《モリタク流人生観》がんステージ4の森永卓郎さん”ぼくがいま食べているもの” ラーメン、すし、アイス、ケーキ…「好きなものを食えるだけ食って間食もバンバンする」
歯に衣着せぬコメントで、経済や社会を鋭く分析してきた森永卓郎さん(67才)がすい臓がんと宣告されたのは昨年のこと。発見時、すでにステージ4。「来年の桜は見られない」と宣告されながら、桜も新緑も猛暑も、秋の風も感じながらいまなお精力的に情報を発信し続ける森永さんの体を作っているものとは? その食生活に迫る。【前後編の前編】
医師からは入院の延長を説得されたが断り退院
「一応、がん終末期なんです。いつ死んでも不思議じゃない」
「体重はね、順調にというか非順調にというか。昨日測ったら48.1kgまで落ちていた」
10月7日、出演したラジオ番組で現在の様子をこう語った森永さん。自身の病状について、「お医者さんが言うには腹水がどんどん減ってきているって。極めてレアケースで、腹水が減っていくのはほとんどないって」と、淡々と話す様子は、まるで株価を分析するかのようだ。
年の瀬も迫った昨年12月27日、報道機関に一通のプレスリリースが送付された。
《このたび経済アナリスト:森永卓郎が、膵臓がん(ステージ4)と診断されたことをご報告申し上げます》
がん宣告時について森永さんが振り返る。
「定期的に通っていた糖尿病の検査で、主治医から『人間ドックを受けた方がいい』と言われ受診することになりました。体重が通常より5kgも減っていて、私は忙しすぎるから過労かななんて思っていたんだけど、人間ドックを受けて、CT検査の結果を見ながら医師から言われたのは『来春の桜が咲くのを見ることはできないと思いますよ』でした」(森永さん・以下同)
医師の診断は、すい臓がんのステージ4。末期がんで余命は4か月と宣告された。自覚症状はまったくなかったと続ける。
「全国を飛び回って、朝から晩までフルで働いていたし、食事ももりもり食べていた。疑り深い性格なので、本当に診断は正しいのかとセカンドオピニオンもサードオピニオンも受けましたが、結果は同じ。そこですい臓がんのステージ4という状況を受け入れ、治療を始めることになりました」
抗がん剤治療を始めたものの、体に合わず「三途の川がはっきりと見え、死を意識した」という。自由診療による新薬で死の淵から生還し、2週間の入院を経て「無理矢理」退院した。医師からは体調が完全に戻ったわけではなく、入院を延長するよう説得されたが、「誰が何と言おうと雨が降ろうが槍が降ろうがいますぐ退院する」と言い張ったのだ。
「筋力もどんどん落ちて、気力も体力も限界だったんです。あのまま入院していたら二度と動けなくなっていたと思う。病院食からも逃れたかった。いろんなものを食べたくて、退院直後、自宅に向かう道中で焼き肉とすしの食べ放題の店に行きました」
朝はキムチラーメン、昼は回転寿司
がんを明かして以降、森永さんのもとには何千件もの「アドバイス」が届いたという。治療法や、生活習慣、食事についても殺到した。いくつもの情報や医師からの指導をもとに、森永さんが選んだのは、食べたいものを食べるという選択だった。
「お医者さんやがん患者の間でも、意見が真っ二つに分かれているんです。野菜を中心としたヘルシーなものか、完全自由か。お医者さんによっても意見が違いますから、そこで私は、すべての規制を撤廃することにした。特に糖分に関しては、がんの好物が糖分なのでお菓子とかを食べるなという人もいますが、私の最大の課題は、体重の減少を食い止めることなんです。
いまの体重はピーク時の102kgから半減してるんですよ。それを食い止めないと体力がもたない。だから、野菜はほとんどとらず、好きなものを食えるだけ食って、なおかつ、間食もバンバンするし、おやつもバンバン食べる」
本誌・女性セブンが取材した日の食事はこうだ。
「今朝はね、ラーメンにキムチをぶっ込んで、卵も入れてキムチ卵ラーメンをどんぶりいっぱい食べました。ただ、これは暴挙だったな(笑い)。胃が大変なことになったので、もうしないです。
昼は回転寿司に行って、山盛りのあら汁と、いわしフライの握りと、すじこの手巻きみたいなのを食いました。夜はもう買ってあって、崎陽軒のしゅうまいを山盛り食べます。1箱全部食べる予定です」
「効率の悪いヘルシーなものは絶対食わない」
毎日の食事は固定化せず、食べたいものを、食べたいときに、食べたいだけ、食べている。
「一度の食事で食べられる量がそんなに多くない。すぐにお腹がいっぱいになっちゃって、またすぐにお腹がすく。だからアイスもケーキもおやつでガンガン食べて、あとは一日中、アメをなめています。
その意味で野菜は非常に効率が悪い。少ない量では栄養が得られません。最も効率的にカロリーを摂ることを考えての食事スタイルです」
嫌いなものは絶対に食べないとも決めている。
「効率の悪いヘルシーなものは絶対食わない。ネバネバ系とか嫌いなんですよ。オクラとかめかぶとか。納豆やもずくは、嫌いではないけど毎日食べると飽きるので、気が向いたときだけ。
逆に積極的に食べているのは、大好物の脂っこいもの。肉でいうとロースやカルビ。豚バラブロックもよく食べます。奥さんが作ってくれる豚のから揚げが好きで、作ってもらってます。鶏のから揚げはどこでも食べられるけど、豚のから揚げってなかなか食べられないからね」
低糖質ダイエットでマイナス20kg
自由奔放な森永さんの食生活は、がんになる以前からだ。朝起きてすぐにかつ丼を食べ、昼はラーメンと炒飯、餃子セット。夜は立ち食いそば屋でかつカレー丼を食べるというのが常だった。
「1日5食が当たり前で、そのほとんどが丼もの。なぜかというと早く食べられるから。1食あたり平均5分以内ですませていました。牛丼やハンバーガーなどファストフードもよく食べてました。炭酸飲料もがぶ飲みしていましたし、不摂生を体現するような食生活でしたね。
体重はうなぎのぼりで、ウエストは110cmを超えていました」
2009年には糖尿病を発症し、尿路結石の激痛に苦しむなど体が悲鳴を上げ始め、2015年、森永さんは一念発起してダイエットに取り組むことになる。
「パーソナルトレーニングジム・RIZAPで肉体改造を行いました。トレーニングと低糖質ダイエットです。高たんぱくで低糖質の食事を3食腹いっぱい食べて、間食はしないというルールでした。食事量を減らさなくていいという点で、低糖質ダイエットは楽でしたね。お腹いっぱい食べられるし、酒だって飲める。
4か月で約20kgの減量に成功し、ウエストはマイナス20cmです。そう考えるといまの食生活は低糖質の真逆ですね」
一方で、この低糖質ダイエットがいまの食事に生きている部分があると森永さんは言う。 「がんになって卵をほぼ毎日食べるようになった。もともと好きでしたが、栄養価が高くて効率がいいんです。
毎日食べると飽きちゃうんだけど、低糖質ダイエット時代にも卵をたくさん食べていて、そのときにいろんな食べ方をしたので、目先を変えるのが得意なんですよ。スクランブルエッグとか卵焼きとか豆腐を混ぜたオムレツとかね。1分かからずにできますし。これはRIZAP時代の技術の蓄積です」
毎日のヨーグルトは奥さんと一緒に
卵を食べる習慣以外で、がんになって唯一変わったのが毎日のヨーグルトだ。
「がんになる前はヨーグルトを食べる習慣はいっさいなかったんです。いろいろな食事のアドバイスをもらった中で、ヨーグルトは摂取に害もなさそうだし、すすめてもらったものがおいしかったから。
でもこれも、毎日同じ種類ではなくて違うものを食べています。お医者さんが、ヨーグルトはそれぞれ菌が違うからと教えてくれて。気に入ってるものもいくつかあるんだけど、あえていろいろ食べるようにしています。食べるタイミングは家にいるときなので夜が多いかな。
ヨーグルトも、結局効率がいいんですよ。カップ1つでエネルギーがちゃんととれる。私、乳糖不耐症なので牛乳を飲むとすぐにお腹を下してしまうんですが、ヨーグルトは平気。プレーンよりもいちごやブルーベリーが入っているのが好きで、プレーンを食べるときはジャムとかはちみつをぶっ込んでます」
毎日のヨーグルトは奥さんも一緒に習慣化したため、「唯一共通の食習慣」になった。
「うちの奥さんはネバネバ系も好きだし、ヘルシーな食事も好きだし、一緒にご飯を食べようとすると整合性がとれない。食事で揉めるんですよ。奥さんは肉が好きじゃなくて肉を食べる人の気持ちがわからないので、ステーキも中までカリカリに焼いちゃって塩とかいっぱいかけちゃう。外だけ焼き色をつけて、中は赤い状態で塩はいらないって何度も言ってるんですけどね……。けんかになってしまうので、妻と同じ食事をとることはやめました」
(後編に続く)
※女性セブン2024年11月7日号