自分の悩みを分解すると、漠然とした「怖さ」はなくなる
――生活の質が今より落ちたら嫌だなと思ったり、家族に迷惑がかかったらと考え込んでしまったり、他人の視線が気になったりするのかもしれません。
シンシアさん:人からどう思われても、痛くもかゆくもないですよ。「だから?」で済む話。
真理子さん:それにみんな、さほど他人に興味ないなって思いますね。自分のことで忙しいし、他人が何か失敗した話なんて、いつまでも覚えていないですよ。
シンシアさん:3日も経てばみんな忘れます。「(悪い意味で)目立ちたくない」とはよく聞きますが、心配しなくても目立ちません。同質性が高い日本社会、多少のことをやらかしても周りとすごく違うわけじゃない。もう少し違っていい、好きにしたらいいと思います。
真理子さん:私たちは“右向け右”の教育を受けて大人になったので、ちょっと周りと違うことをするだけで、もう全然違うことをしている気分になってしまうのかも。
でも本当は、若い世代のほうがもっと奇想天外なことをやっている。YouTubeで若い投稿者が人気になるのもそういうことですよね。ユニークなアイディアを出して、それを臆せず実行できているからだと思います。
シンシアさん:何も臆することないのに。
真理子さん:こうやって「これができないのは何を不安に思っているからなんだろう?」って突き詰めていくと、「なんだ、何でもないな。じゃあできるな」っていうことになっていきますね。
シンシアさん:悩むより考えることです。自分の悩みを分解して考える。そうすると、漠然と怖いと思っていたものやことが怖くなくなること、よくありますよ。
テレビが言っても当事者が言っても鵜呑みは禁物
――お2人は日頃、メディアやSNSなどから入ってくる情報の取捨選択はどのようにされていますか? 気を付けていることはありますか?
真理子さん:私は何か気になるニュースに接したら、一次情報を探すようにしています。SNS上の個人の言葉もそうですが、メディアも二次情報なので、すぐに全面的に信じることはしませんね。
テレビの取材を受けたけど放送では自分の意図したのと違う編集をされていたという人も身近にいますし、二次情報はある程度、警戒しながら見る必要がある。といって、当事者の言うことなら絶対かというと、それもまた違うんですよ。
人それぞれ感じ方や受け止め方が違うので、前回記事の営業職の話でいえば、「この業界で実際に営業やってる人が『地獄』って言ってるんだからそうなんだろう」と思わないほうがよくて。
シンシアさん:私は、何度目かの転職のときに、在職中に転職が決まったんですが、偶然にも私の転職する予定の会社を辞めて当時の職場で働いていた人が目の前に座っていたんですよ。その人は私が転職予定だということを知らないので、前の職場のことも普通に話すんですが、それがもうすごい悪口で(笑い)。
私もさすがに不安になってしまって、企業側に再面接を申し込みました。そこで「古い体質の会社で変わる気もないという話も聞きますが、どうなんですか?」と疑問を経営トップにぶつけたら、「これから組織改革にまさに取り組むところで」という答えだったので、「だったら組織を変えようとしている証拠を3つ挙げられますか?」とさらに質問して。
その企業は、最新の人事でこのような異色の人材を重要ポストにつけたとか、具体例を示してくれたので、私も納得して転職できました。そして実際、元同僚にとっては最悪の職場でも、私にとってはパラダイスでした。
真理子さん:シンシアさんの元同僚のかたの言うことは当事者からの情報でしたが、結果的にはシンシアさんにとっては真実じゃなかった。そういうことはあるんですよね。何事も合う合わないがありますし、いろんな情報にフラットに接することが大事だと思います。誰の言うことだから絶対だとか、極端なバイアスをかけるべきではないですね。
情報が一つ入ってきてもそれだけで丸ごと信じたりしない
シンシアさん:本当にそうですね。情報が一つ入ってきても、それだけで丸ごと信じたりしない。私は普段、NHKのニュース番組を見ますが、気になるニュースがあれば他局でどう報じられているのか確認します。ものによっては国内メディアと海外メディア、両方チェックしますね。
真理子さん:大事なことですよね。Twitterなんかは拡散力があるので、気を付けたいです。みんなが言っているから本当のことのように感じてしまうことがあると思うので。
2年前にトイレットペーパーが売り場から消えたときも、「トイレットペーパーが品薄になる」という誤情報が拡散されてみんなが不安になって本当に買い占め、買いだめが起きてしまった。同じようなことがもう少し小さい規模で今もたくさん起きているんじゃないかと思うんですよ。