
脱水は夏になるイメージがありますが、実は要注意なのは冬です。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは、脱水に気づかずに放置すると、全身の不調につながるので注意が必要だと話します。そこで、冬の水分補給と食事で気をつけたいポイント、おすすめの漢方薬について教えてもらいました。
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かくれ脱水とは?
かくれ脱水とは、脱水の初期状態に気づいていない状態をさします。具体的な症状を見てみましょう。
かくれ脱水の症状
・口の渇き、だ液の減少
・唇や舌の乾燥
・肌の乾燥
・肌の弾力の低下
・疲労感、だるさ
・集中力が続かない
・立ちくらみ、めまい
かくれ脱水の症状は「なんとなく体調が悪い」程度のものです。進行して脱水状態になると、手足のふるえやふらつき、意識の昏迷、頭痛、呼吸数の上昇などの症状につながります。

初期の症状の軽さから、対処が遅れることもあるので注意しましょう。
かくれ脱水が冬に起こりやすい理由
汗をかきづらい冬に脱水が起こる原因の1つは、皮膚や粘膜、呼気から意識しないで水分を失う「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」が増えるからです。
人にとって快適な湿度は55~65%といわれていますが、冬は屋外の湿度が50%前後まで下がる日も多くあります。加えて、室内では暖房器具の使用や建物の気密性の高さの影響で、さらに10~20%も下がるといわれています。
水分は多い場所から少ない場所へ移動する性質があるため、湿度の低い環境では体内から奪われる水分が増えるのです。
脱水チェックは尿の色を参考に、正しく水分補給
水分摂取量の目安は、尿や便、不感蒸泄で失われる2.5リットルを補うために、食事から1.0リットル、飲み水から1.2リットル、体内で作られる0.3リットルが必要とされています。しかし、排出量は個人差が大きく、日によっても変わるので、体調をみながら調整が必要です。
参考になるのは尿の色です。薄い黄色や黄みがかった透明なら問題ありませんが、はっきりとした黄色、鮮やかな黄色の場合は要注意です。その場合は、1時間以内に250mlの水分を摂りましょう。

また、水分を失いやすいタイミングに、コップ1杯程度の水分を摂るのも脱水予防に有効です。就寝の前後、入浴の前後、スポーツ中と前後、飲酒中と後などに水分を摂ることを意識してみてください。
水分の半分は食事から! 脱水予防に効果的な料理
水分が細胞に吸収される際に結合する、糖分を一緒に摂ることが脱水予防に効果的です。そこで、水分と糖質を効率的に摂ることができるおすすめの汁物を3つご紹介します。
さつま汁

さつま汁は鹿児島県の郷土料理で、鶏肉としいたけ、こんにゃく、ごぼう、大根を炒めてから出汁で煮て、味噌などで味付けする具だくさんの味噌汁です。
ごぼうや大根の根菜には糖質が含まれていて、汁物で食べると脱水予防に役立ちます。
芋煮

山形県など東北地方の郷土料理である芋煮。糖質を多く含む里芋を中心とした具に、たっぷりの汁で脱水予防に効果的です。
里芋以外には、牛肉、こんにゃく、ねぎ、地域によっては豚肉や鶏肉、きのこなどが入ります。味付けも、しょうゆや味噌などバリエーション豊富に楽しめます。
クラムチャウダー

クラムチャウダーは、あさりやはまぐりなどの二枚貝と、糖質を含む玉ねぎとじゃがいもなどの野菜を煮込んだアメリカのスープです。
トマトで煮込むマンハッタン・クラムチャウダーと、牛乳で煮込むイングランド・クラムチャウダーがあり、どちらも水分と糖質を同時に摂取することができます。
かくれ脱水の症状には漢方もおすすめ
脱水対策には、漢方薬をのむという方法もあります。脱水は、発汗過多以外にも、体内の水分バランスの偏りや、水分を吸収し調整する胃腸の機能低下が原因と考えられています。
そのため、脱水対策には「水分代謝を改善し、余分な脱水を防ぐ」「胃腸の機能を回復し、水分の吸収をよくする」「水の巡りをよくし、体中に必要な水分を届ける」などの働きのある生薬を含む漢方薬を選びます。
漢方薬は根本からの改善を得意としているので、脱水になりにくいだけでなく、皮膚が潤ったり、疲労やストレスに負けない体を手に入れたりすることができます。また、漢方薬は自然の生薬からできていて、一般的に副作用が少ないとされているので、初めての人でも安心して利用できることもメリットです。

かくれ脱水におすすめの漢方薬2つ
・麦門冬湯(ばくもんどうとう)
胃や肺の潤いを補う漢方薬です。呼吸器系や上気道が乾燥して起こる咳や気管支炎などに用いられます。
・五苓散(ごれいさん)
水分代謝を促し、全身の水分バランスを整える漢方薬です。むくみや吐き気、めまいや頭痛などに幅広く用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。