会話をしていて、相手がどんどん気持ちよく話してくれるには、どんな聞き方をするとよいのでしょうか。聞き方や話し方に関する著書が多い雑談コミュニケーション専門家・松橋良紀さんの著書『すごい雑談力』(秀和システム)には、雑談のノウハウが網羅されています。その中から、雑談を盛り上げるためのテクニックを教えてもらいました。
雑談を盛り下げる聞き方とは
松橋さんは営業マン時代、聞き上手な姿勢が功を奏し、数々の契約を取ってきました。
「営業先では、まずお客さんが自分や身の回りのことを話し続けるのを一通り聞いてきます。相手が話し終えて『ところで今日の用事は何でしたっけ?』などとこちらに会話のバトンを振ってもらった段階で、ようやく自社商品の説明に入るのです。
この順番を守っていたおかげで、高確率で契約が取れるようになったのだと思っています。相手に共感して相手が主人公の話を聞き続ける。そうすることで、相手も心を開いてくれ、信頼関係を築けてきたのかもしれません」(松橋さん・以下同)
とはいえ、ただ適当に相槌を打って聞き流すのと、相手に楽しんで話してもらうのとでは、似ているようで大きく違います。
「いかに相手に気持ちよく、ペラペラと話し続けてもらうか。そのためには、聞く技術が不可欠です」と、松橋さんは強調します。
話を盛り下げてしまう3つのNG例
残念ながら、盛り上げようとして逆に盛り下げてしまう人も少なくありません。そんな人がやりがちなNG例は、次の3つです。
NG例【1】
相手「お盆休みは北海道に行ってきたんだ」
自分「そうなの。夏の北海道は人気だから、予約は取りづらかったんじゃない?」
「これは、質問して相手の話を引き出そうとしているように見えて、思い込みや先読みをして、自分の意見を言っているだけ、あるいは自分の意見を押し付けているようにも捉えられかねません」
NG例【2】
相手「お盆休みは北海道に行ってきたんだ」
自分「いいね。誰と行くの?」
「これは、話の腰を折る可能性が高い質問。自分の興味や関心ありきで質問しています。NG例【1】【2】ともに、相手が話したい内容であることが明らかならばいい聞き方ですが、それが分からない場合は、話の腰を折る可能性があると心得ましょう」
NG例【3】
相手「お盆休みは北海道に行ってきたんだ」
自分「いいね。私も夏の北海道は3回行ったことがあるんだ~」
「これは論外。『3回行った』と話すことで、『3回も? いいね』といった反応が返ってきて、あなた自身に話の主導権が移ってしまいかねません。これは聞き上手どころか、“話泥棒”です」
これを踏まえて、心に留めておきたいポイントは3つ。
・相手が何を言いたいのか、勝手に決めつけない。
・相手が話す前に自分の意見を言わない。
・相手が話したいと確定できないことは質問しない。
聞くときは、この3か条を忘れないようにしましょう。
では、具体的にどう返せばよかったのでしょうか。OK例はこちら。
相手「お盆休みに北海道に行ってきたんだ」
自分「あら、北海道に?」
たった一言。余計なことを言わず、ただオウム返しをして、相手が次に話したい言葉が口から出てくるのを待つのです。
オウム返しをできるだけ短く
ただし、そのままそっくりオウム返しにするのはNG。
「『あら、お盆休みに北海道に行ってきたのね』は、センテンスが長すぎます。『あら、北海道に?』と、単語を1つだけ拾うなど、自分の言葉数が少ないほど相手の話す量が増えてベターです。なぜなら、会話には反比例の法則があるから。こちらの質問が長すぎると、相手の話す量が減るのです。ですから、できるだけ短く返すことが重要です」