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《アラウンド90から学ぶ人生の楽しみ方》写真や動画を通じて深まった仲間や家族との絆「YouTubeチャンネルを開設して寿命が伸びた」

「老人虐待ではないか」と見る人を驚かせたが、実は西本さん自身が発案した「セルフポートレート(自撮り)」
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「老いては子に従え」「年寄りの冷や水」……。年を重ねると、体も心も弱くなり、自信を失ったり、何もかもおっくうになったりするのは、誰しもあること。だが「老化」は決して「劣化」ではない。年を重ねてきたからこそ見える景色や、長く生きなければ出会えない楽しみがたくさんあるのだ。“アラウンド90”の“大先輩がた”に話を聞き、人生の楽しみ方を学ぶ。【全3回の第1回】

第三の人生に必要なのは趣味と仲間

現在、日本の総人口の1.6%、200万人以上が「90才」を超えている。60代や70代など“まだまだ若い”と一蹴する「アラウンド90」の“大先輩がた”にしか見えない景色、境地を聞いた。

「第三の人生を楽しんでいる」と話すのは、現役フォトグラファーの西本喜美子さん(96才)だ。

美容師だった22才の頃、弟の影響で競輪選手に転身。結婚後は専業主婦として3人の子供を育て上げた。息子のすすめで「写真」を始めたのは72才のとき。物干し竿に吊られたり、ゴミ袋に入っていたりする姿を自撮りし、フォトショップなどのソフトで加工した作品がSNSを通じて世界中で注目を集め、いまでは個展を開いたり写真集を出版したりするほど。座右の銘は「もう年だと思うな」だという。

ゴミ袋に入っている姿を自撮りする西本喜美子さん
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「若い頃から、興味のあることは何でもやってきました。とにかくやってみて、ダメならやめればいいでしょう? でも、実際にやってみると、ダメなことってほとんどないんです。

やるべきことややりたいことがないと、死ぬまでぼーっとしているだけ。私の場合、第一の人生が学生時代、第二の人生は社会に出てから、そして写真に出会えたいまが“第三の人生”です。

第三の人生に必要なものは『趣味』と、それを一緒に楽しんでくれる『仲間』、そして続けてきた趣味を『発表する場』。写真のおかげでできた200人以上の仲間がいるから、これからも気が向いたときに、楽しく写真を撮り続けますよ」(西本さん)

インスタも動画配信も“飛び込めば都”

写真だけでなく、動画を通じて、絆をさらに深めた人もいる。

多良美智子さんは、現在90才。コロナ禍で、飾らない日常生活を孫のあーすくんと開設したYouTubeチャンネル「Earthおばあちゃんねる」で配信して人気を集めている。

YouTubeチャンネル「Earthおばあちゃんねる」で人気を集めている多良美智子さん(撮影/馬場わかな)
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「孫が10才のとき、息子がシングルファーザーになりました。寂しい思いをさせないよう、月の半分は息子宅に食事をつくりに行く生活を続けていましたが、新型コロナ蔓延をきっかけに向こうから来てくれるようになり、孫の好物のえびフライとちらしずしをつくっているところを撮影して、YouTubeにアップしたんです。それが動画投稿の始まり。

世界中の人が動画を見ているって、最初はよくわからないし恥ずかしかったけれど、どこの誰ともわからない人たちから応援するコメントをたくさんもらえて、驚くと同時に安心できました。私が“あーすのおかげだね”と言うと、“ばーばのおかげだよ!”と返してくれるのがうれしくて。

老後に不安を感じているかたも多いでしょうが、新しいことに一歩踏み出してみると、全然不安はなくなる。大切なのは、その一歩は“自分の好きなこと”にすることね。

多良さんは、1967年から住んでいる団地での暮らしを「Earthおばあちゃんねる」で配信(撮影/馬場わかな)
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孫には、私が寝たきりになっても撮影を続けて、どんなふうに弱って、どうやって亡くなったのかも動画で伝えてほしいとお願いしてあります」(多良さん)

お料理インスタグラマーの佐智子さん(90才)が投稿を始めたのは85才のとき。離れて暮らす家族に向けて“生存確認”のつもりで始めた日々の料理写真が「品数が多くてすごい」「彩りがきれい」と評判を呼び、現在のフォロワー数は8000人以上にもなる。

お料理インスタグラマーの佐智子さん
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「毎日数百人もの人が『いいね!』をつけてくれると、やりがいもありますし、“ちゃんとしなくちゃ”と、身が引き締まる思いにもなります。

フォロワーさんに“寒くなってきましたから、かぜに気をつけてください”と言っていただきますが、実はいままで一度もかぜをひいたことがなくて。お医者さんにも“あなたは100点中120点の健康体です”と言われるほど。

佐智子さん(@zuozhizi17)の投稿は「おごちそうさま」の言葉で締めくくられる
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元気の秘訣は、毎日3食、自分でつくったものを食べることですね。つくり置きは好きじゃないんです。それから“楽しそうだな”と思ったら、すぐに動くこと。調理師免許を取ったのは子供たちが独立した50才のときですし、80才のときには習字の師範の免状も取りましたよ。いまでは昇段試験の最年長審査員です(笑い)」(佐智子さん)

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