
首元の露出が増える夏は、首にできたイボが丸見えになってしまうのが気になる、という悩みも。でも、薬剤師の碇純子さんによると、首イボは生活習慣や食事で予防することができるそうです。対処法について、詳しくお話をうかがいました。
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首イボとは?種類や大きさ
イボは大きく分けてウイルス性のものと、そうでないものの2種類に分類されます。「首イボ」には、アクロコルドン 、スキンタッグ 、軟性線維腫と呼ばれるものがあり、いずれもウイルス性ではありません。

特徴は茶色く1〜数mm程度の大きさで、引っ張れば取れそうなほど皮膚から飛び出ているものや、5mm以上の大きさのものもあります。
なお、イボの表面が赤黒く見えたり、ガサガサしていたりする場合はウイルス性の可能性があります。他の部位への飛び火や他人へうつす場合があるため、早めに皮膚科へ相談したほうがいいでしょう。
除去できる?首イボの治療方法
ウイルス性ではない首にできるイボを、一般的に首イボと呼び、これは悪性度が低いので放置しても問題ないといわれています。自然に取れることもありますが、基本的には良性の「腫瘍」であるため、市販薬やスキンケアでの除去は難しいです。首イボが気になる場合には皮膚科を受診し、ハサミでの切除や液体窒素を用いた冷凍療法、炭酸ガスレーザーなどで除去してもらう必要があります。ピンセットなどによる自己処理は、肌に負担をかける可能性が高いため、やめましょう。

また、ヨクイニンはイボに効くイメージがありますが、ウイルス性のイボに働きかける生薬のため、首イボには効果が期待できません。
首イボの予防方法、服装や紫外線対策も
このように、一度できてしまうと自分で除去することが難しい首イボですが、できないように予防することは可能です。首イボの予防に有効な方法としては、摩擦を避けることと紫外線対策があげられます。
摩擦の少ない服装を心がける
首元は服やアクセサリーの着脱で摩擦が起き、肌ダメージを受けることが多い部位です。継続してダメージを受けた肌は、細胞が過剰に増殖して盛り上がり、イボとなってあらわれる場合があるのです。
そのため、首イボを予防するには、できる限り首元に摩擦の少ない服装を心がけましょう。たとえば、ネックレスや大きなイヤリングなど、首元に刺激を与えるアクセサリー類の使用は避け、特別な日のおしゃれにしぼって使うようにすると肌への負担を減すことができます。

また、えり付きやハイネックなどの服は避け、首元が広めの服を選ぶといいでしょう。首元が広い服は、着用中の肌への刺激を抑えるほかに脱着時の摩擦も少なくできます。
十分な紫外線対策
紫外線は、肌のバリア機能や再生機能を低下させてダメージを与えます。とくに、肌の再生機能が低下すると、古い皮膚がうまく排出されずにイボとなってあらわれる場合があります。また、首イボだけでなく、シミが盛り上がってイボ化する「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」の原因にもなるので、十分に対策をしましょう。
日焼け止めの選び方のポイントは、SPF・PA値をライフスタイルに合ったものにすることです。SPFは、肌に炎症を起こしメラニンを増加させてシミ・そばかすの原因になる「UV-B」を防ぎ、PAは肌の奥深くにダメージを与えてシワやたるみを引き起こす「UV-A」を防ぎます。

SPF値は2〜50の数字で、PA値は+の数で紫外線への防御力が示され、それぞれ値が大きいほど効果が高くなります。そのため、一番防御力が高いものを選びたくなりますが、防御力が高いものは肌への負担も増えるため、シーン別に日焼け止めを使い分けるのが安心です。
たとえば、買い物や散歩などの近場の外出ならSPF10〜20・PA++、屋外でのスポーツやレジャーにはSPF30〜50・PA+++~++++、汗を多くかいたり水に濡れたりするときはSPF50・PA++++のウォータープルーフタイプを選ぶといいでしょう。パッケージに記載されている適量を使い、2〜3時間に1回は塗り直すことが推奨されています。
首イボの予防に効果的な食材
首イボの予防に効果的な栄養素は、肌の老化を予防する「ビタミンA」や「ビタミンE」、新陳代謝を促す「ビタミンB群」や「ビタミンC」、「亜鉛」などです。
ビタミンA・亜鉛は鶏レバー、ビタミンEは鶏卵、ビタミンB群はモロヘイヤ、ビタミンCは赤パプリカに多く含まれます。鶏レバー・鶏卵以外は、夏が旬の野菜のため入手しやすく味もよいでしょう。

ビタミンA、ビタミンEは脂溶性のため、鶏レバーとニラに鶏卵を加え油で炒め物にした「レバニラ卵とじ」などにすると効率よく吸収できます。鶏レバーを使うことで亜鉛も摂取できるので、一石二鳥です。

ビタミンB群、ビタミンCは水溶性のため、汁ごと食べられるスープにするのがおすすめです。コンソメスープにモロヘイヤ、赤パプリカ、酸味のあるトマトを加えれば、夏にもたべやすいさっぱりとした風味になるでしょう。
なお、ビタミンB群、ビタミンCは体内で吸収されなかった分は数時間で体外へと排出されるため、継続的な摂取が大切です。
また、亜鉛はビタミンCといっしょに摂取すると吸収率が高まる性質があるため、先ほどの「レバニラ卵とじ」を主菜に、「パプリカ・モロヘイヤ・トマトのコンソメスープ」を汁物にするとばっちりです。
首イボの予防には漢方薬も役立つ
首イボの予防には、漢方薬を活用するのもひとつの手段です。漢方薬は医薬品として効果が認められており、皮膚科でも用いられています。

首イボは、加齢による肌のバリア機能の低下や乾燥、紫外線によるダメージなどで肌が老化することが原因と考えられるので、「血流をよくして全身に栄養を届ける」「水分の循環をよくして肌に潤いを与える」「ホルモンバランスを整えて皮膚トラブルを軽減する」「肌の新陳代謝をよくして紫外線によるダメージを回復する」などの作用がある漢方薬を選びます。
首イボの対策に役立つ漢方薬
・当帰飲子(とうきいんし)
肌に栄養分と潤いを与えて乾燥や肌ダメージを軽減することで、湿疹や皮膚炎、かゆみなどに働きかけます。冷え症で、皮膚が乾燥しやすい人に用いる漢方薬です。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血流をよくして全身に栄養を巡らせることで、肌の水分代謝を高めます。肌荒れやにきび、シミが気になる人に用いる漢方薬です。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれた人:薬剤師・碇純子さん

いかり・すみこ。薬剤師。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)で情報発信を行っている。