年末の第73回紅白歌合戦(NHK)に出場が決まった工藤静香。今年、2022年はデビュー35周年の記念イヤーでもあり、それを記念したセルフカバー・アルバムの発売や、歌番組などへの出演が続きました。1980〜1990年代のエンタメ事情に詳しいライターの田中稲さんは、彼女の持つ「魔力と中毒性」を、カラオケで歌って改めて気づいたと言います。その魅力について、田中さんが綴ります。
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気合いと歌声に圧倒されたデビュー曲
なぜか猛烈に惹かれてしまう……! どこか強気で攻撃的なルックス。濃厚な恋愛を漂わせる楽曲。正直、私は本来ならストライクゾーン圏外のタイプである。しかし彼女の引力には抗えない。なんというか、歌う彼女からものすごく美しい紫の糸が出ていて、それに絡まれ、引っ張られていくイメージ。
思い出せば、工藤静香さんとの出会いは1987年。まだおニャン子クラブの派生ユニット「うしろ髪ひかれ隊」として活動していた頃である。当時大好きだったアニメ『ハイスクール!奇面組』の主題歌『時の河を越えて』が滅法よかったのだ。
彼女は同年『禁断のテレパシー』でソロデビュー。ただ、ザ・ベストテンでこの曲がランクインし登場したとき、私はすぐにうしろ髪ひかれ隊の人だと気づかなかった。急に「攻撃的なタレ眉」という珍しいタイプの美人が出てきて、歌を歌ったらそれがのけぞるほど上手。
「なんか迫力が凄い子出てきた!?」とひたすらビックリしたのであった。
私は先入観で「おニャン子はみな歌がうまくない」と決めつけていた節がある(演歌を歌っていた城之内早苗さんは除き)。好きだったうしろ髪ひかれ隊もまあまあ、おニャン子にしてはうまい、程度の評価だった。いわばレッテルを貼っていたのだ。
工藤静香のソロは、その隙を与えなかった感じ。レッテルを貼る暇もなく、オラオラとパフォーマンスを見せつけられ、ただただその気合いと歌声に圧倒された。あれからもう35年!