不器用だから常に新しいユーミンがいる
どちらにしても、季語に提案されるほどの知名度と人気があるユーミン。冒頭で「季節のように巡ってくる」と書いたが、50年間、50という年数ではなく「新しい季節」を感じさせるのは本当にすごい。持って生まれた才能なのだろうな、と思っていたけれど、パートナーである松任谷正隆さんの著書で、こんな件(くだり)を見つけた。少し長いけれど、抜粋を。
〈僕が由実さんに対していいなと思うのはね、彼女は同じことができないんです。ほかのミュージシャンと同じこともできないし、自分の過去の作品と同じこともできない。『○○風にやってくれ』と言っても、たぶん再現できません。不器用だからですけれど、そのおかげでいつも新しい由実さんでいられる〉(『僕の音楽キャリア全部話します』新潮社)。
ユーミンが新しい季節を連れてくる秘密は「不器用さ」。意外だけど、確かにとっても「いいな」と思う。同じことができない彼女は、これからもずっとオリジナルだ。
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka