もっと自分を大事にするということ
――短期に体重が急増するのは健康面からも心配なことですよね。ただ、他人の容姿に言及しないというマナーが浸透してきましたし、誰に言われるでもなく節度ある生活をして、自分できれいな自分を保つことが大事なのかもしれませんね。
シンシアさん:うーん、私は「きれい」という言葉を安易に使いたくないですね。なんだか、芸能人か何かみたいに容姿に優れている人のことみたいに聞こえませんか? 目指すのはそういうことじゃないから。
真理子さん:「きれい」とか「美しい」ってすごくキラキラした感じがしますよね。それよりも、清潔感のある様子、自己管理ができている様子が大事だと思います。ファッションもそう。ちゃんと体に合ったサイズ感のものを選んで、しっかりアイロンがかかっていて、靴はちゃんと磨いていて。そういうことのほうが、高級ブランドの服を着ていることよりも大事。
要はメンテナンス、自分を大事にすること、自分を構うこと。自己管理できないということは、自分のことを大事にできていないのと同じです。そういう人は、他人のことも大事にできないのではないかと思ってしまいます。
シンシアさん:そういう印象を周りに与えてしまいますよね。私はうちの娘に、「髪の毛をちゃんとしなさい」と口をすっぱくして言っていました。娘はいまだに「ママに『勉強しなさい』と言われた覚えはないけど、『髪の毛ちゃんとして』はめちゃくちゃ言われたよね」って言います(笑い)。私は娘に、髪の毛なんかのことで損してほしくなかったから。
――セルフケア、自己管理によって、感じのいい見た目でいることは、もっと意識していいんじゃないかということですね。
シンシアさん:それと、筋肉もつけられるうちにつけておいたほうがいいですね。人生で後悔は一つもないけど、もしもやり直せるなら若いうちに肩や首回り、体幹を鍛えて筋肉をつけておきたかったです(笑い)。私はパソコン仕事で利き手を特に酷使しているから、右肩が上がらないし、首も痛くて。まさか60代もこうやって仕事しているとは思ってもみなかったですから。
真理子さん:私も一時期、整体に毎週通っていました。やっぱり首と背中が痛くて。「首、ずれてますよ」って言われてぞっとしました。これもまた自分を構うっていう話と通じるんですよね。どこかに不調があっても痛くても、なんとなく面倒だったり、時間を取るのが大変だったりして、病院を受診しなかったりする人がいる。それは自分を大事にしていないということだと思います。
シンシアさん:本当にそう。今の中高年の方々は、先が読めない社会だからといって資格をたくさん取るよりも、体を鍛えたほうがいいと思います。それこそ社会が変わって定年も延びてきたし、誰が何歳まで働くことになるのか、自分が何歳まで働きたいと思うか、分からないじゃないですか。年を取っても働きたいとか何かしたいと思ったときに、それができる体でいなくちゃいけませんよね。
◆LOF Hotel Management 日本法人社長・薄井シンシアさん&井上真理子さん
薄井シンシアさん/1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う大学のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラ社に入社し、オリンピックホスピタリティー担当就任するも五輪延期により失職。2021年5月から現職。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia
井上真理子さん/大学卒業後看護師としてキャリアをスタートさせ、看護師経験10年を経て美容業界に転身。美容専門学校教員、ヘアメイク講師、フリーランスヘアメイク、エステサロン受付、注文住宅営業、製薬会社プロジェクト立ち上げ等経験。現在はフリーランスとして経営者の業務サポートや、マネジメント、企画・運営などを担当。
撮影/黒石あみ 構成/赤坂麻実、編集部
●薄井シンシアさん、心の不調を抱える人に「陰ながら応援」ではなく「具体的な支援」と考えるワケ