寒い冬に体を温める飲み物としてのイメージが強い甘酒ですが、管理栄養士の菊池真由子さんは、暑い夏に、ダイエットの効果を出したい人にこそ飲んでほしいといいます。菊池さんにその理由と効果的な飲み方を教えてもらいました。
甘酒には米麹と酒粕の2タイプがある
「甘酒には、米麹由来と酒粕由来の2種類があります。どちらも日本酒の原料ですが、米麹は米がお酒になる前、酒粕はお酒になったあとの産物です。アルコール発酵する前に、酵母の働きでできるのが米麹で、アルコール分は0%。妊婦さんやお子さん、お酒が弱い人におすすめです。対して、アルコール発酵が進んで作られる酒粕には、約1%のアルコール分が含まれています」(菊池さん・以下同)
疲れているときは米麹の甘酒がおすすめ
では、米麹甘酒と酒粕甘酒にはどんな違いがあるのでしょう?
「疲労回復に即効性が期待でき、飲む点滴といわれるのは米麹甘酒のこと。米に麹菌を加えることで、米に含まれるでんぷんからブドウ糖が作られます。分解された状態のブドウ糖はすぐに体や脳のエネルギー源になるため、飲む点滴と呼ばれているのです。疲れを感じたらすぐ飲むのが効果的な飲み方。また、ブドウ糖の甘みには、脳をリラックスさせて幸福感をもたらす働きもあります」
江戸時代から、夏の疲れを吹き飛ばす飲み物として重宝されてきた米麹甘酒は、過食予防やアンチエイジングにも効果的だといいます。
「栄養補給とリラックスしたいときにおすすめの米麹甘酒は、ストレスによる過食やアルコールの飲みすぎなど、神経性の過食に対しての予防に有効です。また、小腹が空いたときに飲めば腹持ちもよく、次の食事までの無駄な食欲も起こりにくい。
さらに、エルゴチオネインというビタミンCより抗酸化力の強い成分が含まれています。抗酸化作用が活発に働けば、老化の原因となる活性酸素の抑制にもつながります。アンチエイジング効果も期待できますよ」
活性酸素は紫外線を浴びると増えるので、強い紫外線がふりそそぐ夏にはおすすめのドリンクといえます。
ダイエットに効果的なのは酒粕甘酒
一方、酒粕甘酒にはどんな効果があるのでしょう?
「酒粕甘酒は、酒粕をお湯で溶いて砂糖などの甘味をまぜたもの。ダイエットに直接的効果があるレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)が豊富に含まれています。レジスタントスターチは、食物繊維と同様に腸内細菌のえさとなり腸内を整えてくれるので、ポッコリお腹や便秘の解消につながります。
他にも、血糖値の上昇の抑える、中性脂肪や血中コレステロールを下げるなどの働きも確認されています」
飲みすぎはかえって太る原因に 1日に飲むべき目安は?
では、ダイエットを考えた場合、1日にどれくらい飲めばよいのでしょう?
「飲みすぎるとカロリーを摂りすぎてしまうので、1日100~150ml。この程度なら100kcal前後ですので問題ありません。容量の多いパックタイプを買ってしまうと飲みすぎてしまうので、ミニパック125ml(約100kcal)の飲み切りがベター。
酒粕甘酒も米麹甘酒も消化吸収は良いのですが、夜は日中と比べて活動量が少なくカロリー消費も減るため、なるべく夜21時までに飲みましょう。特に、22時~深夜2時は、代謝できずに余った糖分が脂肪として体につきやすくなるのでNG」
米麹甘酒と酒粕甘酒。ダイエット、疲労回復、リラックス、改善したいお悩みに合わせて飲み分けてみてはいかがでしょう。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・菊池真由子さん
管理栄養士。健康運動指導士。NR・サプリメントアドバイザー。日本オンラインカウンセリング協会認定上級オンラインカウンセラー。大阪大学健康体育部(現・保健センター)、阪神タイガース、国立循環器病センター集団検診部(現・予防検診部)を経て、厚生労働省認定健康増進施設などで栄養アドバイザーを務める。ダイエットや生活習慣病の予防対策など、のべ1万人の栄養指導に携わる。新刊『食べて、やせる! おうちdeダイエット』(三笠書房・以下同)が2.5万部超えのヒット。10万部超えの『食べても食べても太らない法』などダイエットや美容に役立つ食事について解説した本がベストセラーに。https://www.diet-class.com/
取材・文/佐々木めぐみ