“肝”の働きにも影響
「さらに、睡眠に大きく影響するのが“血”です。中医学で“血”とは、全身を巡り栄養を届ける血液や栄養分のことです。そして、“肝”という臓腑は“血”を蓄え、体の各部に必要な量の“血”を送っていると同時に、感情や思考、意志などの比較的高度な精神活動を担っていると考えられています。
午前1時を過ぎても眠らず活動していると、“肝”に“血”が集まらないので精神が不安定になってしまうことも。23時以降に活動することは精神を興奮させ、眠りを妨げてしまうのです」
だからこそ、「何時に寝ているか」がよい睡眠のために重要だと、櫻井さんは強調します。
「よい眠り」の目安とは
改めて、よい眠りとはどんなものなのでしょうか。
「“バタンキュー”と、横になったとたん気絶するように眠ってしまい、その前の記憶がほとんどないようなら、それは疲れすぎです。途中で目が覚めてもまたすぐに眠れて、朝はすっきり起きられるなら、特に質の悪い睡眠ではありません」
横になってどれくらいで眠れるか
櫻井さんが相談者に対して確認している内容をもとに作成した、「よい睡眠」「悪い睡眠」のチェックリストがあります。
「よい睡眠(眠りの質がよい)とは、『横になって10〜20分以内に眠れる』『夜中に何度も目が覚めない』『夢を覚えていない』『朝すっきり起きられる』の4項目を満たすものです。
布団に入ってすぐ気絶するように眠るのではなく、横になり目をつぶって静かにしていたら、いつの間にか眠っている状態が理想的です」
すべてに当てはまらなくても、自身の感覚としてスムーズに寝つけている感覚があればあまり心配ないそうです。
夜中に何度目が覚めるか
「一方、悪い睡眠(眠りの質が悪い)とは、『布団に入って30分以上寝つけない』『布団に入るとすぐに気絶したように寝落ちする』『1回でなく、何度も目が覚めて、その後なかなか眠れない』『よく夢を見る、夢の内容を覚えている、悪夢を見る』『朝から体がだる重い』の5項目があてはまるものです。
眠りの質が悪くなっている場合、そこには必ず何かしらの原因があるので、それを解消すれば睡眠の質はおのずとよくなっていきます」
◆教えてくれたのは:漢方コンサルタント・櫻井大典さん
漢方コンサルタント。国際中医専門員。日本中医薬研究会会員。漢方薬局の三代目として生まれ育つ。カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後はイスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国の首都医科大学附属北京中医医院などでの研修を修了し、国際中医専門員A級資格を取得。これまで年間数千件の健康相談を受け、延べ4万件以上の悩みに応えてきた。今年7月、病気にならないための食事と睡眠の新常識をまとめた『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』を出版。https://yurukampo.jp/