
地震に台風、大雨・洪水と、全国各地で大規模な災害が相次いでいる。命を守る備えは誰もが少なからず意識しているが、もし被害に遭い、無事に生き延びることができたとしたら、その後、日常を取り戻すにはどうしてもお金がかかる。家も暮らしも守るには、どのような備えが必要なのか。【前後編の前編】
甚大な被害をもたらした熊本地震の発生から、8月28日で1か月が過ぎた。現在も約2500人が避難生活を強いられ、全壊・半壊といった住宅被害は4万棟を超える。
この夏は、8月13日に千葉県で4200棟以上が浸水被害に遭い、25日には台風18号が沖縄と奄美地方を直撃、27日には石川県と富山県が、30日には福井県が「レベル5」の豪雨に見舞われるなど、改めて自然災害の脅威を感じた人も多いだろう。
地震や台風、豪雨だけでなく、それに伴う洪水や火災などが全国各地で多発する「災害列島」で生きる以上、命と住まい、そして被災後の生活への備えは欠かせない。水や食料、防災グッズはもちろん、一日も早く元の暮らしに戻るために大切なのが、正しい「保険」の備えだ。
保険に「水災補償」が含まれているかが重要なポイント
日本では災害時にさまざまな公的支援を受けられるが、それだけで生活を再建することは難しい。ファイナンシャルプランナーの清水香さんは「被災すると、生活基盤を失うリスクがある。火災保険や地震保険で備えましょう」と強調する。
災害に備える保険は「火災保険」と「地震保険」があり、火災保険は「火災」だけでなく、水災や風災などの補償も受けられる。
「台風や豪雨などによる洪水のほか、内水氾濫(下水や排水路で雨水を排水しきれずあふれ出す現象)や土砂災害なども火災保険の『水災補償』の対象です。
一方、同じ台風でも旋風や暴風、暴風による物体の落下飛来などの損害は『風災・ひょう災・雪災』の補償対象です」(清水さん)

給排水設備の事故による水ぬれや盗難、破損・汚損なども基本補償の一部。これらを複数組み合わせるのが近年の火災保険の通例だ。全国ファイナンシャルプランナー相談協会代表理事の平野雅章さんが言う。
「一般的には4〜5種類のプランから選び、自由設計型を除き、火災・落雷と風災・ひょう災・雪災はセットにされています。
もっとも重要なポイントは『水災補償』を含めるかどうか。保険料全体の3〜4割を占めるほど保険料が高い傾向にありますが、それは近年の水災リスクの高まりを反映してのこと。基本的にはハザードマップを見て判断すべきですが、浸水・土砂災害リスクが明確でない限り、水災補償は外さない方がいいでしょう」
かつては「マンションの高層階なら水災補償は不要」とされることもあったが、近年は事情が違う。都内のマンション7階に暮らすAさん(56才)が打ち明ける。
「昨年9月の首都圏での豪雨で地下の電気設備が浸水して故障し、マンション全体で大規模な停電が起きたんです。そのせいで、パソコンと薄型テレビ、ドライヤーが故障。火災保険で買い替え費用を受け取ろうと保険会社に連絡したところ、“水災が原因なので補償対象外です”と。結局、総額50万円近い出費になりました」
災害リスク評価研究所代表で災害リスクアドバイザーの松島康生さんが言う。
「2019年の台風では、神奈川県・武蔵小杉のタワーマンションで地下の電気設備が浸水、故障し、エレベーターも水道もトイレも使えなくなりました。また戸建てでも、最近の住宅は気密性・断熱性が高いため、カビが発生して悪臭や感染症の恐れもあります。水災補償をつけていない人は、修繕や買い替えの費用はすべて自腹となります」