健康・医療

《脳年齢の最新研究》人間の脳には生涯を通じて5つの段階があった…記憶力、判断力、コミュニケーション能力が向上する“思春期”は9才から32才まで 

脳の発達には4回に及ぶ大きな「曲がり角」がある(写真/PIXTA)
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 脳は年齢とともに直線的に成長し、頂点に達したら劣化していく──そう考えている人は多いかもしれない。しかし、昨年11月に発表された論文によれば、脳の発達には4回に及ぶ大きな「曲がり角」があるという。この最新研究は私たちの健康長寿に何をもたらすのだろうか、徹底取材した。【全4回の第1回】 

 人間の脳には4つの大きな転換点がある──そんな衝撃的な研究結果を英ケンブリッジ大学が発表した。 

 昨年11月、学術誌『Nature Communications』に掲載された論文によると、人間の脳には生涯を通じて「幼少期」「思春期」「安定した成人期」「前期老化」「後期老化」という5つの段階があり、そこには「9才」「32才」「66才」「83才」という4つの重要なターニングポイントがあるという。 

 医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが説明する。 

「脳はエリアごとに聴覚や視覚、記憶などが機能別に分かれ、それらのネットワークが連携して機能します。これまでこのネットワークの密度は30才前後でピークに達し、その後は緩やかに老化すると考えられていた。しかしこの研究により、実は脳のネットワークは4つの大きなカーブとともに、ダイナミックに変化していることがわかりました」 

 私たちの脳は「大脳」「小脳」「脳幹」に大別される。脳全体の80%を占める大脳は、思考や記憶など高度な機能を司る重要なパーツだが、この大脳も4区分から構成されている。思考や意思決定の中枢である「前頭葉」、物体や空間認知、言葉の理解を担う「頭頂葉」、聴覚情報や記憶を担う「側頭葉」、視覚情報を分析する「後頭葉」からなる。 

 これまで1万人以上の脳のMRI画像を分析してきた脳内科医の加藤俊徳さんが指摘する。 

「脳内には『ニューロン』と呼ばれる神経細胞が集まり、広大なネットワークを形成します。ニューロンは『細胞体』(本体)とその突起である『神経線維』で構成され、神経線維には情報を送信する『軸索終末』と、情報を受信する『樹状突起』があります。ニューロン同士は軸索終末と樹状突起でつながっており、そのつなぎ目である『シナプス』で情報の送受信が行われ、別のニューロンに情報が伝達されます。こうして張り巡らされたネットワーク全体がスムーズに動くことで、複雑な動作や高度な思考が可能になるのです」 

脳内で複雑につながりあう「ネットワーク」
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 今回、研究チームはこのネットワークをMRIで可視化した。0才から90才までの3802人分のMRI画像を収集し、脳全体を90の領域に区切って「白質」や「皮質」などの変化を解析。それぞれの領域がほかの領域とどの程度つながっているか“脳の配線”を解析した。 

「白質は脳内の各部をつなぐ神経線維の束が集まった部分で、例えば大脳の白質ではあらゆる情報はこの“情報の道路”を使って各領域に伝えられます。神経伝達のネットワークが機能するためには白質の状態がとても重要です。大脳の皮質は神経細胞の本体が集まる領域で、この部分で思考や感情が生まれる。 

 研究チームはニューロンとシナプスの連結網を高い解像度で分析し、脳のネットワークの形状が特定の年齢とともに大きく変化することを明らかにしました。それが、『9才』『32才』『66才』『83才』という4つのターニングポイントです」(加藤さん) 

 今回の研究を率いたマウズリー氏は、「人間の生涯にわたる脳の配線の主要な段階を初めて明らかにした研究だ」と述べた。加藤さんはこの研究をこう評価する。 

「脳のそれぞれの領域がどうつながるかに限定し、幅広い年代のデータを集めて統計的に解析したことが大きな特徴です。研究で示された脳年齢の“4つの壁”は脳の若返りに生かすことが期待されます」 

 以下に具体的な研究結果と、脳を若く健康に保つための対策を見ていこう。