健康な人でもダメ、消毒してもダメ
たくさんの人獣共通感染症があり、犬や猫とのキスも感染経路になりえることは、動かしようのない事実です。特に高齢者や体力が低下している人、免疫抑制療法を受けている人は、リスクを認識しておくべきでしょう。
ただ、「健康な人が愛犬や愛猫との(キスを含む)ふれあいを楽しんではいけないの?」「もしも顔をなめられたら、口は閉じる、遊んだあとに顔や手をよく洗う、という対応ではいけないの?」といった疑問も浮かんでくるのですが――。
「それもやめてください。健康な人でも、後から消毒しても、一定のリスクはあります。それに、飼い主さんが喜んで愛犬や愛猫のキスを受けていると、犬や猫はそれが悪いことだとは当然分からないので、他の人にもするかもしれません。顔をなめるのはダメと教え込むべきです。
エサを口移しでペットに与えること、お箸(はし)やスプーンなどをペットと共用することも、してはいけません。さらに言えば、飼い主さんの布団にペットを入れて一緒に寝るのも本当はよくありません。長く一緒に暮らしている猫でも、飼い主さんが急に寝返りを打ったりすると驚いてひっかいてしまうことがありえます。また、そうしたときに飼い主さんの目が覚めず、すぐ消毒できなかったりすると感染症のリスクは上がります」
犬や猫と平和でハッピーな暮らしを続けるには、過度なスキンシップはやはりご法度。一緒に遊んだり、手でなでたり、ブラッシングをしたり、他のやり方で楽しい時間を持ちたいものですね。
◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん
獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/
取材・文/赤坂麻実
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