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《着々と南下しているクマ、その先にある大都市圏》市街地に迷い込んだクマは“緊張状態”か パニックなって、人間を敵だと認識し激しく攻撃する危険性も 

クマが大都市圏に出没する可能性がある(時事通信フォト)
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 未曽有のクマ被害の終焉はいつになるのか──多くの人が気を揉む問題のトンネルの出口は見えない。人身被害が増え続けるなか、クマはより大きく、強く、恐ろしくなっている。最新の実態に迫った。【前後編の後編。前編から読む

着々と南下しているクマの被害

 環境省の発表では、クマによる人身被害の約7割が東北地方に集中していた。ところが11月23日、栃木県鹿沼市で74才男性が自宅の庭でクマに襲われ左の顔面と左の上半身を負傷。11月28日には、群馬県のJR沼田駅にある公衆トイレにクマが出没し、69才の警備員の男性がケガをした。同駅は通勤客や学生が多く利用する市街地にあった。

 クマの被害が着々と南下していると言っていい。その先にあるのは大都市圏だ。東京農業大学教授の山﨑晃司氏が解説する。

「クマは身を隠せる場所を通って移動する習性があります。川の両側の木立を利用して移動することもあるので、河川敷を伝って街に迷い込むケースは考えられます。例えば東京の青梅市や八王子市で目撃されたクマが、多摩川沿いを移動して世田谷区などに出没する可能性はゼロではないでしょう」

河川敷を伝って街に迷い込むことも考えられる(写真/PIXTA)
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 クマは臆病で積極的に人を襲わないとされてきた。なぜ最近は人を襲うクマが増えたのか。

「市街地で起きている人身被害には、クマの精神状態もかかわっています。市街地は迷い込んだクマにとって心穏やかに過ごせる場所ではなく、おそらく緊張状態にあるはずなので、ちょっとしたことでパニックになり、人間のことを敵だと認識して激しく攻撃する危険性もあります」(山﨑氏)

専門家の間でも意見は分かれるクマへの対応

 少しでも人身被害を減らすため、11月13日から警察官がライフル銃でクマを駆除できるようになった。だが、そうした動きが別の厄介な問題を生み出してしまっている。

 箱わなにかかったクマが檻をかんだりひっかいたりする様子がニュースなどで流れると、自治体には「歯や爪を痛めるから動物虐待だ」という声すら寄せられる。ライフル銃で駆除する動きに対しては、さらなる批判の声も届いているという。クマへの対応は専門家の間でも意見は分かれるようだ。

「ただ、クマを捕獲したとして、山へ放せば『捕まっても逃がしてもらえる』と学習し、再び、そしてより大胆に人間の生活圏へ入り込むことも考えられます。そうなれば、被害はさらに大きくなる可能性もある」(猟友会関係者)

 人里に現れては、人間を恐れずに襲いかかり、家屋にも平然と入り込む。クマとの向き合い方の答えを、出すべき時が来ている。

(前編を読む)

※女性セブン2025年12月18日号