
日本でもっとも有名なプロ野球選手であり、レジェンドと称えられた長嶋茂雄さん(享年89)が6月3日、旅立った。引退試合での「巨人軍は永久に不滅です」の言葉通り、読売ジャイアンツ一筋だった野球人生では首位打者6回、ホームラン王2回、打点王5回といくつもの功績を残し、最優秀選手にも5回輝くなど「プレーでファンを魅了する」野球を体現。同時に、その親しみやすい人柄が多くの人に愛された。そこで人生を通じて、ミスターが愛し、素顔を見せた名店を紹介する。

遠征などやプライベートで関西を訪れることも多かった長嶋さん。そこでもお気に入りの味や、わざわざ足を運んだ名店が。関西を訪れた際に味わった、長嶋さんと家族が大好きな逸品を取り上げる。
「どうしても食べたい」と注文した、亜希子夫人も好んだ絶品茶漬け
セットメニューを平らげてステーキも堪能した
京都府・丹後出身の初代が京都の和菓子店で修業後に開いた「元祖・お茶漬けの店」となる「丸太町 十二段家」。長嶋さんが訪れたのは25年ほど前のことだ。
「時代祭が開催されていた10月でした。プロレスラーのアントニオ猪木さんと一緒に来られて、セットメニューの『菜の花』を注文されました。実は、奥さまの亜希子さんも通われていて話を聞いていたそうなんです。
それで『どうしてもお茶漬けが食べたい』と言ってくださいました。セットをペロリと召し上がって、その後にはステーキまで! 食べた後はお店にいたお客さんと写真を撮ってくれて、常連さんのなかには“家宝だ”と大切にされているかたもいます」(専務・秋道教子さん)

長嶋さんが食べた「菜の花」(3500円)には、刺し身、季節の一品物、だし巻きや赤だしがつく。お茶漬けは温かいほうじ茶をかけ、香りも楽しめる。だし巻きは卵と同量のだしを混ぜ、ふっくらとした焼き上がり。


大スターの共演

3代目店主の秋道賢司さんと、長嶋さん、アントニオ猪木さんが並ぶ貴重なショット。長嶋さんは居合わせた客にも「写真を撮りましょうか」と声をかけたそう。

「丸太町 十二段家」
住所:京都府京都市中京区常真横町184−3
営業時間: 11時半~14時、17~18時半(昼、夜ともに売切れ次第、閉店)
定休日:水曜定休
ミスターが名づけた「うめちゃん餃子」
脳梗塞で倒れた際も冷凍で届けた
高校球児をはじめさまざまなスポーツ選手が宿泊する「ホテル竹園芦屋」(旧・竹園旅館)は読売ジャイアンツの定宿でもあり、選手、監督時代を通じて長嶋さんとの親交は70年にも及ぶ。「うめちゃん餃子」は初代料理長を務めた梅田茂雄さんが作った。創業者の娘で、茂雄さんの妻である梅田多美子さんが回顧する。

「初めて長嶋さんに会ったのは私が10才の頃です。竹園はお肉料理をよく出す旅館でしたが、長嶋さんが2度目の監督をやっているときに主人が餃子を出したらとても喜んでくれて、『うめちゃん餃子、作ったの?』と。梅ちゃん餃子が生まれた瞬間です」(多美子さん・以下同)
2004年に長嶋さんが脳梗塞で倒れた後も、冷凍餃子を送った。
「直接お持ちしたこともありました。長嶋さんは『餃子か、うめちゃん餃子か。頑張って売っていこうな』と言ってくださって。それが販売し続ける理由です」
長嶋家の冷凍室には常備されていたという。
「今日はうめちゃん餃子にしよう、と夕食時などに言ってくださるみたいで、欠かさずに送っていました」
「うめちゃん餃子」は1袋12個入り(800円)。ホームページからの申し込みでお取り寄せも可能。

キャベツ、ニラ、豚肉がたっぷり入り、卵をつなぎにしたジューシーな餃子。長嶋さんには1人前として7個を出していたという。

店内には最後に会った、思い出の一枚が
2022年の夏、長嶋さんの自宅に招かれ餃子のパッケージに「勝つ」のサインを入れてくれた。いまも店頭に飾られている。「最後に会った、思い出の一枚です」(多美子さん)。

のれんの字は王貞治さんが書いたもの
店先のれんの字は、王貞治さんが書いたものだそう。

「芦屋うめちゃんの味」
住所:兵庫県芦屋市大原町11-8
営業時間:11~17時(餃子の販売のみ)
定休日:火曜定休
※女性セブン2025年8月14日号