
忘年会や正月のイベントで、冬は太りやすい季節。しかし、冬ならではの「冬太り」に気を付けないと、年間を通して体重が増加する負のスパイラルに陥る可能性もあります。冬太りのメカニズムと対策を、医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶さんに聞きました。
冬太りの負のスパイラルとは?
寒さから室内に引きこもってしまうと運動量が減り、雪の降る地域では行動も制限されます。特に年末年始は宴会などで飲む量や食べる量が増えがちで、摂取するカロリーが消費するカロリーを上回ることで、体重が増加してしまいます。加えて、冬の体重増加は、私たちの体の構造にも原因があるようです。

「気温が下がると体温を維持しようとして、エネルギーを消費します。寒いと体がガタガタと震えるのは熱を作り出しているのです。そのためエネルギーを欲し、溜め込もうとします。ところが、運動量は減っているので、冬はそれほどエネルギーを消費しません。その結果、太ってしまうのです。
また、口の中が乾燥することによって味覚感度が下がり、冬は味付けの濃いものがおいしく感じるという説もあり、オーバーカロリーになりやすい」(福田さん・以下同)

冬は服を重ね着しているので、少々ふくよかになったとしても「着ぶくれ」だとごまかせてしまいます。そうして増えた体重をいつまでも放置していると、「冬太りの負のスパイラル」が待っています。
「増えた体重を春まで持ち越して定着してしまうと、ホメオスタシス(生体の恒常性)という機能が働いて、体重を維持しようとします。夏になって急いでダイエットを始めて少々減ったとしても、体が元の体重に戻そうとしてしまうため簡単にはいきません。そのうち暑さに負けて動かなくなると、活動量まで減少します。
秋に増えた体重を持ち越してしまい、再び冬太りの季節が巡ってくる…。これが冬太りの負のスパイラルです。こうならないためにも、冬太りにならないように対策し、増えてしまった分は早めに戻してしまうことが大切です」
体重増加により腰や膝の痛み、病気のリスクも
体重が増えることによる問題は、見た目だけではありません。
「体重の増加をきっかけに、関節に負荷がかかって腰や膝に痛みが出るなど、体のあちこちに不調が起こります。特に50歳をすぎると、女性ホルモンのエストロゲンの働きが弱くなることで、脂質異常症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病にもなりやすいといわれているので、注意が必要です。不調になればますます体を動かさなくなるので、さらに体重が増えてしまいます」

冬太りの対策のポイントは「3つの“あ”」
年末年始は、クリスマス、忘年会、里帰りなどで、会食の機会も増えます。しかし、そこでカロリーばかり気にしていると、せっかくのイベントを楽しめません。そこで福田さんは、食事で気を付けるべきポイントを教えてくれました。
「3つの“あ”を摂りすぎないようにするだけで、ずいぶんとカロリー摂取量が変わります。注意すべきは、“アルコール”、“甘いもの”、“脂もの”です。この3つはかぶらないように、1つだけにします。お酒を飲むなら、鶏の唐揚げや天ぷらのような脂の多いおかずを避けてサッパリとした刺身やサラダにする。
お肉を食べるにしても、脂身が比較的少ないローストビーフやカモ肉にするといいですね。デザートも糖質の多いケーキではなく少量のフルーツにするなど、少し選び方を変えるだけで、量はそれほど気にせずに会食を楽しめます」

食後1~2時間後に体を動かす
体を温めることも、冬太り対策としては有効です。
「定期的に運動することにより筋肉をつければ基礎代謝が上がり、体温も上がります。食事をすると糖はインスリンの働きによって1~2時間後に脂肪として体内に溜め込まれますが、この時間に体を動かすことで、血糖が脂肪になるのも防いでくれます」
コロナの流行により控えていた集まりも、今年は増えると予想されます。会食であれば、3つの“あ”を伝えて、周りも巻き込んでしまうのも冬太り予防に有効です。

「運動をするにしても、本格的な筋トレをしなくてもいいのです。インターネットで、ダンスやストレッチを指導する動画はたくさんあります。好きな音楽に合わせて体を動かせば、楽しみながら運動することもできます。年末年始で、親戚や友達と集まるときには、フィットネス系のゲームをするのも盛り上がりますよ。人が集まることを利用するのも、今年ならではの冬太り対策なのかもしれません」
◆教えてくれたのは:医学博士・健康科学アドバイザー・福田千晶さん

1988年に慶應義塾大学医学部卒業。医師として東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科勤務を経て、1996年より、フリーランスの健康科学アドバイザーとしてテレビやラジオ番組への出演、執筆、講演などで活動。『そもそも血糖値ってなんですか?』『高たんぱく質レシピ151』 (ともに主婦の友社)、『危ない! 命を縮める健康法』(アントレックス)など著書・監修書多数。https://fukuda-chiaki.com/
取材・文/小山内麗香