将来の寝たきりリスクが高まるとされるロコモ(ロコモティブシンドローム)。加齢に伴う筋力の低下や病気などが原因で運動機能が衰えた状態を指します。高齢者特有の症状と思いがちですが、『長生き足腰のつくり方』(アスコム)の著者でスポーツ整形外科医の渡會公治さんによると、実は「ロコモ予備群」は40代から50代でも見られるそうです。渡會さんに、誰でも簡単にできるセルフチェックについて聞きました。
肩、腰、ひざに要注意
体のあちこちに衰えを感じ始める40代以降。渡會さんはこう注意を促します。
40代から始まる予備軍のサイン
「腰が痛い、肩がこる、ひざ関節が痛む……など、40歳を過ぎて体のどこかに違和感を覚えるようになったら、ロコモ予備群に入ったと自覚し、対策を考える必要があると思います」(渡會さん・以下同)
近年は10代の若年層でも肩こりや腰痛、手足の関節の痛みを訴える人が増えており、渡會さんは「運動能力の低下どころか、将来ロコモになる可能性を持つ子供たちが増えている恐れがあります。40代でロコモ予備群と言っている人たちも、予備群どころかすでにロコモかもしれません」と危機感を示します。
「痛いから動かない」はNG
では、ロコモ予備群の人には今からどんな対策が必要でしょうか。
「運動器は全体として働く」
具体的な対策の前にまず大事なことは、「全身を動かす」という体に対する意識です。
「人間の体は筋肉と骨だけを使って動いているのではありません。関節、神経、さらには靭帯や腱、軟骨なども使われています。それらを総称して『運動器』と呼んでいます。
例えば右脚を前に出すとき、動いているのは右脚だけに見えても、実際には左脚で支えています。さらに姿勢を保つために、腹筋も背筋も働いています。つまり、右脚を前に出す動きは、『全身の動き』ということです」
運動器のどこかが悪くなると、全身がうまく動かなくなり、やがて痛みがあるところ以外も痛くなってくることはよくあることです。
「適度な」運動が必要な理由
痛みがあるからといって「動かない」でいると、事態はますます悪化すると言います。
「人体を構成する運動器は、使えばよくなり、使わなければ悪くなり、使いすぎるとまた悪くなります。体には『適度な』運動が必要なのです。
反対に、『痛いから動かない』は、楽しい人生を放棄するようなものです。痛みがある人はじっとしているのではなく、上手な体の使い方を覚え、少しずつでも筋肉を鍛え、やわらかくしていくことで、以前より動けるようになり、行動範囲が広くなります」
そして、体のどこかに痛みが出始めたときこそ、「考えどき」であると渡會さんは指摘します。
まだ動ける今こそ
「腰が痛いけれど、まだ動ける、膝が痛いけれど、まだ歩けるという状態のときこそロコモ対策の『考えどき』です。その後の人生を楽しい豊かなものにするか、誰かの助けが必要な不自由な日々を送ることになるか、そこで違ってきます」