『六本木クラス』がリメイク文化に影響を及ぼす!?
以上述べたように、リメイク作には「埋められない課題」がありますが、中には『グッド・ドクター』(フジテレビ系/2018年/山崎賢人主演)や『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系/2018年/坂口健太郎主演)などのように、日本で高い評価を得た作品もあります。
『グッド・ドクター』は、オリジナルのチュウォン、ムン・チェウォンに負けないほど山崎賢人と上野樹里のカップリングが素晴らしく、『シグナル~』は原作にほぼ忠実になぞらえていて、伏線の丁寧な回収などは見応えがあり、多くの支持を集めました。
オリジナルが素晴らしすぎて期待はずれのリメイク作が多い中、それらは、日本的な丁寧な演出や俳優陣の細やかな演技力によって、“オリジナルとは別作品”としてリメイクの課題を感じさせなかった作品と言えるでしょう。『六本木クラス』はそうした課題をどう“解消”していくのか――その点は大きな注目ポイントです。
『六本木クラス』の成否は、今後の韓国ドラマのリメイクに関し、ひとつのターニングポイントになるかもしれません。
『梨泰院クラス』は『愛の不時着』とともに第4次韓流ブームを牽引し、韓国ドラマに縁のなかった中年男性や若年層など新たな韓流ファン層を獲得した作品です。日本のファンはより厳しい目で『六本木クラス』を見ることになるでしょう。演出から、俳優の演技、音楽まで原作と比べて評価する声がSNSに溢れるのは間違いありません。
苦笑混じりの残念作で終わるか、『グッド・ドクター』のように、本家『梨泰院クラス』とはまた別ものの良作、大作としてのちのち語られるようなものになるか――。
あまりよい評価を得られなければ、韓国ドラマの日本でのリメイクについてテレビ界で否定的な声が上がりかねません。場合によってはこれまで韓国ドラマになじみのなかった人や、アンチ韓国ドラマの人から、「本家もつまらないんでしょ」と韓国ドラマ人気に“冷や水”を浴びせられるかもしれません。『六本木クラス』がうまくいかなければ、第4次韓流ブームは終焉に向かう――それほどの重責を担っている作品だと思っています。
◆韓国エンタメライター・田名部知子
『冬のソナタ』の時代から16年、K-POP、韓国ドラマを追いかけるオタク記者。女性週刊誌やエンタメ誌を中心に執筆し、取材やプライベートで渡韓回数は100回超え。韓国の食や文化についても発信中。2018年に韓国の名門・梨花女子大学に短期語学留学し、人生2度目の女子大生を経験。twitter.com/t7joshi