健康・医療

「痛いけど、まだ動ける」今こそ考えどき 長生き足腰をつくるための「ロコモ予備群」セルフチェック

40代から50代でも「ロコモ予備群」の可能性が…(Ph/photo AC)
写真5枚

将来の寝たきりリスクが高まるとされるロコモ(ロコモティブシンドローム)。加齢に伴う筋力の低下や病気などが原因で運動機能が衰えた状態を指します。高齢者特有の症状と思いがちですが、『長生き足腰のつくり方』(アスコム)の著者でスポーツ整形外科医の渡會公治さんによると、実は「ロコモ予備群」は40代から50代でも見られるそうです。渡會さんに、誰でも簡単にできるセルフチェックについて聞きました。

肩、腰、ひざに要注意

体のあちこちに衰えを感じ始める40代以降。渡會さんはこう注意を促します。

40代から始まる予備軍のサイン

「腰が痛い、肩がこる、ひざ関節が痛む……など、40歳を過ぎて体のどこかに違和感を覚えるようになったら、ロコモ予備群に入ったと自覚し、対策を考える必要があると思います」(渡會さん・以下同)

腰、肩、ひざなどに違和感を覚えたら対策が必要(Ph/photoAC)
写真5枚

近年は10代の若年層でも肩こりや腰痛、手足の関節の痛みを訴える人が増えており、渡會さんは「運動能力の低下どころか、将来ロコモになる可能性を持つ子供たちが増えている恐れがあります。40代でロコモ予備群と言っている人たちも、予備群どころかすでにロコモかもしれません」と危機感を示します。

「痛いから動かない」はNG

では、ロコモ予備群の人には今からどんな対策が必要でしょうか。

「運動器は全体として働く」

具体的な対策の前にまず大事なことは、「全身を動かす」という体に対する意識です。

「人間の体は筋肉と骨だけを使って動いているのではありません。関節、神経、さらには靭帯や腱、軟骨なども使われています。それらを総称して『運動器』と呼んでいます。

例えば右脚を前に出すとき、動いているのは右脚だけに見えても、実際には左脚で支えています。さらに姿勢を保つために、腹筋も背筋も働いています。つまり、右脚を前に出す動きは、『全身の動き』ということです」

運動器のどこかが悪くなると、全身がうまく動かなくなり、やがて痛みがあるところ以外も痛くなってくることはよくあることです。

「右脚を前に出す」ときも全身が動いている(Ph/photoAC)
写真5枚

「適度な」運動が必要な理由

痛みがあるからといって「動かない」でいると、事態はますます悪化すると言います。

「人体を構成する運動器は、使えばよくなり、使わなければ悪くなり、使いすぎるとまた悪くなります。体には『適度な』運動が必要なのです。

反対に、『痛いから動かない』は、楽しい人生を放棄するようなものです。痛みがある人はじっとしているのではなく、上手な体の使い方を覚え、少しずつでも筋肉を鍛え、やわらかくしていくことで、以前より動けるようになり、行動範囲が広くなります」

そして、体のどこかに痛みが出始めたときこそ、「考えどき」であると渡會さんは指摘します。

まだ動ける今こそ

「腰が痛いけれど、まだ動ける、膝が痛いけれど、まだ歩けるという状態のときこそロコモ対策の『考えどき』です。その後の人生を楽しい豊かなものにするか、誰かの助けが必要な不自由な日々を送ることになるか、そこで違ってきます」

「ロコモ予備群」セルフチェック

現在、痛みなどの思い当たる症状がなくても、何気なくしている日常生活の行動から「ロコモ予備群」に該当するかどうかを診断することが可能です。ここで、渡會さんが考案した「ロコモ予備群」のセルフチェック13項目をご紹介します。

つい習慣にしている行動が…

「次の13項目のうち、ひとつでも思い当たることがあれば要注意です」

【1】運動らしいことはまったくしていない
【2】近所に出かける時も車を利用する
【3】列に並んででもエスカレーターを利用する
【4】ひとつ上の階でもエレベーターを利用する
【5】ズボンや靴下を座ってはくようになった

靴下を座ってはいている人は注意!日常の習慣から「ロコモ予備群」の可能性がわかる(Ph/イメージマート)
写真5枚

【6】草野球などのスポーツに誘われても断る
【7】長時間の運転がつらくなった
【8】電車の中では、いつも座れる場所を探している
【9】ゴルフでカップインしたボールを拾うのがいやだと思うようになった
【10】歩くスピードが落ちてきて、人に追い越されるようになった
【11】近いところでもタクシーを利用している
【12】歩いていて靴がひっかかることがよくある
【13】掃除がおっくうになって、ロボットタイプの掃除機を購入した

「いかがでしょうか。ロコモ対策をはじめるきっかけをチャンスだと思い、普段の生活を見直してみてください」

◆教えてくれたのは:スポーツ整形外科医・渡會公治さん

スポーツ整形外科医の渡會公治さん
写真5枚

帝京科学大学(スポーツ医学)特任教授、日本ロコモティブシンドローム研究会メンバー、一般社団法人美立健康協会代表理事。1947年、静岡市生まれ。東京大学医学部卒業。オリンピック代表やプロスポーツ選手の診察・治療を手がけた経験を生かし、同研究会が提唱する「ロコモ体操」を考案。整形外科医として各地で中高年向けのロコモ体操教室を開催している。2023年5月、『長生き足腰のつくり方』(アスコム)を出版。

●「誰ともつながらない」メリットも!早起きトレーナーがすすめる「週末朝活」の実践法 

●将来の寝たきりリスクが激増する「ロコモ」 1つでも当てはまれば要注意の7つのチェックリストを整形外科医が解説

関連キーワード