不調改善

「疲れた」→「エナジードリンク」にはリスクも 疲労専門医が「コエンザイムQ10」をすすめる理由とは?

観葉植物とエナジードリンク
疲れを感じたからとすぐにエナジードリンクに頼るのは危険?(Ph/イメージマート)
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季節の変わり目の寒暖差に体が追いつかず不調を感じる「秋バテ」に悩んだかと思ったら、本格的な寒気がやってきて体調が思うように整わないという人も多いはず。そこで、疲労について詳しい専門医・中富康仁さんに、寒さや乾燥による疲れなどの回復のポイントを伺いました。

疲労は体のアラートサイン、放置すると疲労関連疾患に

一気に秋の肌寒さがやってきて、「秋バテ」したにもかかわらず、冬がやってきて疲労が重なっているのに、何も対処していないという人は、注意が必要だと中富さんは言います。

目頭をおさえている女性
暑い夏から秋になり、一気に冷え込む冬…季節の変わり目の疲れを無視しないで!(Ph/イメージマート)
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「疲労は誰しもが感じるものですが、体が出しているサイン。痛みや発熱は明らかな異常ですが、疲労は常日頃から感じるものであるため、病気との境目が非常に難しいです。疲労は早く対応するとその分早くよくなりますが、放置しておくと、さまざまな疲労関連疾患につながるリスクがあります」(中富さん・以下同)

疲れの回復に「エナジードリンク」は待った、“疲労感が麻痺”した状態に

今ではコンビニでも栄養剤やエナジードリンクが手軽に手にはいる時代。でも疲れているからとやみくもにそれらに手を出すのはリスクもあるそうです。

「実際に体に蓄積する疲労と、感覚である“疲労感”を区別する必要があります。疲労感は疲労を脳で感じる感覚であり、感覚なので麻痺してしまうことがあります。とくに栄養剤やエナジードリンクに含まれるカフェインを摂取した際は、実はこの疲労感が麻痺している状態です。

疲労感は本来、体が出している危険信号です。疲労感を抑えて頑張ることで達成できることも多いですが、体力を前借りしている状態であり、その後に体が疲労から回復できる機会を与えず、ムチを打ち続けると、休息や睡眠で回復しない慢性疲労の状態におちいってしまうことがあるため注意が必要です」

疲労は「ダメージ」と「回復力」のバランスが大事!

疲れたら、第一に取るべきは休養だと中富さん。

「疲労は、体へのダメージと回復力のバランスが崩れることで発生します。睡眠不足などで回復力が低下し、ダメージが上回ってしまうと、疲労が溜まってしまいます。疲労を感じた場合は無理せず休養をとることが大切です」

コエンザイムQ10と疲労の関係に注目!

疲労回復に効果がある栄養素というと、レモンなどに含まれる「クエン酸」などいくつかありますが、中富さんが注目しているのが「コエンザイムQ10」だそうです。

「近年、コエンザイムQ10(以下CoQ10)が、細胞のエネルギー産生と酸化ストレスに大きく影響することがわかってきました。実は、CoQ10は体内でも作られますが、加齢とともにその産生能力は低下します。また、病気があると血中CoQ10量が低下することもわかっています。

私が、今年6月、日本疲労学会で報告した研究では、疲労関連検査を受けた延べ1747名の患者(2014年4月-2022年5月にナカトミファティーグケアクリニックを受診した患者数)のうち新型コロナウイルス感染症の後遺症、特発性慢性疲労(ICF)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)などの患者群で、CoQ10サプリメントの摂取履歴のない157名のデータを比較検討したところ、血中CoQ10濃度が低く、酸化ストレスが高いことがわかりました」

エネルギー産生と抗酸化、2つの働きで疲労解消!

質のいい睡眠や疲れにくい体を作るためにもコエンザイムQ10が役立つそうです。

「体中の細胞すべてに、ミトコンドリアというエネルギー工場があります。CoQ10は、この体中のエネルギー工場で働いています。メンタルヘルス疾患を含めた疲労関連疾患でもコエンザイムQ10は消耗しており、サプリメントの摂取などで血中CoQ10濃度を上げると、よりよい睡眠や自律神経機能の向上、疲れにくい体になることがわかってきました。

とくに、還元型コエンザイムQ10は疲れで蓄積する酸化ストレスを減らす抗酸化作用(還元化力)をあわせもつ疲労回復に貢献する物質です」

コエンザイムQ10は動物性たんぱく質で補給! 肉は牛カタ、牛モモ、豚カタ、魚なら青魚

では、普段の食事からCoQ10を補給したい場合、どういった食材がおすすめなのか、CoQ10の研究論文を多数発表している和洋女子大学教授の鈴木敏和さんにうかがいました。

秋刀魚の塩焼き
肉類や魚類、特に青魚にコエンザイムQ10が含まれる(Ph/イメージマート)
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「私は長年、CoQ10と『疲労・回復力』の関係に注目してきましたが、ポイントは動物性のたんぱく質です。肉類や魚類、とくににしんやあじなどの青魚にCoQ10が多く含まれています。野菜は、アブラナ科野菜の葉の部分や大豆に多く含まれていますが、肉や魚の1/8~1/2程度しか含まれていません。

日本人の食習慣から、1日あたり約5mgのCoQ10を食品から摂取可能と言われていますが、1日3回、主食・主菜・副菜をしっかりとバランスよく食べること、肉類や魚類を毎日2品以上取り入れることが必要です。肉類や魚類の摂取を減らすと血中CoQ10量が減少するので、まずは、日々の食事で5mg以上摂るように目指しましょう」(鈴木さん)

◆教えてくれたのは:医師・中富康仁さん

ナカトミファティーグケアクリニック院長の中富康仁さん
ナカトミファティーグケアクリニック院長の中富康仁さん
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ナカトミファティーグケアクリニック院長。専門は脳科学、慢性疲労症候群。日本疲労学会評議員、2002年京都府立医科大学 医学部卒業、2009年大阪市立大学(現:大阪公立大学)疲労クリニカルセンターにて臨床研究、2014年 ナカトミファティーグケアクリニック 院長に就任。https://tukare.jp/

◆教えてくれたのは:和洋女子大学教授・鈴木敏和さん

薬学博士、和洋女子大学家政学部健康栄養学科・大学院総合生活研究科教授。千葉大学薬学研究科博士課程終了後、国立予防衛生研究所、横浜市立大学、千葉大学などの研究室を経て、現職に。コエンザイムQ10の研究論文を多数発表している。

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