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【熟年離婚の住宅問題】マイホームは夫婦で分け合う共有財産、離婚を考えたら「名義」の確認が重要 離婚後の名義変更なら税金をかけずに夫から妻へ渡すことも可能なケースも

結婚後に建てた家も離婚時には夫婦で分け合うべき共有財産になる(写真/イメージマート)
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近年増加している「熟年離婚」。厚生労働省の調査では、2023年に離婚した約18万3800組の夫婦のうち、同居期間20年以上の“熟年夫婦”は約3万9000組と全体の約22%を占め、過去最高の割合となった。

熟年離婚を考える50代以上の女性の中には専業主婦やパートで働く人も多く、ひとりになってからのお金は死活問題。妻がしっかりお金を手にして離婚するにはどうすべきか。

住宅ローンは無視していいケースもある

離婚を考えた妻の多くが「夫と別れたら、どこに住めばいいのか」と悩むが、安心してほしい。結婚後に建てた「マイホーム」も、離婚時には夫婦で分け合うべき共有財産だ。  宅地建物取引士で住宅ローン問題支援ネット代表理事の高橋愛子さんが、「自宅」について最初にすべきことをアドバイスする。

「離婚を考えたら、まず、登記簿謄本を取得し、『家の名義』を確認してください。登記簿を取るために必要な地番は、固定資産税の納付書などに記載があります。自分が専業主婦で100%夫名義でも、結婚前に働いていたときのお金などで頭金を出していると、共有名義で自分の持ち分がある場合があります」

そのうえで、自分が家の「連帯保証人」や「連帯債務者」になっていないかを確認し、自宅の評価額と、ローンの有無と残債を確かめよう。家を売ってもローンの残債が残るなら「オーバーローン」、家を売ると手元にお金が残るなら「アンダーローン」だ。ベリーベスト法律事務所の弁護士・佐久間一樹さんが解説する。

「妻が連帯保証人や連帯債務者の場合、オーバーローンなら離婚後も返済義務が生じますが、そうでなければ、ローンがどれだけ残っていても、妻には関係ありません。アンダーローンの場合は、連帯保証人や連帯債務者かどうかにかかわらず、売った際の利益が財産分与の対象になります」

離婚後も妻が自宅に住み続けるためには、夫から妻へローンの名義変更を受ける必要がある。このとき、もしオーバーローンで、妻が専業主婦などで返済能力が低い場合、名義変更できるかどうかは金融機関との契約内容次第だ。

負担は増えるが、離婚できずに苦しみ続けたり、離婚後に家を失うくらいなら、残りのローンを自力で払うのも選択肢の1つだと、離婚カウンセラーの岡野あつこさんは言う。

札束と家の模型
離婚を考えたら登記簿謄本を取得し、家の名義を確認する必要がある(写真/Photo AC)
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「収入がないと、ローンの借り換えは認められにくい。“妻がローンを借り換えられず、別れた夫に毎月ローン分のお金を振り込んで払ってもらう”という、居心地の悪い方法を取ることになる人もいます。それなら、離婚する3、4年前から働き始めて、自分でローンを払えるようになる方がずっといい」(岡野さん)

「妻が自宅に住み続け、ローンは夫が払う」と決めた場合、途中で払わなくなる夫も多い。

「それを避けるためには、離婚協議書に“夫がローンを払わない場合、強制執行する”と記載した公正証書をつくっておくこと。口約束だけは、絶対にしてはいけません」(高橋さん)

財産分与で自宅をもらう場合は、離婚した後に元夫から自宅を渡してもらうのがいいだろう。税理士でマネージャーナリストの板倉京さんが解説する。

「名義が夫から妻に変わる場合は、贈与ではなく売却という扱いになり、売った側の利益に税金がかかります。そこで使えるのが『居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例』といって、他人に自宅を売る際、3000万円の利益までは税金がかからなくなる制度です。すでに離婚して『他人』になってからなら、元夫は税金をほぼ払わずに自宅を元妻に渡せる。円満に別れてくれる夫になら、なるべく負担をかけないように、提案してみてもいいでしょう」

これらの財産分与は、離婚から2年以内に請求することもできるが、佐久間さんは「できるだけ離婚成立と同時に請求」することをすすめる。

「離婚を切り出してから長年別居したり、離婚時に財産分与を先延ばしにすると、その間に相手が財産を使い込んでしまったり、売却してしまう可能性があります」(佐久間さん)

相手が離婚に応じず別居する場合、夫はその間は婚姻費用を払い続けなければならない。そのため「離婚に応じて財産分与をしてくれたら、もう婚姻費用を払わなくていいから」と、交渉に役立つ場合もある。

チェックしておくべき『夫の財産』一覧
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離婚で請求できるお金の対象はこんなにある
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※女性セブン2025年4月17日号

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