
年齢とともに起こる髪のトラブル。特に育毛トラブルに悩む人は、トリートメントやリンスのつけ方、ドライヤーのかけ方などを工夫するべきだと、『「髪が増えるしくみ」から考案 頭皮が蘇るすごいマッサージ』(アスコム)を上梓した管理理容師・理容師・ヘッドスパ経営者の辻敦哉さんは話します。そこで育毛のために気をつけたいポイントと、白髪の仕組みや改善のために摂りたい栄養素についても教えてもらいました。
* * *
トリートメント、コンディショナーの正しい使い方
髪に元気がなくなってきたと感じている人は、髪につけるヘアトリートメントやリンスなどの使用を悩んでいるかもしれません。
髪用のトリートメントやコンディショナーは頭皮につけない
辻さんによれば、髪は毛根にある毛母細胞が分裂して増えることで押し出された、死んだ細胞なのだそうです。なので、髪につけるものは成分にそれほどこだわらなくてもよいと辻さんは話します。新しく生えてこようとしている髪や白髪には基本的に影響しないそうです。
「ただし、髪用のトリートメントやコンディショナーは、頭皮につけないようにしてください。使用方法に“髪に”つける、“髪に”もみ込むと書いてある商品は、髪の毛をなめらかにしたり、つややかにコートしたり、手触りや見た目をよくするためのものなので、育毛効果はありません」(辻さん・以下同)

スカルプ用か髪用かで判断を
つまり、髪用のトリートメントやコンディショナーは、スカルプ(頭皮)ケアや頭皮トラブルの解消を目的とした頭皮用のトリートメントやコンディショナーとは違って、どんなに頭皮に揉み込んでも頭皮に栄養は与えないのだそうです。商品の使い方をよく読んで、用途によって使いましょう。
乾燥はドライヤーが正解!乾かし方に工夫を
頭皮が乾燥しないように、ドライヤーは使わないほうがいいと思っている人もいるかもしれませんが、辻さんによるとドライヤーを正しく使うのが正解だといいます。
ドライヤーの角度を平行にして使うのが◎
頭皮の乾燥はフケやかゆみの原因となってしまいますが、髪にとって濡れたままはNG。濡れた状態の髪はキューティクルが剥がれやすくなってしまうので、こすれや摩擦で簡単に傷つくようになるそうです。そのため、自然乾燥はおすすめしないと辻さんは話します。

「試行錯誤を重ねて私が出した結論は、髪は乾かすけれど頭皮には風をあてないということです。相反するようですが、ドライヤーで風を送る角度を頭皮に直角ではなく、平行にすることで、髪の毛だけに風が当たるようにするのが一番よい方法です。
頭皮が湿ったままでは雑菌が繁殖しないか心配されるかたもいらっしゃいますが、余分な水分は体温で蒸発するので大丈夫ですよ」
ブラシは目的別に使い分ける
さらにドライヤーの際にブラシを使うのもよいそうです。スケルトンブラシなら、ブラシの上から風を当てても髪まで風が届くので、髪を乾かすときにぴったりです。

ブラシは目的別でその都度変えて、シャンプーのときはテラヘルツ波で体の中から活性化するシャンプーブラシ、ブラッシングのときは高いクッション性で頭皮に負担をかけないパドルブラシ、スタイリングのときは長短が交互に配列され、絡まりをほぐす立体ヘアブラシを使うことをおすすめしています。
白髪のメカニズム&摂りたい栄養とは?
年齢とともに増えていく白髪の悩み。老化現象だと思いがちですが、実はさまざまなメカニズムがあるそうです。
白髪を減らすには血流改善が必須
実は人間の髪は、最初はみんな白髪なのだそうです。大人も子供も、生えてきた瞬間の髪の色は白です。それを、メラノサイトという色素細胞がメラニン色素で髪を黒く染めます。このメラノサイトがうまく機能しなくなると、白いまま成長した白髪となるのだそうです。
「つまり、メラノサイトの働きを再生すれば髪は黒く蘇ります。メラノサイトを再生させるカギは、ずばり血流。ストレスや筋肉のこわばりのせいで血流が不足すると、髪を黒く染めるのに十分な栄養が毛根に行き渡らなくなります」
白髪のお悩みにおすすめの栄養
さらに、髪の毛を構成する栄養素が必要だと、辻さんは続けます。

「髪の毛を構成するたんぱく質である、ケラチンが不足していては、マッサージをしても思うような効果を得ることはできません。ケラチンは18種類のアミノ酸でできているのですが、その中でもメラニン色素の原料となるチロシンを多く含む、乳製品や大豆製品を積極的に摂るようにするといいですよ。
ほかにも、ミネラルやフルボ酸、ボリフェノールの一種でもあるアントシアニンを含んでいる、黒ごまやブルーベリー、ぶどう、紫芋や紫キャベツなどの、紫色の食品を摂ると、メラノサイトの働きが活性化されます」
白髪染め選びの正解とは?
最後に、さまざまな種類がある白髪染めの選び方について教えてもらいました。
一般的にヘアカラーと呼ばれているアルカリカラーは、キューティクルを開いて髪の内側まで色を入れるので一番色持ちがよいものの、強い化学物質のため一番頭皮にダメージを与えてしまうと辻さんは言います。

「ダメージが少ない順に紹介すると、髪の表面だけを染めて2〜4週間ほどで色落ちするヘアマニキュア、うっすらと髪に色を付けて色持ちは数日のトリートメントカラー、ハーブ用の天然色素で染め、3週間ほど色持ちするヘナです」
もしどうしてもアルカリカラーをしたい場合は、ヘアサロンでマニキュア塗りとオーダーすれば、頭皮につかないように染髪してくれるので、ダメージを抑えられるそうです。いつものサロンで相談してみましょう。
◆教えてくれたのは:管理理容師、理容師、ヘッドスパ専門店「PULA(プーラ)」経営者・辻敦哉さん

1979年、埼玉県浦和市生まれ。埼玉県理容専門学校、東京文化美容専門学校を卒業、ロンドンTONI&GUYアカデミー修了。サロンで店長、営業推進部長を務めたのち、2011年に独立。現在は後進の育成に注力し、プーラ式ヘッドスパ専門店を全国展開中。著書に今年5月に出版した『「髪が増えるしくみ」から考案 頭皮が蘇るすごいマッサージ』、『育毛のプロが教える髪が増える髪が太くなるすごい方法』(ともにアスコム)など。
◆美容外科、皮膚科医師・コッツフォード良枝さん
日本抗加齢医学会専門医、銀座禅クリニック院長。 山梨大学医学部卒業後、国際医療センター国府台病院を経て、日本医科大学麻酔科学講座に入局。2011年から皮膚科、美容皮膚科、美容外科に従事する。フジテレビ『バイキング』、毎日放送『林先生が驚く初耳学!』、テレビ東京『なないろ日和!』などに出演するなど、メディアでも活躍中。