
超高齢社会のいま、は子供にとってこそ大問題となるのが「親の老後」。自分自身も年齢を重ねながら、“老い先長い”親の介護や相続、さらには墓守まで、次から次へと難題が降りかかってくる。どんな準備が必要なのか。「実家の大問題」の解決法を専門家が解説する。【全5回の第2回】
まずすべきは「親の心身の状態を把握すること」
都内で夫と2人の子供と暮らす、Aさん(62才)は9年前の夏、岡山県の実家にひとりで住んでいる当時75才の母から終活のために家の片づけを手伝ってほしいと電話を受けた。
2日間の休みを取って新幹線に乗り、関西で暮らしている3才上の兄と久しぶりに実家に足を運んだAさんは、「片づけどころではありませんでした」とため息交じりに振り返る。
「とにかくモノが多いんです。一戸建ての2階は亡くなった父のものやほこりをかぶった家具・家電で倉庫状態。結局、どこから手をつけていいかもわからず、ほとんど何も進まないまま帰ってきてしまいました」
それから2年間、帰省のたびに実家の片づけを進めていたAさんだったが、ある年の正月、77才になった母に認知症の症状が出始めていることに気づいた。
「台所に、未開封のしょうゆが20本以上も置いてあったんです。母は充分あるのに、買い物に行くたびに忘れて買っちゃうのよと言っていました。もの忘れにしては異様さを感じ、恐れていたことがついに始まったと思いました。兄夫婦と私の夫も交えて、誰かが母の近くにいるべきなのか、それとも施設に入れるべきなのか話し合うことにしました」(Aさん)

「認知症かもしれない」と思ったとき、まずすべきは「親の心身の状態を把握すること」。「もの忘れが増えた」など、日常のエピソードを記録しておき、地域包括支援センターやかかりつけ医を通して、もの忘れ外来を受診しよう。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが言う。
「そこで認知症と判断されたら、できるだけ早く介護保険など利用できるサービスを確認しておきましょう。不安やパニック、暴言など状態が悪化してからでは、いざというときに受け入れてくれる高齢者施設を探すのが難しくなる恐れがあります」
このとき、口座名義人が判断能力を失ってからも家族がATMなどを使えるようにする「代理人カード」の申請もしておくと、介護費用の支払いなどがスムーズになりやすい。
本人の状態の次に「家族全体の介護力」を確かめるべきだと話すのは、介護アドバイザーの横井孝治さんだ。「そもそも、現役世代が全面的に親の介護をするのは基本的に不可能」と語る。
「自分たちだけではできないという前提で、子供同士で話し合うのが得策です。お互いの“ここまではできるけれど、ここからはできない”という状況を受け入れること。
その上で、誰が何をどこまでできるかを詰め、可能なら書面にすることが大切です」(横井さん)
これは認知症だけでなく、がんや血管系疾患といった病気の場合も同じ。高齢で歩行が困難など自立した生活が難しくなる予兆があれば、必ず家族で話しておくべきだ。
家族の役割分担が決まったら、「自分たちではできない部分」をカバーする方法を探す。つまり、使える公的制度や民間サービスを調べ、そのために使える予算を検討する。大切なのは「いくらかかるか」よりも「いくらまでかけられるか」だ。
「介護はいつ終わるか誰にもわからない。家族の持ち出しを前提にすると途中でお金が足りなくなる可能性は低くありません。貯蓄や年金といった親の資産を洗い出し、どこまでなら出せるかを逆算しておく必要があります」(黒田さん)