エンタメ

山崎賢人が『キングダム2』で示す現在地 “マンガ実写化の王子”から時代を動かす俳優へ

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』場面写真
山崎賢人主演で話題を集める『キングダム2 遥かなる大地へ』(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚

山崎賢人さん(27歳)が主演を務めた映画『キングダム2 遥かなる大地へ』が7月15日より公開中です。2019年4月に公開され大ヒットを記録し、その年の「邦画実写作品No.1」に輝いた『キングダム』の続編である本作。新型コロナウイルスが猛威をふるう中でじっくりと時間をかけて製作され、前作には登場しなかったキャラクターを新たに迎えての壮大なスケールの作品に仕上がっています。本作の見どころや山崎さんの演技について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。

* * *

戦災孤児の少年の物語が前作以上にスペクタキュラーな合戦シーンとともに展開

漫画家・原泰久さんが「週刊ヤングジャンプ」で連載中の『キングダム』(集英社)を原作に、『アイアムアヒーロー』(2016年)や『いぬやしき』(2018年)などを手がけてきた佐藤信介監督が前作に引き続きメガホンを取った本作。

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』ポスタービジュアル
(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚

中国春秋戦国時代を舞台に、「天下の大将軍になる」という夢を抱く戦災孤児の少年の物語が、前作以上にスペクタキュラーな合戦シーンの数々とともに展開していきます。前作で大きな衝撃を受け、今回の続編を心待ちにしていたかたも多いことでしょう。多くのファンの期待に見事に応える作品になっているのではないかと思います。

舞台は前作から半年後

時は紀元前、中華・西方の国「秦」にて、王弟のクーデターにより玉座を追われた若き王・嬴政(吉沢亮)とともに内乱を鎮圧し、王座奪還の手助けをしてみせた少年・信(山崎)。今回の物語はその半年後から始まります。隣国の「魏」が国境を越え、「秦」への侵攻を開始。「魏」討伐のために歩兵として決戦の地へと向かうことになった信は、その道中で同郷の尾平(岡山天音)と尾到(三浦貴大)と再会します。

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』画像
(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚

しかし、再会を喜んでいる場合ではありません。その実力を知られていない信は、戦慣れしていない尾兄弟に加え、頼りない伍長の澤圭(濱津隆之)、そして、子どものような風貌の羌瘣(清野菜名)らと“最弱の伍(五人組)”を組むことに。軍略に優れた「魏」の総大将・呉慶(小澤征悦)を前に、信たちは本能で動く麃公将軍(豊川悦司)のもと悪戦苦闘を繰り広げることになるのです。

清野菜名、豊川悦司ら新キャストが登場!

主演の山崎さん、吉沢亮さん、橋本環奈さんら若手俳優を中心に、長澤まさみさん、本郷奏多さん、高嶋政宏さん、大沢たかおさんといった日本が誇る俳優陣が一堂に会した前作『キングダム』。今作で初登場を果たした新キャストも多く、熱き物語をさらに盛り上げています。

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』場面写真
(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』場面写真
(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚

そんな今作の中でも最重要人物ともいえるのが羌瘣です。彼女は伝説の刺客一族の出身者で、姉同然の存在を殺した仇を討つべく旅の途上で戦に参加。復讐心だけを糧に生きる悲しみを背負った存在ですが、信と出会い、やがて互いになくてはならない戦友にまで関係が発展します。この羌瘣と信のエピソードが、本作では大きく扱われているのです。

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』場面写真
(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚

これを演じるのが清野菜名さん。身体能力の高さに定評のある彼女が、スピード感あふれる柔らかく軽やかなアクションで魅せるのはもちろん、仇に対する憎しみと怒りの発露、信との交流によって見せるささやかな心境の変化の表現にも目を奪われます。

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』場面写真
(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚

さらに、尾兄弟を岡山天音さんと三浦貴大さんが、頼りない伍長の澤圭を濱津隆之さんが演じているほか、呉慶を小澤征悦さんが、麃公将軍を豊川悦司さんが担当。このような骨太の座組を圧倒的な熱量をもって率いているのが、俳優・山崎賢人の存在なのです。

山崎賢人が見せる幅広い世代へと届く演技力

山崎さんといえば、本シリーズで主演を務めるよりもずっと前からエンターテインメント界の最前線を走ってきた俳優ですが、前作『キングダム』の成功によってその地位を不動のものにしたことは疑いようがありません。ですがかつて彼は“マンガ実写化の王子”などとも呼ばれるほどマンガの実写化に挑み、そのたびに「またか」という声が上がっていたのも事実です。

しかし、マンガ実写化作品への出演を重ねることでしか得られない役へのアプローチ方法というのがあるはずですし、『羊と鋼の森』(2018年)や『劇場』(2020年)、『夏への扉 -キミのいる未来へ-』(2021年)などの文芸映画でも主演を重ねるようになったこともあり、より幅広い世代へと届く演技法を獲得しつつあるように思います。

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』場面写真
(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚

本作の序盤に用意されている合戦シーンで、雄叫びを上げて走る彼(信=山崎賢人)の姿に胸を熱くさせられたのは筆者だけではないでしょう。重要キャラである羌瘣のエピソードが丹念に扱われることによりドラマパートでの信の印象が薄れ、“アクション俳優”の肩書きをも持つ清野さんを前にすると、山崎さんのアクションに物足りなさを感じるかたも少なからずいるのではないかと思います。

役の成長に合わせて化けていく

けれども、人間離れしつつも粗野なアクションこそ、信らしさを表現しているともいえるはず。すでにご覧になったかたはお分かりでしょうが、本シリーズは今後も続いていくプロジェクト。これはまだ恐らく(原作的にも)序盤であり、この一大プロジェクトの座長を任されているという事実が、山崎さんの現在地を物語っているといえるでしょう。

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』場面写真
(C)原泰久/集英社 (C)2022映画「キングダム」製作委員会
写真10枚

信の成長にあわせて、演じる山崎さんもさらに化けていくに違いない。若手世代を代表・牽引する俳優が時代を大きく動かす瞬間にリアルタイムで立ち会えることは、非常に幸福なことなのではないでしょうか。ぜひ劇場で立ち会っていただきたいものです。

◆文筆家・折田侑駿

文筆家・折田侑駿さん
文筆家・折田侑駿さん
写真10枚

1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。https://twitter.com/yshun

●ムロツヨシの豹変ぶりが圧巻!主演映画『神は見返りを求める』で見せる胸に迫る演技

●神尾楓珠が「今もっとも将来を嘱望される俳優」と言われる所以 新作映画で見せた絶妙な「表情のさじ加減」

関連キーワード