩をする人が敬遠することの多い味噌汁ですが、季節の野菜を使った具だくさん味噌汁にして汁を減らすことで、味噌の使用量を減らせます。
また、野菜に含まれるカリウムは塩分の排出を助けます。味噌汁にして加熱すると野菜のかさが減り、量を食べやすくなるのも利点です。
酢の物

酢には塩味を増強する効果があるので、塩分を控えてもおいしく食べられます。酢の物は季節の野菜のほかにも、海藻や魚介、きのこなどさまざまな食材で作れるので、サラダ感覚で作ってみてはいかがでしょうか。
しょうゆの代わりにポン酢を使うのも、味わいを損ねずに塩分を減らすことができる方法です。
漢方なら、のむだけで免疫力アップも
食事に気をつけていても体調がすぐれないときは、漢方薬を服用するという方法もあります。
血流を改善し、全身に酸素と栄養を行きわたらせることで、内臓の働きをよくして免疫を向上させるのが漢方医学の考えかたです。また、血流が改善することで、疲労感やイライラ、落ち込みなどの精神状態も同時に改善されます。
腎にはたらく漢方薬は、体調不良や疲労によって消耗した大切な栄養を補って精をつけることにより、腎をはじめとする体の機能を高め、老廃物の排出を促して体の状態を整えてくれます。

腎の不調が気になる人におすすめの漢方薬2つ
・六味丸(ろくみがん)
六味丸は弱った腎の働きを補う漢方薬です。体力があまりない、疲れやすい、尿量が減ったなどの症状の人に用います。
・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
牛車腎気丸は滋養強壮の作用がある漢方薬です。手足の冷え、むくみ、腰痛などの症状の人に用います。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
腎臓ケアで元気になる
病気ではないけどすっきりしない体調不良は、睡眠不足や全身疲労だけでなく、腎臓疲れの影響かもしれません。ごはんを中心とした塩分控えめの日本型の食事で、体の内側から疲れを癒しましょう。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。