
夏バテや熱中症は暑さ以外にも要因があると話す、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さん。更年期の女性はとくにホルモンバランスにも注意が必要なのだそうです。そこで、夏の不調とホルモンバランスの関係を解説してもらい、ホルモンバランスを整えるのに役立つ食材と漢方薬について聞きました。
* * *
女性ホルモンの乱れも熱中症や夏バテを悪化させる
更年期障害の代表的な症状の1つで、急に顔が熱くなったり、汗が止まらなかったりするホットフラッシュがあります。
これは、女性ホルモンのバランスが乱れ、脳から自律神経に出される体温調節の指示がうまくいかなくなり、体内に溜まった熱をスムーズに処理できなくなるため起こります。夏にこのような状態になると、熱代謝が乱れ、熱中症や夏バテが起きやすくなります。

夏のホルモンバランスを整える食事
ホルモンバランスを整えるためには、ホルモンの主な材料である脂質を食事から摂ることが有効です。
摂取カロリーの20~30%を良質な脂質から
2020 年の厚生労働省「日本人の食事摂取基準」によると、50~64歳の女性の1日の推定エネルギー必要量は1950kcalで、そのうち20~30%を脂質で摂るのがよいとされています。これは大体400~600kcalにあたり、脂質量としては40~65g程度が目安です。十分に摂れていないと、必要量のホルモンを作れない、作れても質が悪い、ということが起こります。
ダイエットを意識して脂質や食事量を減らしている人はとくに注意が必要です。また、脂質は酸化しやすいので、量より質を重視してください。食材であれば鮮度のいいものを、調理済みの物であれば、なるべくできたてを食べるようにしましょう。
食事に取り入れたい良質な脂質が摂れる食材3つ
ごま

ごまには必須脂肪酸であるリノール酸が含まれています。必須脂肪酸とは脂質の一種で、体の組織が正常に機能するうえで欠かせない成分ですが、体内では合成できないため、食べ物から摂らなければならないのです。
ほかにも、ごまはホルモンの合成に欠かせない鉄やマグネシウムなどのミネラルも豊富に含んでいます。粒のままでは消化吸収されづらいので、すりごまやごま油も活用するのがいいでしょう。
アジ

必須脂肪酸で、ホルモンバランスを司る脳の構成成分でもあるDHAが含まれているアジ。また、アジにはホルモンのもう1つの構成成分であるたんぱく質が豊富に含まれているので、良質なホルモン生成に役立ちます。
年間を通して獲れるアジですが、6~7月は脂がのり非常に食味がよくなるので、初夏ににおすすめの食材の1つです。
卵

卵は食物繊維とビタミンC以外の栄養素を含む栄養価の高い食材。とくに、細胞膜の合成に欠かせない栄養素のリン脂質が含まれています。
卵はコレステロールが心配というかたもいるかもしれません。ですが、健康な人の場合、体内のコレステロール値が一定になるように、コレステロールの摂取量に合わせて肝臓で合成されるコレステロール量が調整されるので、そこまで不安になることはありません。
女性ホルモンの調整には漢方薬もおすすめ
また、自然の生薬を組み合わせて作られる漢方薬は西洋薬よりも副作用が少なく、ホルモンバランスの乱れによる不調の改善に高い効果が期待できます。

女性ホルモンの乱れには、血管を拡張したり、血流を改善させたり、自律神経を整える漢方薬を選びます。血流の促進によって冷えのぼせを解消し、全身に栄養と酸素が運ばれることで、疲労倦怠感の改善にはたらきます。さらに、自律神経が整うことにより、ストレスによるイライラや落ち込みなどが軽減されるほか、ホットフラッシュの改善も期待できるのです。
ホルモンバランスを整えるのにおすすめの漢方薬2つ
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
通常の生活がままならないような、体力があまりない人向けの漢方薬です。のぼせや発汗、イライラ、不安など、さまざまな心身の不調に用いられます。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体力があり、比較的赤ら顔になりやすい人向けの漢方薬です。血流を改善する作用があり、月経困難、生理不順、更年期障害などに用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
楽しい夏は食事で作る
加齢によるホルモンバランスの乱れは避けられないものですが、食事で土台が整えられていると症状が軽くなったり、スムーズに改善できたりします。蒸し暑い日本の夏を楽しく過ごすためにも、普段の食事を見直してみましょう。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。