健康・医療

人気の漢方コンサルタントに聞く、「何時間寝たか」より「何時に寝たか」が大切な理由

睡眠で大切なことは「何時間」ではなく「何時に寝たか」(Ph/photoAC)
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健康維持のために、食事とともに睡眠が大切なことはよく知られています。著書『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)が話題の漢方コンサルタント・櫻井大典さんに、中医学の観点から健康に役立つ「睡眠」の仕方について聞きました。

「昨日より10分早く寝る」が大事

「眠ることには、物理的に体を休めるだけでなく、さまざまな作用があります。睡眠時には、“脳の中の記憶と整理の定着”と“全身のさまざまな箇所の修復作業”が行われます。

睡眠は体のメンテナンス作業を行う時間。体の不調にも心の不調にも、どんな睡眠をとっているかが重要になります」(櫻井さん・以下同)

では、どのようなポイントを意識して睡眠をとるのがよいのでしょうか。

「私は、何時間寝たかよりも、何時に寝たかを重視します。理想は、23時から3時の間に熟睡できていること。中医学ではこの時間帯に眠っていることが重要と考えているため、例えば夜中の2時に寝て朝10時に起きる8時間睡眠よりも、22時に寝て朝5時に起きる7時間睡眠のほうが、体の不調は起こりにくく、疲労も回復しやすいと考えます」

週の半分は「昨日より10分早く寝る」の実践を(Ph/イメージマート)
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理想は「23時から3時にぐっすり寝ている」こと

「アメリカの大学で行われた研究では、“毎日6時間の睡眠が2週間続くと、ふた晩徹夜したのと同じ脳の状態になる”との結果もあります。

睡眠不足の状態が続けば、めまい、頭痛、胃腸の不調、吹き出物などの身体的な症状や、イライラ、ケアレスミスの頻発、人間関係の不調和など、さまざまな問題を引き起こします。

ただし、23時から3時の間にぐっすりと眠っていることが理想とはいえ、私も含めてその時間に寝付くことが難しい場合もあります。

そこで導き出した結論が、“10分でも早く寝よう”です。週の半分でも、“昨日より10分早く寝る”を実践できれば、それまでより早い時間に寝る割合が増えます。体が10分早いリズムを覚えれば、次第に、以前より少しだけ早く眠くなるといった変化が起こります」

なぜ「23時から3時」が大事か

「23時から3時に寝ていること」の大事さには、「中医学の“気”と“血(けつ)”の概念が関係している」と櫻井さんは言います。

眠ると“気”が体内を巡る

「中医学では、免疫力など外敵から体を守る力はすべて“気”という言葉で表現しています。私たちが日中に元気に活動できるのは、“気”が体の表面をめぐり、体を外敵から守るとともに、体を温めてくれるからです。

夜になって眠りにつくと、“気”は体内を巡り、臓腑(ぞうふ)の調整や修復を行うと考えられています。ですから、睡眠を十分にとらないと、体力を回復できないばかりか、臓腑の働きも悪くなってしまうのです」

23時以降に活動することは、眠りを妨げる恐れがある(Ph/イメージマート)
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“肝”の働きにも影響

「さらに、睡眠に大きく影響するのが“血”です。中医学で“血”とは、全身を巡り栄養を届ける血液や栄養分のことです。そして、“肝”という臓腑は“血”を蓄え、体の各部に必要な量の“血”を送っていると同時に、感情や思考、意志などの比較的高度な精神活動を担っていると考えられています。

午前1時を過ぎても眠らず活動していると、“肝”に“血”が集まらないので精神が不安定になってしまうことも。23時以降に活動することは精神を興奮させ、眠りを妨げてしまうのです」

だからこそ、「何時に寝ているか」がよい睡眠のために重要だと、櫻井さんは強調します。

「よい眠り」の目安とは

改めて、よい眠りとはどんなものなのでしょうか。

「“バタンキュー”と、横になったとたん気絶するように眠ってしまい、その前の記憶がほとんどないようなら、それは疲れすぎです。途中で目が覚めてもまたすぐに眠れて、朝はすっきり起きられるなら、特に質の悪い睡眠ではありません」

よい睡眠のポイントとは?(Ph/photoAC)
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横になってどれくらいで眠れるか

櫻井さんが相談者に対して確認している内容をもとに作成した、「よい睡眠」「悪い睡眠」のチェックリストがあります。

「よい睡眠(眠りの質がよい)とは、『横になって10〜20分以内に眠れる』『夜中に何度も目が覚めない』『夢を覚えていない』『朝すっきり起きられる』の4項目を満たすものです。

布団に入ってすぐ気絶するように眠るのではなく、横になり目をつぶって静かにしていたら、いつの間にか眠っている状態が理想的です」

すべてに当てはまらなくても、自身の感覚としてスムーズに寝つけている感覚があればあまり心配ないそうです。

夜中に何度目が覚めるか

「一方、悪い睡眠(眠りの質が悪い)とは、『布団に入って30分以上寝つけない』『布団に入るとすぐに気絶したように寝落ちする』『1回でなく、何度も目が覚めて、その後なかなか眠れない』『よく夢を見る、夢の内容を覚えている、悪夢を見る』『朝から体がだる重い』の5項目があてはまるものです。

眠りの質が悪くなっている場合、そこには必ず何かしらの原因があるので、それを解消すれば睡眠の質はおのずとよくなっていきます」

◆教えてくれたのは:漢方コンサルタント・櫻井大典さん

漢方コンサルタント・櫻井大典さん
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漢方コンサルタント。国際中医専門員。日本中医薬研究会会員。漢方薬局の三代目として生まれ育つ。カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後はイスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国の首都医科大学附属北京中医医院などでの研修を修了し、国際中医専門員A級資格を取得。これまで年間数千件の健康相談を受け、延べ4万件以上の悩みに応えてきた。今年7月、病気にならないための食事と睡眠の新常識をまとめた『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』を出版。https://yurukampo.jp/

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