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猫の目の病気で圧倒的に多い「結膜炎」、白目の充血や目の周りの腫れは要注意

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猫の目の病気で圧倒的に多い「結膜炎」(Ph/イメージマート)
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猫といえば、私たち人間に比べて耳がいい、鼻が利くというイメージですが、目はどうでしょうか。猫の目の見え方や病気のリスクについて、獣医師の山本昌彦さんに解説してもらいます。

猫は静止視力が弱く、動体視力が強い

私たちが健康診断などで測定する視力は、自分が静止した状態で、静止した物体を識別する「静止視力」です。アルファベットの「C」のようなマーク(ランドルト環)が並んだ視力表を使って測ります。「子供の頃は両目とも1.5だった」「1.0を切ったからメガネを作った」――そんな感覚で、普段は1.0前後の視力を確保して仕事や生活をしている人が多いと思います。猫の目はこの尺度でいうと0.1~0.2程度だとされています。

暗いところで目が効く理由

山本さんいわく「猫は10m先ぐらいまでしか物を識別できないと思います。色覚も、人間の目にはRGB(赤・緑・青)が見えますが、猫は赤が認識できないとされています。そのかわり、動くものを捉える動体視力は人間より優れていますし、暗いところでもわずかな光を利用して物を見ることができます」。

猫の夜目が利くのは、網膜の外側にタペタムという反射板の役割を果たす膜があるためです。この膜で外からの光を反射して網膜に返すことで、その反射光の分だけ光量が増え、周囲が暗くても猫は物が見やすいのです。

猫の目の病気で多いのは結膜炎 白内障はまれ

猫の目の病気には、どんなものがあるでしょうか。

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猫の目の病気には、どんなものが?(Ph/イメージマート)
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「症状として多いのは、目やに、涙、充血ですね。ただし、直接、目に原因がある目の病気というよりは、なんらかの感染症にかかって、その症状の一つとして目に異常が現れることが多いです。犬や人間によく見られる白内障も、猫では少ないと思います」(山本さん・以下同)

病気の種類は、眼球内の圧力が異常に高まって視神経が圧迫される緑内障、高血圧が原因で網膜が損傷したり剥離したりする高血圧性網膜症、黒目部分を覆う角膜がケンカや事故などで傷つく角膜炎などさまざまですが、最もかかりやすいとされるのが結膜炎です。猫が目の病気で動物病院を受診する場合、約半数が結膜炎だといいます。

猫の結膜炎は感染症の一症状であるケースが多い

結膜は、白目部分とまぶたの裏側を覆っている薄い膜のことで、白目側とまぶた側の膜が袋状になってつながっていて、これが目の上下にあります。この結膜に充血や浮腫が生じるのが結膜炎です。

「結膜炎も、感染症から来るものが多いですね。ヘルペスやカシリなどのウイルスに感染して、発熱したりくしゃみや鼻水が出たりして、目にも結膜の炎症という形で異常が出るわけです。

結膜炎は他に、クラミジアやマイコプラズマなど、微生物感染、細菌感染が原因になることもあります。アレルギー性の結膜炎もありますね。もちろん、異物が入ったり、まぶたの裏にできものができたりして結膜炎になるケースもあります」

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猫の結膜炎は感染症の一症状であるケースが多い(Ph/イメージマート)
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ひどくなるとまぶたが開かなくなることも

症状としては、結膜に水が滞ってまぶたの内側がふくらんでしまいます。白目部分が充血して赤くなったり、涙が過剰に出てきたり、目やにが黄色っぽくなったり粘度が普段より高くなったりすることも。ひどくなると、眼球と結膜が癒着して、まぶたが開かなくなることもあるといいます。

動物病院での治療は、まず目をきれいに洗って、抗生剤や消炎剤などの目薬をさすというもの。また、原因別に内服薬や注射、ネブライザー療法などによる治療も並行して進めます。

飼い主は病院受診や隔離、患部の保護を

充血や目の周りの腫れなど、結膜炎らしき症状が出たときに、飼い主さんがすべきことは何でしょうか。

「目の周りがむくんだような感じになっていたら、すぐに動物病院へ連れて行ってあげてください。猫の目を洗浄するのはご家庭では難しいと思いますし、かえって眼球に傷がつく恐れもあるので、直接、目にアプローチするようなことを急いでやらないほうがいいですね。ご自宅にエリザベスカラー(首回りに装着する円錐台形の保護具)があれば、すぐに装着して、猫が患部を触らないようにするとベターです」

また、感染性の結膜炎である可能性があるので、同居している他のペットから隔離すること、飼い主さんもケアのあとで手を洗うことが重要です。

鼻の短い猫たちがかかりやすい病気も

猫の目の病気には、特に短頭種でリスクの高い病気もあるので、“鼻ぺちゃさん”を飼っている人は心得ておきたいところです。

具体的には、流涙症(りゅうるいしょう)、涙やけ、眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)などがあります。流涙症は目から常に涙があふれている状態のこと。涙が過剰に作られたり、うまく排出されなかったりしてこのような状態になることがあります。

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鼻の短い猫たちがかかりやすい病気も(Ph/イメージマート)
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「ペルシャやスコティッシュフォールド、ヒマラヤンなどでは、目と鼻をつなぐ鼻涙管がもともと狭いので、ちょっとしたことでその狭窄の度合いが強まって、涙が鼻に流れなくなることがあります。

治療法としては、鼻涙管に細い管を通して洗浄するなど、いくつか選択肢があります。他の目の疾患が原因で発症することがあるので、その場合は原因になっている病気の治療をします」

涙やけは、涙で目の周りの毛が変色した状態をいいます。

「涙の量が増えている証拠なので、湿らせたコットンなどで優しく拭き取って目の周りを清潔に保ちながら、目やにの色や粘っこさ、白目の充血具合など、目の様子を日頃から気にかけておきましょう」

眼瞼内反症も短頭種で他の猫種より高リスクに

眼瞼内反症は、まぶたが内側に入り込んでしまうことをいいます。眼球周辺の皮膚が余っていて、まぶたが眼球側に巻き込まれてしまうというもので、これも短頭種で他の猫種より高リスクになっています。

「まつ毛やまぶたに生えた被毛が逆まつ毛状態になって眼球周辺に触れ、炎症を起こします。根本的な治療法は、まぶたの余った皮膚を切開して縫い縮める形成外科手術です」

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

山本
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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