飼い主は病院受診や隔離、患部の保護を
充血や目の周りの腫れなど、結膜炎らしき症状が出たときに、飼い主さんがすべきことは何でしょうか。
「目の周りがむくんだような感じになっていたら、すぐに動物病院へ連れて行ってあげてください。猫の目を洗浄するのはご家庭では難しいと思いますし、かえって眼球に傷がつく恐れもあるので、直接、目にアプローチするようなことを急いでやらないほうがいいですね。ご自宅にエリザベスカラー(首回りに装着する円錐台形の保護具)があれば、すぐに装着して、猫が患部を触らないようにするとベターです」
また、感染性の結膜炎である可能性があるので、同居している他のペットから隔離すること、飼い主さんもケアのあとで手を洗うことが重要です。
鼻の短い猫たちがかかりやすい病気も
猫の目の病気には、特に短頭種でリスクの高い病気もあるので、“鼻ぺちゃさん”を飼っている人は心得ておきたいところです。
具体的には、流涙症(りゅうるいしょう)、涙やけ、眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)などがあります。流涙症は目から常に涙があふれている状態のこと。涙が過剰に作られたり、うまく排出されなかったりしてこのような状態になることがあります。
「ペルシャやスコティッシュフォールド、ヒマラヤンなどでは、目と鼻をつなぐ鼻涙管がもともと狭いので、ちょっとしたことでその狭窄の度合いが強まって、涙が鼻に流れなくなることがあります。
治療法としては、鼻涙管に細い管を通して洗浄するなど、いくつか選択肢があります。他の目の疾患が原因で発症することがあるので、その場合は原因になっている病気の治療をします」
涙やけは、涙で目の周りの毛が変色した状態をいいます。
「涙の量が増えている証拠なので、湿らせたコットンなどで優しく拭き取って目の周りを清潔に保ちながら、目やにの色や粘っこさ、白目の充血具合など、目の様子を日頃から気にかけておきましょう」
眼瞼内反症も短頭種で他の猫種より高リスクに
眼瞼内反症は、まぶたが内側に入り込んでしまうことをいいます。眼球周辺の皮膚が余っていて、まぶたが眼球側に巻き込まれてしまうというもので、これも短頭種で他の猫種より高リスクになっています。
「まつ毛やまぶたに生えた被毛が逆まつ毛状態になって眼球周辺に触れ、炎症を起こします。根本的な治療法は、まぶたの余った皮膚を切開して縫い縮める形成外科手術です」
◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん
獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/
取材・文/赤坂麻実
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