女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第29回は、寧々さんがこれまで一緒に暮らしてきた動物たちについて。
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父は、動物がとても好きだった。私が幼稚園生くらいの頃は、家にチャボが二羽いた。まだ子供だった私は、生みたての卵を取るのが本当に怖かった。
父に「取ってごらん」と言われるのだが、チャボがバタバタして騒ぐので嫌だった。母は新鮮な卵と言って喜んでいたが、私は「卵を取っておいで~」と言われるのが嫌でよく逃げていた。
小学生の頃は、大きな猫とオカメインコがいた。オカメインコの欽ちゃんは、私が朝、学校に行く時にいつも「イッテキマ!イッテキマ!」と喋っていた。「行ってきます」の最後の「す」がないのは、私が「す」を言う頃にはもう玄関の外だからだ。あの「イッテキマ」の可愛い声を、もう一度聞きたいなあ~。
誰がつけたのかドンという名前の猫は、体が大きくて、よく怪我をしていた。ドアの下に、ドン専用の出入り口があって、彼はいつも気ままに出かけていた。ご飯もドンだけじゃなく、他の猫も食べに来ていた気がする。外で遊んでいて、猫のギャーという声が聞こえると、だいたいドンと他の猫がケンカしていた。よく走って逃げているドンを見たものだ。あの必死に走って逃げるドンの姿が忘れられない。猫も大変そうだなあ~と子供心に思ったものだ。
時々、傷だらけになって帰ってきて、ドン~また負けちゃったの?と悲しかった。
ご飯で太ったウサギのラビちゃん
中高生の頃は、グレーのウサギがいた。ウサギのラビちゃんは、家族みんなが可愛いがって、ご飯をついあげすぎたからか、どんどん大きくなってウサギなのにぴょんぴょん跳べないくらいになっていた。
あごも5重あごくらいになっていた。両手を前に出して、お尻をちょっと浮かせて動いてる感じだった。ラビちゃんは、いたずらっ子で、私がコードを長くしてもらった昔のプッシュホンの電話を自分の部屋までひっぱって友達と長話しをしていると、ドスン ドスンとやって来て、いきなり電話を切る。
「ああ~また切られた!」と思って、かけ直してもまた切られる。もう~!と思っていると、だいたい父や母が「長電話いい加減にしなさい!」と怒る声が聞こえた。今思えば父や母がラビちゃんを私の部屋に行かせていたのかもしれない。
今は、モチ(トイプードル・女の子)がいてくれる。 寝室に行くと、モチも二階に駆け上がってきて、ちゃんとベッドで待っていてくれる。 そして一緒に寝てくれる。 動物は本当に家族と一緒で、いてくれるだけで嬉しい気持ちになり癒される。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。現在、出演映画『軍艦少年』が公開中。