
炊飯器はおいしいご飯を炊くための家電ですが、その一方で、煮込み料理を作ったり焼き菓子を作ったりと、調理器具としての活用法も一般的になり、レシピサイトでは「炊飯器で」というレシピも多く掲載されています。しかし中には失敗談も。果たして、調理におすすめの炊飯器と、不向きな炊飯器の違いがあるのでしょうか。家電ライターの田中真紀子さんに聞きました。
そもそも「炊飯器調理」は可能なの?
炊飯器調理をする前に、「まず炊飯器の工程を理解してほしい」と、田中さんは話します。
「そもそも炊飯器は、ご飯を炊くためにプログラミングされた家電です。昔ながらのかまどで炊く火加減の口承に『はじめちょろちょろ 中ぱっぱ じゅうじゅう吹いたら火を引いて 一握りのワラ燃やし 赤子泣いてもふた取るな』というものがありますが、炊飯器の炊飯工程も基本的にはこれに倣っています」(田中さん・以下同)
【1】はじめちょろちょろ(弱火)→徐々に温度を上げて浸水させる
【2】中ぱっぱ(強火)→ 一気に沸騰させる
【3】じゅうじゅう吹いたら火を引いて(中火)→火加減を調整して沸騰を維持する
【4】一握りのワラ燃やし(強火)→再び火力を上げ、水分を飛ばす
【5】赤子泣いてもふた取るな→高温でしっかり蒸らす
「炊飯器は、このように工程に合わせて火力を調整しているため、必ずしも調理に向いているわけではありません。例えば水分が少ない食材の場合、中まで火が通らなかったり、鍋底が焦げついてしまうこともありますし、とろみが強い液体が蒸気孔から吹き出したり、詰まる可能性もあります。また圧力式の場合、食材が膨張してフタが勢いよく開いて中身が飛び散るおそれもあるため、メーカーとしては推奨していません」
調理するなら調理モードがある炊飯器を
それでもあえて炊飯器調理に挑戦したい場合は?
「炊飯器調理が人気の理由は、やはりほったらかしで調理できる点だと思いますので、もしほったらかし調理がしたいなら、調理モードを備えた炊飯器を使うか、電気圧力鍋を別途用意したほうが安心です。実は調理家電の中で、もっともプログラミングが複雑で難しいとされるのが炊飯器。上記の炊飯工程と火加減によって炊き上がりが大きく変わってしまうからです。
一方、電気圧力鍋のほうがまだシンプルで、価格も1万円程度から購入できるのもそのためです。また危険性という意味では、圧力をかけないIH式やマイコン式のほうが安心といえるでしょう」
炊飯器調理でついたニオイを取る方法
以上のように、炊飯器調理は調理モードを搭載した炊飯器で行うことが原則。取扱説明書を見て、自宅にある炊飯器に調理モードがあるかどうか、どんな調理なら可能で、どんなことはしてはいけないか、しっかり確認しましょう。
さて、炊飯器の調理モードを使った際、少し気になるのが、炊飯器に残った調理後のニオイ。どう取ればよいのでしょうか。
「炊飯器調理でニオイがつくのは、主にゴムパッキン部分。内鍋やフタ自体のニオイはしっかり洗えば落ちますが、ゴムパッキンはニオイがつきやすく取れにくい性質があります。気になったときは、炊飯器に『クリーニングモード』などと呼ばれるお手入れ機能があれば、試してみてください。
それでも取れない場合は、クエン酸や重曹を加えて『クリーニングモード』でお手入れすると効果的ですが、素材によっては使えないので取扱説明書で確認を。また水で溶かしてペースト状にした重曹をパッキン部分に塗りつけてしばらく放置し、洗い流すといった方法もあります」
ご飯にニオイはつく?
ちなみに、ニオイがついた炊飯器でご飯を炊いても、ご飯にはニオイがつかないのだと、田中さん。

「湯気が外に放出されているため、ご飯自体がニオイを吸収することはないのです。とはいえご飯が炊き上がり、フタを開けた瞬間、ご飯以外のニオイが漂ってきたら、おいしそうに感じられませんので、しっかり落としたいですね」
さて、炊飯器調理でおすすめの炊飯器は? 田中さんに2点選んでいただきました。
【1】タイガー『圧力IHジャー炊飯器<炊きたて>JPV-A100』※圧力IH方式(5.5合)

「おいしく炊こう。手間は省こう。」というコンセプトで、土鍋で炊いたようなおいしいご飯が炊けるのはもちろん、時短を意識した調理機能が魅力的な製品。
時間がない日も、手間なく主菜・副菜が作れる
「時間がない人でも、手間なく食事が作れる調理メニュー『クイック調理』『スロー調理』を搭載。『クイック調理』では沸騰後、高温で加熱を続け(時間は1~30分)、『スロー調理』では、沸騰後に火力を弱め、30~360分と長時間煮込む料理が作れます。水分の多い野菜などを使うなら、水を入れずに無水調理も可能。シチューや肉じゃがなどの煮込み料理も作れます」

調理ができるメニューのレシピはとろとろ豚角煮や無水肉じゃがなど煮込み料理を中心に、麻婆豆腐や無水キーマカレー、シーフードドリア、炊込みごはんまで全44種類。調理メニュー後のニオイを抑える圧力洗浄コースも搭載されているので、調理後のお手入れの手間も省けます。
【2】パナソニック『IHジャー炊飯器 「ライス&クッカー」 SR-UNX101』※IH方式(5.5合)

炊飯はもちろん、調理メニューも充実しているIH方式のジャー炊飯器。
調理メニューのレシピは随時更新されるIoTジャー炊飯器

「週末にご飯をまとめて炊いて冷凍しておき、ご飯を炊かない日は電気調理器として使うという提案をするIoTジャー炊飯器。作りたいメニューをスマートフォンの専用アプリから選び、本体に転送することでほったらかしの自動調理が可能です」

調理メニュー例は、ロールキャベツやカレーなどの煮込み料理からプレーンケーキ、チーズケーキなどのスイーツまで30種類以上。他企業とのコラボレーションメニューなど、新レシピが次々とアプリに追加されるので、レパートリーが尽きません。インターネットにつながった家電製品(IoT家電)ならではの楽しみ方ですね」
どちらも、冷凍ご飯専用の炊飯メニューがあるのも特徴。ごはんは週末に「冷凍ご飯」専用メニューでまとめて炊いて冷凍保存しておき、平日は調理鍋として使う。ごはんも料理もおいしい、一台二役の炊飯器です。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電や美容家電を中心に家電に詳しいライター。雑誌やウェブなど多数のメディアで、新製品などをレビューしている。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
●今どき炊飯器は基本的に浸水は不要 それでもあえて浸水した方がいい場合とは?
●10万円前後の高級炊飯器と3万円以下では何が違う? 家電ライターに聞く、おいしく炊ける「高コスパ炊飯器」の見極め方
→「スマート家電」の他の記事はコチラ