
全国旅行割も始まり、どこかへ旅をしたいと持っているかたのために、旅行ジャーナリストの村田和子さんが、「本当は教えたくない、リピートしたい宿」を紹介。今回はアートをテーマに、おすすめの宿をピックアップします。
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秋といえば、私は断然「芸術の秋」。今回はアート好きな私が、アート+αの楽しみがある、リピートしたい宿を紹介します。ラグジュアリーな宿から、ひとり旅で気軽に利用できる宿まで、写真と共にお楽しみください。
アート×食×絶景「星のや沖縄」(沖縄県)~ラグジュアリーな非日常
沖縄本島・読谷村に2020年夏にオープンした「星のや沖縄」。コンセプトは、グスクの居館。自然海岸に面した広大な敷地には南国の花や植物が生い茂り、その先にはインフィニティプール。非日常のリゾートは、極上な休日を過ごすのにぴったりです。


客室には、沖縄の紅型があしらわれ、やちむんの茶器を用意。ウェルカムドリンクは琉球独特のぶくぶく茶など、沖縄の伝統・文化、歴史などを体感でき、リゾートそのものが美しいアート作品のよう。足を踏み入れた瞬間から心がときめきます。

なかでも、「星のや沖縄」の滞在で、アート心をくすぐるのがお食事。沖縄とイタリア・シチリアの環境が似ているところから着想をえたダイニングで頂く「琉球シチリアーナ」は、沖縄の素材にシチリア料理の技法を組み合わせたユニークな料理。今までにない新たなハーモニーを感じます。
そして注目したいのが、料理を際立たせるために、沖縄とシチリア双方の要素を取り入れた特注の器たち。
例えば前菜は、琉球でのおもてなし料理にかかせない「とぅんだーぶん(東道盆)」をモチーフに作られた器で登場します。蓋にはシチリアの街と沖縄の海と太陽がデザインされ、陶芸家・小孫哲太郎氏が「星のや沖縄」のために作った特注品だとか。一口サイズの料理が散りばめられ、まるで宝石箱のような華やかさです。




ダイニングは、高さ5メートルの開放的な空間に、青と白を基調にしたデザイン。海の中をイメージしているとあって落ち着いた雰囲気で、カーテンも魚の群れをイメージしたデザイン。11月からは秋冬の新しいコースメニューも始まります。

朝食は「琉球朝食」と「シチリア朝食」の2種類から選べます。

海を臨む客室でのインルームダイニングもいいのですが、アート好きならぜひ一度はダイニングでの食事を楽しむことをおすすめします。

朝食前後には、ホテル前の浜辺で乗馬を楽しむアクティビティ「朝凪よんなー乗馬」もおすすめです。

■星のや沖縄(https://hoshinoya.com/okinawa/)
アート×絶景×温泉「アオアヲ ナルト リゾート」(徳島県)~ゴッホのひまわりルーム
瀬戸内海の絶景を望む「アオアヲ ナルト リゾート」。大阪からホテル直通の高速バスで約2時間。遠方から飛行機でアクセスするなら、徳島阿波おどり空港から車で20分ほど(ホテルの無料送迎あり)。アクセスも便利で、瀬戸内海をまじかに感じる素晴らしいロケーションに佇みます。


ファミリーからラグジュアリーまで、さまざまな旅のシチュエーションに対応できる多彩な客室があるのが特徴です。今回はアートがテーマということで、『ゴッホのひまわりルーム』をご紹介します。

客室は黄色やオレンジが美しく映えるインテリアで、客室ごとに異なるゴッホの「ひまわり」の絵が飾られています。宿の近くの大塚国際美術館で、ゴッホの展示をみて予習していた私。この客室の絵は、第二次世界対戦の空襲で焼失した幻の絵、別名「芦屋のひまわり」と呼ばれる作品だと気がつきテンションが上がります。
バルコニーからは、青い海とオレンジの屋根瓦のコントラストが素敵な絶景が広がります。ゆったりとお茶をする時間も心地よいひとときです。


実は『ゴッホのひまわりルーム』には、スパークリングワインとフルーツが用意されています。記念日に乾杯をしたり、客室にある画集を眺めながらグラスを傾けたり。思い思いに過ごせます。



そしてうれしいことに、1階には露天風呂、最上階には展望風呂があり、温泉で旅の疲れを癒せます。

朝、目覚めて外を見ると…、瀬戸内海の向こうにサンライズ! 神々しい光景に気持ちも高まりました。

一帯は、観光スポットも充実。ぜひ滞在の前後には、鳴門の渦潮、世界の名画が原寸大の陶板で再現された美術館「大塚国際美術館」へも足を延ばしてみてください。アートとダイナミックな自然美が楽しめます。

■アオアヲ ナルト リゾート『ゴッホのひまわりルーム』(https://aoawo-naruto.com/publics/index/139/)
アート×レトロ×散策「函館 十字屋ホテル」(北海道)~ひとり旅のお供に
北海道・函館といえば、教会群やレトロな建物も多く、街歩きをするだけで幸せな気持ちになる私。そんなレトロ建築好きにはたまらないホテルが、今回ご紹介する五稜郭公園の近くにある「函館十字屋ホテル」。函館空港からは市電やバスで近くまでアクセスできるので、とても便利です。

建物は、外を行き交う人が「ここなんだろう?」とついのぞき込む、ちょっと変わった扇形状。もとは三越デパートの函館店だったそう。それを生かした全24室は、部屋の間取りも少しずつ異なります。


2階にあがると天井が高く、コンクリートむき出しの床や天井が印象的。


私が滞在したのは建物の入り口側に窓がある2階のシングルルーム。13.6平米と聞くと、ビジネスホテルでも少し狭いと思う広さですが、天井がとても高く実際よりも広く感じます。調度品もシンプルながらこだわりが感じられ、なんともいえない心地よさ。


ルームキーには、五角形のレザーのキーホルダーが。実はホテルから五稜郭までは徒歩5分ほど。散歩にもちょうどよく、ルームキーは五稜郭をイメージしてデザインされたものでした。

宿では、無料で自転車の貸出もしているので、買い出しや食事に行くのも便利。私は早朝に五稜郭公園をサイクリングで一周しました。冬場は雪や寒さで難しいですが、グリーンシーズンにはおすすめです。
朝食はパン、スープ、珈琲、ジュースとシンプルながらも、珈琲は函館で有名な美鈴珈琲、パンは昭和四年創業の地元のキングベークなど、こだわりが感じられます。


飲食店のある繁華街にも近く、函館のB級グルメ「ハセガワストア」や「ラッキーピエロ」も徒歩でアクセスOK。バスや市電の停留所にも近いので観光にも便利です。函館のレトロ建築巡りのお供におすすめのアートを感じる宿です。
■函館 十字屋ホテル(https://www.hakodate-jh.net/)
ほかにもアートな宿はたくさんあります。ぜひお好みを見つけておでかけください。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年よりNHKラジオ『Nらじ』月一レギュラー。トラベルナレッジ代表(https://www.travel-k.com/)。旅ブログも行っている(http://www.murata-kazuko.com/)。
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