
朝、目が覚めてもすぐに起きられず、二度寝をして後悔した経験は誰しもあるのでは?「頻繁に二度寝をしてしまう場合は、睡眠の質が悪い可能性があります」と話す薬剤師の山形ゆかりさんに、二度寝の原因やすっきり目覚める方法、睡眠の質を高めるのに役立つ食材、漢方薬について教えてもらった。
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二度寝の原因は睡眠の質の低さ
二度寝の原因には、睡眠の質の低さが挙げられます。睡眠の質を低下させる要因のひとつが体内時計の乱れです。体内時計の周期は約25時間であり、地球の自転周期である24時間よりも長いため、体内時計を毎日リセットする必要があります。
このリセットがうまくできないと、自然な眠りへ誘う働きを持つホルモンのメラトニンの分泌が抑制されてしまいます。睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンが十分に分泌されないことで、睡眠の質が低下するのです。睡眠の質が低いと、睡眠時間をしっかり確保していても体が十分に休めず、起床後も疲れが残ってしまいます。

また、ストレスも睡眠の質を低下させる要因です。ストレスにより自律神経が乱れることで交感神経が優位になり、脳が興奮状態になります。これにより浅い眠りの時間が多くなると、寝ても疲れが取れにくくなり、二度寝へとつながります。
さらに、二度寝を繰り返すことで体内時計が乱れ、睡眠の質が低下するという悪循環に陥ってしまうのです。
睡眠の質を高めすっきりと目覚める方法
つまり、つい二度寝をしてしまうということは、体の疲れが残っているサインだといえます。健康な生活を送るために重要な睡眠の質を高め、朝にすっきりと目覚めるための方法を3つ紹介します。
睡眠前に刺激になるものを避ける
スムーズに眠りに入るためには、就寝前に自律神経の副交感神経を優位にしてリラックスすることが重要です。
睡眠前に寒色系の照明をつけた部屋で過ごしたり、スマートフォンやタブレットなどを使ったりしていると、照明やディスプレーから出る光が交感神経を刺激し、体や脳が興奮状態になってしまいます。また、これらの強く明るい光は睡眠ホルモンの分泌も抑制します。
そのため、寝室にはスマートフォンやタブレットなどを持ち込まないようにするのがおすすめです。さらに、暖色系の間接照明を寝室に利用することで、睡眠ホルモンの分泌に影響を与えず、また、副交感神経が優位になりやすくリラックス効果を高めることができます。
朝食で体内時計をリセット
朝食でご飯やパンなどの糖質を摂取すると、血糖値の上昇とともにインスリンが分泌されます。この血糖値上昇とインスリンの分泌が体内時計のリセットへ働きかけるのです。つまり、朝食をしっかり摂ることも、質のよい睡眠のためには重要です。

また、たんぱく質やアミノ酸がインスリンに代わる働きをしていることが、体内時計のリセットに影響しているとの報告もあります(早稲田大学「タンパク質やアミノ酸の食事が末梢臓器の体内時計を同調させる 肥満防止や糖尿病治療への貢献に期待」https://www.waseda.jp/top/news/57000)。
毎日一定の時間に起きて決まった時間に糖質やたんぱく質が豊富な朝食を摂ることが、体内時計を整えることにつながります。
ラベンダーのアロマを使う
睡眠の質を高めるためには、ラベンダーのアロマもおすすめです。就寝中にラベンダーの香りを使うことで、起床時のコルチゾールの分泌促進が期待できます。
コルチゾールとは、糖値と血圧を上げて起床の準備をする働きがあるホルモンで、通常、起床後30〜45分後に分泌のピークを迎えます。
ある研究によると、就寝中にラベンダーの香りを使用すると、使用していないときよりも起床から起床後15分間のコルチゾールの分泌量が増大したと報告されています(大平雅子ほか「就寝中のラベンダー呈示が起床後の唾液中コルチゾール分泌に及ぼす影響」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/52/6/52_282/_pdf)。

どうしても二度寝をしたいときは、コルチゾールの分泌のピークを迎えるまでの時間である30〜45分後までの時間を目安に二度寝をすると、快適に目覚めることができるでしょう。
睡眠の質を高める食材
睡眠の質を高めるためには、睡眠ホルモンのメラトニンや、メラトニンの材料であるセロトニンの生成に不可欠なアミノ酸のトリプトファンを含む食材を積極的に摂ることが重要です。なぜなら、トリプトファンは体内で作り出すことができないからです。
トリプトファンが豊富な食材は、牛乳、チーズなどの乳製品、鶏胸肉、さば、豆腐や納豆などの大豆製品、バナナ、カシューナッツやアーモンドなどのナッツ類が挙げられます。ナッツ類は軽食やおやつに取り入れたり、朝食や小腹がすいたときの夜食にバナナを食べたりするのもおすすめです。

また、トリプトファンの吸収をよくする働きがあるビタミンB6はひれ肉やささみ、青魚などに豊富に含まれています。これらの食材と一緒にトリプトファンを多く含む食材を摂ることで、効率的にトリプトファンを摂取できます。
二度寝の改善には漢方薬も役立つ
二度寝の改善には、漢方薬の活用も効果的です。「血流を整え体に栄養を行き渡らせ、心と体を元気にする」「自律神経の乱れを整える」「心身の疲労により高ぶった精神を安定させる」といった働きをもつ漢方薬を選ぶことで、睡眠の質の改善が期待できます。
おすすめの漢方薬
・加味帰脾湯(かみきひとう)
血流を改善し、栄養を体に行き渡らせることで心と体を元気にし、睡眠の質の向上に働きかけます。疲れすぎて眠れない人におすすめです。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう)
血液や栄養を補い、精神を安定させて自律神経の乱れを整え、睡眠の質の向上に働きかけます。寝ても心と体の疲れがなかなかとれない人におすすめです。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。
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