
1万人以上に食べ方を指導し、不健康な食事を改善させてきた「食べ方コンサルタント」で管理栄養士の岸村康代さんは、食べ方を工夫すれば好きなものを食べながらダイエットできるといいます。これまで相談者の脂肪の合計10トン超を落としてきたダイエット指導のプロである岸村さん。著者『続食べ~結果が出る食べ方がカンタンに続く方法」(かんき出版)でも紹介している、太らずに好きなものを食べ続けるコツを教えてくれました。
ダイエット中の甘いものは「別腹」として
――スイーツが大好きな人も多いと思いますが、甘いものを食べるときの注意点は?
岸村:ダイエット中は甘いものを食べてはいけないと禁止するとストレスが溜まって、ますます食べたくなりますよね。なので、「甘いもの禁止」ではなく、「別腹」という感覚にしておくほうがよいでしょう。
気をつけてもらいたいのは、空腹のときに食べること。これだけは、絶対に避けてください。空腹のときにチョコを食べた場合、1個のつもりが止まらなくなって、ひと箱全部食べてしまったということはないですか? 私はかつてそんな中毒症のような状態になって苦しんだことがありました。
そのため、甘いものは食後に別腹で1個で満足させることも一案です。「少量のご褒美」で体と心を満たすと、その満足感から次の食事まで頑張るという意欲が湧いてきます。

――「少量で満足」するためには、安いものより少し値段がお高めのほうが満足できそうですよね。
岸村:その通りです。高級品だと気持ち的にも大事にゆっくりと味わって食べることにつながりやすく、その結果、「血糖値が上がりにくい食べ方」になります。消化器官にも負担が少なく、健康的と言えますね。工夫して食べすぎを防ぐことで、ダメージも少なくできるのです。
――ゆっくりと味わって食べると、満足感も生まれますよね。
岸村:そうですね。満足感というのは幸福感に繋がります。空腹を満たすために食べることは、満腹感と同時に満足感も生じます。でも極度の空腹のときに早食いすると、血糖値が急激に上がってしまい、そのあと、血糖値が急激に下がりやすくなるのです。そのときに、イライラしやすくなったり、集中力がなくなったり、不安定になったりするケースもあります。
一方、腸内環境が整うと、メンタル面にも好影響を及ぼし、幸せ感が生まれてきます。単体で食べるよりも、たんぱく質や食物繊維を組み合わせるなどの工夫をした食事で血糖値をコントロールしつつ、腸内環境を整えましょう。

――食事と幸福感は密接につながっていますね。ところで親の世代から「残すのはもったいない」と残ったものを全部食べるというのは、いかがでしょう。
岸村:私の両親も典型的な昭和タイプのため、「残すのはもったいない」という教育を受けてきました。そのため満腹でも残すのはもったいないという気持ちはよくわかります。残さずに食べ続け、あとで体重計に乗ると太ったことがわかり、自己嫌悪になり、ストレスが溜まってまた食べるという負のスパイラルに陥ってしまいますね。
私はあるとき、目の前の「短期的なもったいない」を優先するあまり、自分の体や心の声を疎かにしてしまい、そのためバランスを壊していることに気付きました。
それからは「残さなくて済むように作りすぎないこと」、「食べられないものは最初から買わないこと」、「ご飯を小盛にするなど最初から量を少なめにする」など、不要なものに見切りをつけたらすっきりして、自己嫌悪に陥ることが少なくなりました。
野菜を食べるのはダイエットに効果的?
――残さない工夫をすれば「もったいない」の感覚が軽減されるということですね。ではダイエット中、野菜ばかり食すると、どういうことになりますか。
岸村:野菜はカロリーが低いので、とり続けると痩せることが可能です。でも野菜だけしか食べない人はたんぱく質が不足するので、結果的に筋肉の量が減ったり、ホルモンが影響を受けたり、しわになりやすくなったり、骨がもろくなったりします。

野菜を意識するのは大切ですが、たんぱく質も積極的に摂りましょう。一時的にリセットしたいときには野菜だけでもいいですが、長期的に続けるときには、ぜひたんぱく質も意識してもらいたいすね。
――「野菜だけ」は間違ったダイエット法ですね。では流行りの糖質制限がいかがでしょうか?
岸村:糖質制限は、短期間で結果を出しやすい方法です。その反面、リバウンドもしやすい方法とも言えます。私も以前、糖質制限にはまり、野菜に含まれる糖質が気になってあまり食べなかったり、白米もとらないなど、ことごとく糖質を抑えていたら、一時的に体重が減りましたが、そのあとが横ばい。一向に下がりませんでした。
糖質制限でリバウンドする理由は、糖質を摂らなさすぎの反動です。他の食欲スイッチが入りやすくなって、つい食べ過ぎてしまうからです。
糖質制限だけで痩せるのは難しいので、適量の糖質をたんぱく質と一緒に摂ったり、食物繊維が多い大麦ごはんや玄米をとるのがおすすめです。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の特長を持つ「レジスタントスターチ」が生成される冷やご飯などもいいでしょう。これらは腸の奥まで届き、腸の中で発酵することで腸内環境を改善し、血糖値をコントロールしたり、免疫機能を活性化させる働きが期待できます。
ラーメン、パスタの“太らない食べ方”のコツ
――高カロリーのラーメンはいかがでしょうか?
岸村:同じラーメンでも、一般的なしょうゆラーメンはとんこつラーメンに比べて脂質が少ないため、とんこつラーメンよりカロリーが低い傾向があります。最近は「麺少なめ」を注文できるお店も増えたので、ぜひ活用してみましょう。

また、ラーメンは汁もおいしいので、つい全部飲み干してしまいたくなりますが、腹八分目の目安で汁を残すことで、塩分も約半分以下にカットできます。
バランスを整える食べ方はしょうゆラーメンにメンマや卵、ねぎなどをトッピングしましょう。メンマや卵から先に食べることで、血糖値が急激に上がるのを防止することができます。それから高カロリーのラーメンは夜よりも昼間に食べることをおすすめします。
自宅でラーメンを作る場合は、麺を少なめにして具沢山にしましょう。麺を春雨に置き換えるとヘルシーで低カロリーとなります。
――パスタ好きの女性は多いと思います。太らないおすすめの食べ方を教えてください。
岸村:量に注意することですね。パスタは量次第で、白米よりも高カロリーになりがち。一般的な量のパスタだと約400~500kcal、大盛は800kcalを超えることもあります。
また、パスタソースや具材によってもカロリーが異なります。トマトソースやシーフードを使用したパスタのほうが、ベーコンやバターなどを使用したパスタよりもカロリーが低いです。また、チーズを大量に使用したパスタも高カロリーになりがち。パスタも選び方次第です。パスタランチのように、サラダやスープなどでお腹を満たしてからパスタを食べると、少量でも満足感を得ることができますよ。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・岸村康代さん

管理栄養士。野菜ソムリエ上級プロ。一般社団法人「大人のダイエット研究所」代表理事。1万人以上の食べ方の指導をもとに、不健康な食事を改善させてきた食べ方の専門家。ダイエット指導では2000人以上を成功に導き、落とした脂肪は合計10トンを超える。ダイエット失敗経験を経て、論文や研究データや専門書を読破し、医療現場での臨床経験も活かして食について学び直し、自身も15kgの減量に成功。『あさイチ』(NHK)、『ヒルナンデス!』(日本テレビ)など、メディア出演も多い。http://www.power-food.jp/
取材・文/夏目かをる