
気温と湿度がともに低下し、肌の乾燥が気になる季節になりました。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、肌の乾燥は気候の変化だけでなく貧血も原因になるといいます。そこで、小原さんに改善のために取り入れたい食材と、おすすめの漢方薬を教えてもらいました。
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肌の乾燥の原因の1つは貧血
貧血は病名ではなく、血液中の赤血球の濃度が低くなり、全身の組織に十分な酸素を届けられなくなった状態のことをいいます。貧血により、肌に届けられる酸素が少なくなると代謝が落ちて肌の保水やバリアの機能が低下するので、乾燥や肌荒れが起こりやすくなります。

漢方医学では、貧血を「血虚(けっきょ)」と捉えています。「血(けつ)」とは、血液だけでなく栄養のことも指し、皮膚や臓器、骨など体を作る材料になると考えられているもので「血」が不足する「血虚」とは、まさに栄養不足の状態。肌にまで栄養が届かずツヤがなくなり、乾燥しやすくなるなどの症状を引き起こすといわれています。
貧血からくる肌の乾燥は食事で改善
赤血球の構成成分は、たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルと多岐にわたります。
なかでも、鉄が不足すると鉄欠乏性貧血、ビタミンB12が不足すると悪性貧血になりやすくなります。また、鉄やビタミンB12は胃液の作用を受けることで吸収率が上がるため、胃に不調があっても貧血を起こす可能性が高まります。

加えて、漢方医学において胃腸は「食べた物から『血』を作り出す臓器」と考えられています。そのため、血虚の改善に胃腸の健康は欠かせません。
そこで、効果的に栄養を吸収して「血」を増やすために、胃を元気にする食材を3つご紹介します。
ねぎ

11月から2月に旬を迎えるねぎ。ねぎ特有の香りのもとになるアリシンは、胃液などの消化液の分泌を促し、胃腸の働きを活発にさせるため、消化吸収を高めるのに役立ちます。
小口切りやみじん切りなどで使いやすい形に切り、小分けにしてラップで包んで冷凍保存しておくと便利です。薬味としてそのままトッピングしたり、凍ったままでの調理も可能です。
レタス

レタスは出荷時期が3期に分けられており、11~3月に出回るものは冬レタスと呼ばれます。レタスに含まれるビタミンUには胃酸の過剰分泌を抑え、胃粘膜を保護する働きがあり、胃の健康を保つのに有効です。
胃酸過多になりやすいのは、高たんぱく質・高脂質の食事が多い人やカフェインやアルコールの摂取頻度が高い人、ストレスを感じる場面が多い人です。心当たりがある場合は原因を改善しつつ、食事にレタスを取り入れてみてください。
長ひじき

ひじきには葉を集めた芽ひじきと、茎を集めた長ひじきがあります。貧血からくる乾燥の対策としておすすめなのが長ひじきです。
長ひじきは噛み応えがあるため、自然と咀嚼(そしゃく)が増える食材です。咀嚼すると胃のぜん動運動が促され、食べ物と消化液を混ぜたり、消化された食べ物を腸へ送ったりする働きがスムーズになります。
また、長ひじきに含まれるぬめり成分の「フコイダン」は胃粘膜を保護する働きがあり、胃をダメージから守るのに効果的です。
貧血(血虚)の改善には漢方を活用する方法も
貧血による肌の乾燥を改善したい人には、漢方薬をのむという選択肢もあります。
貧血の原因としては、過労や冷え、生理、ホルモンバランスの乱れなどにより、赤血球を生産する機能が低下することが考えられます。そこで「胃腸の機能を高めて、血液を作る機能を回復する」「血流をよくして肌に栄養を行き渡らせる」「ホルモンバランスの乱れを整える」といった作用のある漢方薬を選び、貧血による肌の乾燥を改善しましょう。

漢方薬はトラブルの根本的な部分に対処し、体質改善も目指せるので長引く不調に悩む人にもおすすめです。漢方薬で自律神経やホルモンバランスが整うことで、貧血や肌トラブルが改善するだけでなく、ストレスに強く疲れにくい心と体を手に入れることができます。
血虚の人におすすめの漢方薬2つ
血を補い血行を促すことで、貧血や婦人科系疾患を改善する漢方薬です。冷えや疲労感がある人に用います。
・加味帰脾湯(かみきひとう)
胃腸の機能を高めて、エネルギーである気と血を補うことで、貧血、不眠、精神不安を改善する漢方薬です。虚弱体質で血色の悪い人に用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は、繰り返す不調に対して根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。