ただ話を聞いてほしいだけなのに、上の空でロクに聞いてくれなかったり、聞いてくれたと思ったら説教じみた話をされたり…。夫婦といえどコミュニケーションが思うようにとれずイライラしてしまうとき、相手にイライラをぶつけず、上手にコントロールするのが関係を良好にするコツです。その方法について、『ついイラッときても感情的に反応しない方法を一冊にまとめてみた』(アスコム)の著者で精神科医の和田秀樹さんに教えてもらいました。
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話を聞いてほしい妻、原因を究明しようとする夫
体の構造が違うのと同じように、男女で心の在り方や感じ方が違うことが夫婦間でイライラが起こる原因の1つ。ちょっと嫌なことがあったときなど、ただ話を聞いてほしいだけの女性に対し、男性は原因究明をしようとする性質が強いという男女差があるのだそうです。これを知っているかどうかでも、相手にイライラとする気持ちが少し楽になりませんか?
察する能力のない相手に求めない
さらに、ただ話を聞いてほしいということを先に伝えるのがいいと和田さんは言います。
「『あなたは本当に聞き上手だから……。ちょっとだけ聞いてほしいことがあるの』。本題に入る前に、こんな言葉をトッピングしましょう。加えて、笑顔が不可欠です。演技でいいので、ニコッとしましょう。笑顔はときとして最強の武器になります」(和田さん・以下同)
先に相手を褒めることで、プライドをくすぐりつつ、「あなたに話をするだけで気持ちが楽になる」といった言葉を付け加えれば完璧。そして話を聞いてもらった後は、話を聞いてもらったことに対するお礼を伝えましょう。それを繰り返せば、夫はきちんと話を聞いてくれるようになるそうです。
「察してもらいたい怒りがあることはわかります。けれども、察する能力のない人にそれを求めても、仕方がありません。しかし、考え方次第です。『問題提起がなされれば、解決策はすでにそこにある』。そんな考え方があります。話を聞いてもらうことは、問題提起そのものです。夫にただ聞いてもらうことで、あなたは怒りと折り合い、自分で解決策を見つけることができるはずなのです」
「わかってくれない」の代わりに「お願い」
察してもらおうとせずに「お願い」をすることは、話を聞いてもらいたいとき以外にも効果的です。
「男性のプライドはとことん刺激するにかぎります。話を聞いてほしいときだけではありません。『今日は、仕事で疲れちゃったの。お願い、ご飯作って』。そう言って頼んでみてください。『何もわかってくれない』の代わりにまず『お願い』です。さまざまな怒りの種が発芽をストップさせるでしょう」
それでもイライラしたときの対処法
そうはいっても、長い時間をともに過ごすなかでは、どうしても相手にイライラしてしまうこともあるでしょう。そんなときは、まず怒りモードになってしまいそうな脳を鎮静化するのがいいと言います。
おすすめは甘いもの、冷たいもの
その方法として和田さんが提案するのは、イタリアンジェラートなどのスイーツを食べたり、冷たいものをぐっと飲んだりすることなのだそうです。
「 イライラしたときには、甘いものが欲しくなることがありますよね。甘いものを食べると、血糖値がすぐに上がります。すると、満足感を覚えたり、元気になったりする作用があります」
甘いものを食べることで心に余裕が生まれ、怒りモードがいったんオフに。さらに、「冷たい」というのも重要な要素なのだそう。
「よく、怒った人に『頭を冷やせ』という言葉を投げかけますが、それは正しい方法です。しかし、家の中や職場で、バケツに入った水を頭からかぶるというわけにもいきません。せいぜい冷たい水を飲むことくらいしかできませんが、それでも怒りの炎をしずめるのには十分に役に立ちます」
胃への刺激でリラックスモードに
食べたり飲んだりする行為は、感情が行動に直結するのを中断するクッション役になると和田さんは言います。さらに、胃が刺激されると副交感神経が優位になり、リラックスモードに入りやすくなる効果もあるそうです。
「副交感神経というのは自律神経のひとつで、これと対照的な働きをするのが交感神経です。怒っているときは、交感神経がバリバリに働いて、戦いのオーラが全開となっています。副交感神経というのは、温泉に入ってゆっくりしたときなどに働く神経で、体も心もリラックスします。何かを食べることで、戦闘モードからリラックスモードに脳が切り替わり、怒りも収まっていきます。副交感神経を優勢にすることです」
また、冷静になったら、怒りの原因について振り返ってみることも重要です。
「怒りが収まってしばらくしたら、なぜカーッとしたのか、冷静な脳のモードで考えてみてください。多くの場合、ごくささいなことで起こった自分に気づきます。それを繰り返していると、次に同じような場面に遭遇しても、学習効果が現れます」