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《現金や預金よりもお得になるケースも》生命保険でとして「子や孫に遺す」ことのメリット 相続税対策、遺言書の代わり、“負の相続”の回避も

相続税による課税負担が増していくため、早めの生前贈与で財産総額を減らすことが重要になる(写真/イメージマート)
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50才を過ぎて人生後半戦に入る時に、まず見直したいのが保険だ。自分の老後資産だけではなく、保険は「子供や孫への相続」にもなる。相続に関連する法律が急激に変化し、中でも「生前贈与」や「暦年贈与」についてのルールはここ数年で大きく様変わりした。年間110万円まで非課税となる暦年贈与は、亡くなる3年前までの贈与が持ち戻しとなって相続税の対象とされていたのが、2024年からは「7年前」まで延長されることになり、今後はさらに拡大される見通しだ。

早めの生前贈与で財産総額を減らし、若い世代へ資産を移行することを促す狙いがあるが、一方で相続税による課税負担がこれまで以上に増すことは明白だ。

保険でお金を遺す方が得になるケースも

むしろ、現金や預金で残すよりも生命保険で渡す方が、受け取る側が得をするケースも少なくない。ファイナンシャルプランナーの松浦建二さんが解説する。

「生命保険の性質上、死亡保険などの場合、両親や祖父母が支払った保険料の総額よりも子供や孫が受け取る保険金の方が、基本的には多いのです。

さらに、保険金は法定相続人1人につき500万円までは非課税なので、現金では相続税がかかる場合でも、保険に入っていることで税金を抑えられる。相続人が、妻と子供1人なら、1000万円までは相続税の対象になりません。死亡保険金が1500万円なら、ここから1000万円を引いた500万円のみが財産として加算されます。また保険金は受取人を指定できるので、相続争いを避けることにもつながります」(松浦さん・以下同)

銀行口座は、本人が亡くなると凍結され、お金が引き出せなくなるが、保険金は保険会社に請求すればすみやかに受取人に支払われる。万が一のときに、すぐにお金が手元に入るのは生命保険の大きなメリットだ。

保険金は保険会社に請求すればすみやかに受取人に支払われる(イラスト/河南好美)
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相続や生前贈与とは異なり、妻や夫、子供といった法定相続人だけでなく、保険は誰でも受取人にすることができる。受取人をきちんと指定しておけば、遺言書の代わりにもなる。「子供ではなく、孫に大きなお金を残したい」「介護の面倒をみてくれた三男夫婦にほかのきょうだいより多くお金を残したい」という希望も、生命保険なら叶うのだ。

ただし、保険金は保険会社に請求して初めて受け取れるので、子供や孫などの受取人には必ず事前に伝えておくこと。

古い空き家や地方の山林といった“負動産”や、借金など負の遺産が多い場合、「相続放棄」をするとほかのすべての財産も相続できなくなってしまうが、保険金だけは例外となるのも覚えておきたい。

また、保険料を早めに払い込むとより有利になるため、資金にゆとりがあるなら頭金を増やすのもいい。例えば、60才で保険金1000万円の終身保険に加入した場合、初年に912万円、2~5年目までに毎年約20万円ずつの支払いで、5年間で払い込みを終えると、そこに配当金がつく。

払い込みを終えた翌年に解約しても受取金額は1038.6万円となり、払い込んだ保険料も設定した保障額も上回る。退職金などを使って保険料を一気に払い込めば、銀行預金とは比べものにならない利益がつくことになるのだ。

“自動”で暦年贈与ができる「生存給付金付定期保険」

相続対策として保険に加入したいが、終身タイプだと支払いが負担……という場合には、「生存給付金付定期保険」もある。掛け捨てで返戻金がない代わりに、月々の保険料は安く、3年ごとに保険料の3%が給付金として受け取れるほか、一時金としてまとめて受け取ったり、年金形式で受け取ることも可能。受取人は本人でなくてもいいので、生前贈与としても活用できる。その場合、年間110万円を超えると贈与税がかかることを忘れずに。

「受取人はもちろん、受取日も指定することができて、通知が贈与契約書の代わりとなるため、互いに手間もかかりません。一度指定すれば、渡したいタイミングに“自動”で、暦年贈与ができます。遺留分にも含まれないので相続争いが発生してしまったとしても、意図せぬ受け取りは起こりません。相続したい人にしっかり渡すことができます」

学資保険は返戻率104%

子育て世代や孫の教育資金を備えておきたい人には、学資保険もある。一度加入すると、解約に手間がかかるため“さわれない貯金”として重宝する。

「かつては支払った保険料と受け取れる保険金にさほど差がないため見劣りしていましたが、昨今の金利の上昇に伴って魅力が増しつつあります」

1回に支払う保険料が高いほど払込総額は減って返戻率は高くなるので、50代で契約するなら月々の支払額を上げるのも手。ただし、金額が年間110万円を超えると贈与税の対象となるので注意しよう。

孫の学費なら学資保険がおすすめ
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一方、学資保険は契約者が払込期間中に亡くなってしまった場合は、その後の保険料が免除されるが将来受け取れる学資金額は変わらないため、高齢で契約する場合は、無理に払込期間を短縮する必要はない。

例えば、50才の女性が、300万円保障の商品を契約した場合、年間約55万円の支払いで、5年間で支払いを終えると保険料の総額は277万800円で、返戻率は108.2%。これを、月々約1万3350円の支払いにすると、保険料の総額は288万3600円となり、返戻率は104%となる。いずれも、ほかの商品と比べると小さな率に思えるが、年間1%にも満たない定期預金の利率と比較すれば増えやすいことは一目瞭然だ。

商品によっては、クレジットカード決済できるものも増えてきており、支払いによってポイントやマイルを貯められて「ポイ活」にもなる。支払いの仕方も工夫すれば、よりお得になる。

※女性セブン2025年1月2・9日号

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