
体の冷えは寒い時期に起こるというイメージがありますが、冷房の効いた部屋などで過ごす夏も冷えによる問題は起こります。『内臓を温めるという提案 代謝アップ×免疫力アップ× 血流アップ』(アスコム、監修:内科医・井上宏一さん)の著者で、約30年にわたり冷えを研究する理学博士で全国冷え症研究所の所長・山口勝利さんは、「冷え性は手足が冷たいことだけではなく、実は内臓が冷えていることも指します」と話します。季節を問わず気をつけたい、2つのタイプの冷え性について教えてもらいました。
【1】手足の末端まで血液が届かない「血管収縮型冷え性」
山口さんによると、冷え性には大きく分けて2つのタイプがあるそうです。同じ冷え性でも血管が広がるタイプと、閉じるタイプが混在しているのだとか。まず、冷え性のおおよそ7割を占める、手足が冷たい冷え性「血管収縮型冷え性」から紹介します。
「血管収縮型冷え性」の特徴をチェック
山口さんによると、手足が冷たい「血管収縮型冷え性」には次のような特徴があると言います。
□室内にいても手先、足先が冷える
□秋から春にかけて、また夏場でも冷房に酔って症状が出る
□主に下半身が強く冷える
□セルライトが多い
□手足がむくむ
□肩こり、腰痛、便秘、生理痛が気になる

冷えによって、さまざまな体調不良が起こると山口さんは話します。
「手足の温度が低いということは、体の深部の内臓の温度も低いということ。内臓が冷えると温度をコントロールしようとして、体を健康に保つ司令塔の役割を担っている自律神経に負担がかかり、乱れやすくなります。温度の減少によって、内臓そのものの動きも鈍くなって代謝が落ち、免疫細胞の働きが弱ってしまいます。
こうして痩せにくくなったり、疲れが抜けにくくなったりといったことが起こるのです」(山口さん・以下同)
「血管収縮型冷え性」の原因は血流の悪化
「血管収縮型冷え性」にはさまざまな原因があるものの、主に血液が手足の末端まで届いていないということが理由として挙げられるそうです。
「末端まで血液が届かない原因のひとつは、自律神経の乱れです。貧血症、低血圧、基礎代謝の低下、ストレスなどによって乱れた自律神経が、少しの寒さでも過敏に反応し、末端の血管が激しく収縮します。その結果、熱を運んでいる血液が手先や足先などの先端まで運ばれずに、手足の末端が冷えてしまうのです」
ほかにも、血液が手足の末端まで届かない理由は、自律神経の乱れ以外にも、関節が硬くなったり、骨格が歪んだり、外反母趾などで足の血管の柔軟性が低下して血流が悪くなったりということも挙げられるそうです。

【2】体温が高いのに内臓が冷えている「血管拡張型冷え性」
もうひとつの「血管拡張型冷え性」は、寒さを感じたり触れたりすると、手足は温かいのに、全身に寒気を感じるという冷え性。どういうものなのでしょうか?
隠れ冷え性「血管拡張型冷え性」の特徴
この冷え性も、さきほどの「血管収縮型冷え性」と同じく、自律神経の乱れが原因だと山口さんは話します。
「自律神経が乱れると、寒いときでも、血管が収縮しない場合があります。すると、熱が手足など、体の表面からどんどん逃げて、内臓温度は下がる一方で、熱が出ている体の表面は温かいという現象が起きるのです。これが『血管拡張型冷え性』です」
「血管拡張型冷え性」には、下記のような特徴があるそうです。
□全身が冷える
□体は冷えているのに手先足先にほてりを感じる
□体の冷えは感じず、手や足のほてりのみを感じることもある
□何枚重ね着しても寒い
□寝るときに電気毛布が手放せない、何枚も布団を重ねる
□年々ひどくなる
□冷房が苦手(少しでも気になる)
□一年を通して冷えを感じる
「血管拡張型冷え性」は自覚しにくい
「血管収縮型冷え性」の人は、体がほてりやすかったり、汗をかきやすかったりして、自分の内臓が冷えているとは自覚できない「隠れ冷え」になるケースが多いそうです。

山口さんは、頭痛や肩こり、腰痛など、内臓温度の低下によるほかの症状が現れて、はじめて自分が冷え性だったと気がつく人もたくさんいるのだと話します。さきほどのチェックポイントに該当する人は、早めに自覚を持って、これからご紹介する防寒対策を講じることをおすすめします。
冷え性を改善するかんたん“防寒”対策2選
山口さんによると、冷え性を改善して内臓温度を上げると、1℃につき基礎代謝が10〜15%アップし、自律神経も整って、血流がよくなるなどいいことずくめなのだそう。そこで冷え性を改善する、簡単に取り組める防寒対策を2つご紹介します。
体の熱が逃げるのをシャットアウトする「防寒テープ貼り」
「冷え性の人の足が冷たくなるのは、足の皮膚に近い血管から熱が逃げてしまっているのが原因のひとつ。特に冷えの自覚のある人は、まず対処療法として熱を体の外に逃さないようにすることが大切です」
熱を逃さないようにするためには、医療用の防水テープを足の甲の真ん中・内くるぶしのすぐ下・ひざの裏の真ん中といった血管が浮き出ている熱が逃げやすい場所に、名刺程度の大きさに切って貼るだけでOK。

貼るテープは、ドラッグストアなどに売っている、厚さがなるべく薄い30ミクロン以下の医療用の防水テープがおすすめだそうです。医療用でかぶれにくくなっているため、気にならなければ1日中貼っていてもかまわないそうですが、もしかゆくなるなど、皮膚に変化が起きたときはすみやかに剥がしましょう。
「血管収縮型冷え性」対策に腹巻きとカイロサンド
「血管収縮型冷え性」の人に特におすすめなのが、おなかを温める腹巻きと「カイロサンド」。手足が冷えている人は靴下を重ね履きしたり、足の底にカイロを貼ったりするのをよく見かけますが、山口さんによれば、冷え性の人は頭とお腹に血液がとどまって、手足まで十分に届いていないケースが非常に多いそうです。
「ですから、手足ばかりを温めても、結局熱を運んでくれる血液が十分に届いておらず、いっとき温めている部分がほかほかとしているだけで、根本的な冷え性の改善にはなりません。そこで、冷えている手足よりも温めるべきなのはおなかです。おなかを温めることで血管が拡張し、とどまっている血液が循環しはじめることが期待できます」

山口さんいわく、おすすめは腹巻きをすること。冬のアイテムのイメージがありますが、夏の冷房対策にも非常に有効だそうです。少し値段が張りますが、シルクだと保温性があり、蒸れにくいので長時間の着用に向いているのだとか。さらにおへその下に指を2〜3本分空けたところと、その真裏の背中に自分をサンドするようにカイロを貼る「カイロサンド」も即効性があってよいといいます。
◆教えてくれたのは:理学博士、柔道整復師、鍼灸師、全国冷え症研究所所長・山口勝利さん

冷えを改善しながらやせる形状記憶ボディメイクサロン・シェイプロック銀座代表。30歳のときに構えた鍼灸の治療院で多くの患者を施術するなかで、体の冷えがあらゆる不調の原因となっていることに気づき、「全国冷え症研究所」を1998年に開所。今では、全国に400の分室を持ち、冷えに関する6万人のデータを持つ。「冷え」の怖さ、対処法を広めるべく、TVや雑誌などにも多数出演し、「冷え症」治療の第一人者として注目されている。https://www.ogino-hs.com/hiesyou/index.html
◆内科医・井上宏一さん
日本内科学会認定内科医、日本抗加齢医学会専門医、南砂町おだやかクリニック院長。2000年3月順天堂大学医学部卒業後は、一つの臓器だけを専門にするのではなく、人間の体全体を診ることができる医師を目標に、小児科医、内科医として、さまざまな病院で研さんを積む。現在、南砂町おだやかクリニック院長を務め「『健康=幸せ』の実現をサポートする医療」を掲げ、西洋医学にとらわれず、代替医療も取り入れた総合医療を目指している。