地震や土砂災害など、いつ起こるともわからない自然災害。「食料品は最低でも1人3日分用意しておきましょう」といわれるものの、実際には充分ではない人も多いでしょう。こんなときに役立つのが、消費しながら備蓄するローリングストックです。災害対策になるうえに、節約にもなるといいます。生活コスト削減コンサルタントの生方正さんに詳しく教えてもらいました。
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食料の備蓄は「3日分」で大丈夫?
「震災は忘れた頃にやってくる」といわれますが、いざという時に慌てないためにも日ごろの準備は大切です。ところで、非常食はどれくらい用意していますか?
農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/chapter01.html)」によると「非常時の食料品は、1人あたり最低3日分。できれば1週間分の食料品と水を家族の分を用意しましょう。また、カセットコンロや缶詰なども準備しましょう」とあります。
しかし、東日本大震災で被災地に食糧支援が届き始めたのが地震発生から約8日後だったことを考えると、1週間でも充分とは言えません。私はいざというときのために、備蓄品を半年から1年分用意しています。
備蓄品は安いときにまとめ買い
私は非常食をまとめて買うようにしています。非常食となる水や缶詰などは、安売りをしているときやポイント還元率が高いときに買いそろえるとかなりお得に購入できます。たとえば、1缶20円引きの商品でも10個まとめて買ったら200円。他にもレトルト食品を1個30円引きで、10種類買ったら300円。合計500円もお得に買うことができます。
「500円くらいたいしたことない」と思うのか「500円も安く買える」と思うかは、人それぞれでしょう。しかし、「塵も積もれば山となる」というように、小さな出費の積み重ねが大きな金額になります。
現在、物価は上昇し続けています。この先も上がっていくと言われています。値上がりする前に半年分まとめて買っておけば、それだけでお得にモノを購入できたことになります。そこを意識しておくとお金の貯まるスピードが変わってきます。
トイレットペーパー、マスクパニックの際も困らない
食料品以外にも備蓄しておきたいものがあります。それはトイレットペーパーやマスク、シャンプーや歯ブラシなどの日用品です。トイレットペーパーとマスクに関しては、コロナ騒動で一時的に商品が店頭から消え、一部では高値で転売されていたことを記憶しているかたも多いでしょう。
これは極端な例かもしれませんが、今後、大災害やコロナなどのパンデミックにより、特定の商品が市場から消えないとも言い切れません。そのため、自宅にストックしておくことで、いざというときに困ることなく普段通りに生活できます。
消費しながら備蓄する「ローリングストック」
「そんなに非常食を買っても、結局使わず、消費期限が切れて捨ててしまうからもったいない」「食料品や日常品をたくさん買っても置く場所に困る」という人もいるかもしれません。これについては、日常で消費する「ローリングストック」を実践しましょう。
ローリングストックとは、普段使っている日用品や食べている食料を多めに買っておき、日常の中で消費しながら、一定の量の食料品や日用品が家庭に備蓄してある状態を保つ手法のことをいいます。食料品なら、賞味(消費)期限が短いものから消費し、食べたらまた追加していきます。
食べ慣れているものを備蓄する必要性
「非常食」だと、普段は必要なく食べないため、災害などが起こらなければ数年後に期限が切れる日がやってきます。これに対して、ローリングストックであれば普段から食べているパスタや乾麺、インスタント食品などを多めに保存しておくだけなので、消費期限が切れる前に食べることができます。
逆にいえば、普段食べ慣れていないものを非常時に食べようとしても、「味付けが合わない」「おいしくない」などの理由で余計なストレスがたまることもあります。震災時のストレスを減らすためにも、普段食べ慣れているものを少し多めに備蓄するローリングストックで上手に乗り切るのがよいでしょう。
かさばる備蓄品の上手な収納法
食料品のストック場所について、私はシンク下の収納スペースに小さな棚を設置し、その上に缶詰などを敷き詰めています。トイレットペーパーであれば、100円ショップで突っ張り棒や棚を買い、廊下やトイレのデッドスペースを活用して収納しています。
私の場合、一人暮らしなのでストックする品もそれほど多くはありませんが、家族全員分のストックをする場合は、スペースに余裕があれば専用の収納棚を作るのもおすすめです。4人家族で住んでいる知人は部屋の一部を改造し、ローリングストック用の収納棚を作って、管理しています。
ローリングストックをする習慣を持つことで、必要なものを安いときにまとめ買いしても無駄にすることなく、災害時に慌てることなく生活を続けることができるのです。
◆教えてくれたのは:生活コスト削減コンサルタント・生方正さん
うぶかた・ただし。明治大学サービス創新研究所研究員。高校卒業後に海上自衛隊に入隊。勤務の傍ら節約術を駆使しながら、国内株式、金の現物買い、在日米軍に対する不動産投資などを行い、40代で2億円の資産を築いた。現在は生活コスト削減コンサルタントと南極講演家として、メディアで活躍中。著書に『高卒自衛官が実現した40代で資産2億円をつくる方法』(あさ出版)、『攻めの節約』(WAVE出版)など。
構成/間野由利子