連日の暑さを受けて、こまめな水分補給と適度な塩分摂取を意識している人も多いでしょう。しかし、夏の水分と塩分の摂り方には注意が必要だと、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは言います。そこで、正しい水分補給の仕方と熱中症予防におすすめの漢方薬について教えてもらいました。
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水分補給の正しい知識をチェック
体内で重要な働きをする水分と塩分は、過不足があると体への負担になり不調の原因になる場合もあります。適切な水分・塩分摂取について理解しましょう。
こまめな水分補給だけでは不十分
栄養素とは違い、水の摂取基準は決められていません。一般的には1日約2400ml排泄され、同量が体に供給されていると考えられています。具体的には、飲料水から約1000ml、食事から約1100ml。そして、栄養素がエネルギーになる際に生成される代謝水が約300mlです。
つまり、水を飲んでいても食事の回数や量が少なかったり、睡眠不足やストレスの影響でエネルギー代謝が低くなっていたりすると、体の水分が不足にするリスクが高まるのです。
夏の水分補給に塩分は必要か
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人の1日あたりの塩分推定必要量は1.5g程度とされています。しかし、現在の日本人の塩分摂取量は平均で10.1g(国民健康・栄養調査)です。また、1.5gは現実的な数字ではないとし、女性は6.5g未満、男性は7.5g未満が当面の摂取目標量とされています。
つまり、一般的な日本人は、日常的に必要以上の塩分をすでに摂っているということになるのです。
塩分は体内の水分バランス調整や神経伝達に欠かせない成分ですが、多く摂り過ぎると、のどの渇きやむくみ、生活習慣病の発症などにつながるので注意が必要になります。
正しい水分補給と食事や生活のポイント
水分と塩分を適度に摂るには、食生活を俯瞰することが大切です。一度に大量に飲むのではなく、寝る前、起床時、スポーツ中やその前後、入浴の前後などに1回ごとにコップ1杯(150~250ml程度)の水を飲み、1日に必要な量、1000mlを超えるようにします。水分をこまめに摂ったうえで気をつけるべきポイントを見てみましょう。
食事は1日3回、できれば米食を
食事は1日3回食べることが大切です。暑さや湿気の影響で食欲が出ないからといって食事の回数や量を減らしてしまうと、摂れる水分も減ってしまいます。
また、ご飯と味噌汁を中心にした和食は、効率的に水分を摂ることができる献立なのでおすすめです。水分量は、ご飯1膳(150g)が90g、食パン1枚(6枚切り)は23.5gと大きな差があります。
良質な睡眠で代謝を維持
さらに、睡眠を十分にとり代謝を維持することも重要です。睡眠をサポートする栄養素として欠かせないのが「トリプトファン」。トリプトファンから、睡眠ホルモンのメラトニンの材料になるセロトニンが合成されます。
トリプトファンを含む食材には、納豆や味噌などの大豆製品、卵、牛レバー、アジ、カツオ、かぼちゃの種、チーズなどがあります。なかでも夏に旬を迎えるアジやカツオはこの時期におすすめの食材です。暑くて火を使う料理をしたくないときは、スーパーの刺身パックを利用するのがいいでしょう。
そして、トリプトファンからセロトニンを合成する際に必須なのがブドウ糖です。ブドウ糖は炭水化物を分解することで得られます。そのため、食事の際はご飯、パン、麺などの主食も欠かさず摂りましょう。
塩分補給が必要な場合
通常の食生活であれば塩分不足になることはありません。しかし、食事ができない、短時間で多量の発汗、下痢、発熱をしたときには欠乏の心配があります。
速やかに0.1~0.3%濃度の塩分と一緒に水分補給をしましょう。 塩分と一緒に水分補給する飲み物として、経口補水液やスポーツドリンクなどは手軽に飲めるのでおすすめです。また、1000mlの水に2g(ティースプーン1杯程度)の塩と、好みの量の砂糖を混ぜて作ることもできます。