食事は姿勢にも配慮を、散歩は継続
飼い方も変える必要があります。食事は、消化によく、低脂質、低カロリーなシニア用のフードを与えましょう。成犬用のフードを与え続けると、代謝が落ちている分、肥満になったり、内臓に負担がかかったりすることも。最近では、犬の長寿命化に伴って、シニア期を前期と後期に分け、フードを開発しているメーカーもあるのだとか。
ヘルシーで食いつきのいいものを探したいものです。ドライフードをそのままだと固くて噛めないこともあるので、水やぬるま湯でふやかしたりするのもおすすめです。
「食べるときの姿勢を保つのがつらい子もいるので、そういう子には、フードボウルを台に乗せてあげるとか、飼い主さんが手でボウルを持って、ちょうどいい高さにしてあげるとか、工夫が必要になってきます。手持ち用のボウルや、片側が浅く切ってあるボウルもあるので、楽なやり方を試してみてください」
筋力維持、認知症の予防のためにも散歩は大切
散歩は、若い頃のように大喜びしなくなったり、散歩に連れ出しても歩くのをやめたりすることがあります。体力的に長い距離を歩くのがつらくなったり、視力の衰えなどで不安を感じやすくなって家からあまり離れたくない気持ちが働いたりするようです。
「そういうときでも、散歩は続けてください。ゆっくり歩く、少し立ち止まって休憩する、行きはキャリーや抱っこで運んであげて帰りだけ自分で歩かせるなど、工夫しながら散歩自体は継続するべきです。喜ばないからもう行かないという選択はしないほうがいいですね。筋力を維持するためにも、認知症の予防のためにも、散歩は大切です」
トイレの失敗を叱らないで
日中も寝ている時間が増えていき、逆に夜はよく眠れないで鳴き出す犬もいます。
「昼夜の感覚を取り戻せるように、昼間は太陽の光を浴びさせ、あまり寝すぎるようなら起こしても構いません。昼間のうちに少し疲れるぐらい散歩したり遊んだりしておくと、夜、眠りやすくなるはずです。寝る前に体を撫でたりブラッシングしたりして、安心させてあげるのもいいと思います」
トイレは、失敗してもシニア犬の場合は叱ったりする必要はありません。トイレがしたそうな様子が見えたら連れて行ってあげたり、介助したりして対応しましょう。トイレの設置数を増やしたり、おむつを使ったりする方法もあります。
「トイレの失敗も食欲不振も散歩嫌いも、病気やケガを疑って確認することも大切です。トイレの失敗は頻尿になっているからではないかとか、食欲がないのは内臓疾患かもしれないとか、散歩中に歩かなくなるのは足が痛いからかもとか。何か変化があれば、体を触ったり見たりして確かめ、気になる場合は動物病院へ連れて行ってあげてください」
◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん
獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/
取材・文/赤坂麻実
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