犬や猫の心と体の健康にいい飼い方を考えるシリーズ。
今回は、飼い主さんが旅行などで家を空ける際、ペットにどこでどのように過ごしてもらうのがいいか、獣医師にお話をうかがいました。
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猫は預けないに越したことはない
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受けられる人が増えてきました。接種したら、ずっと我慢していた旅行に出かけたいという人も多いのではないでしょうか。
今回は、飼い主さんが家を空ける際に、共に暮らす犬や猫をどうしたらいいのか、預け先の選び方など、獣医師の山本昌彦先生に聞きました。
「個人的な見解になりますが、猫はなるべく預けないほうがいいと思います。1日や2日の外出なら自動給水機や自動給餌機などを使って、自宅にそのままいてもらってもいいかもしれません。
猫は環境の変化に敏感で、ストレスが原因で食欲がなくなったり、胃腸炎や膀胱炎を発症したりすることがあります。知らない場所で知らない人と接するより、人はいなくても慣れ親しんだ自宅で過ごすほうが、ストレスは少ないと思います。その際、温度管理などは気を付けてください」(山本先生・以下同)
期間が長い場合は可能なら友人や親族などに頼む
留守にする期間が長い場合でも、可能なら友人や親族などに、自宅へ通ってもらって様子を見てもらうのがよさそうです。
「その猫と会ったことのある人の家や、かかりつけの動物病院、通っているトリミングサロンに併設のホテルなどで預かってもらえるなら、それもいいですね」
ペットホテルのお試しサービスはぜひ利用を
とはいえ、さまざまな条件が重なって、初めて愛猫をペットホテルに預かってもらうというシーンもありそうです。そんな際には、実際に預かってもらう前に「お試し」サービスを利用するのがおすすめだと山本先生はいいます。
お試しサービスは、ペットホテルに愛犬や愛猫がなじめるかどうか、文字通り試験的に預かってもらうサービスです。一部のペットホテルで導入されているので、近所のホテルで実施しているかどうか確認して予約してみましょう。滞在時間は数時間から半日というところが多いようですが、中には1泊のお試し預かりをお願いできる所もあります。
お試しの間は、飼い主さんが何かあれば駆けつけることができて安心です。晴れて預かってもらえそうだと分かればよし、この子の場合は難しいと分かれば、ペットシッター(自宅を訪問して愛犬や愛猫のお世話をしてくれるサービス)を依頼するなど、別の方法を考えることになります。
犬はペットホテル滞在を最初に考えてOK
さて、犬の場合はどうでしょうか。よく「犬は人に付き猫は家に付く」などと言いますし、猫とはやはり対応を変えるほうがいいようです。
「犬は、飼い主がいない自宅にそのままにしておくと、寂しがって吠えたり暴れたり、トイレの失敗をしたりすることがあります。また、犬は猫と違って、お腹がいっぱいのときでも、エサがあればあるだけ食べる性質です。自動給餌機のようなもので対応するのは難しいのではないでしょうか。たまにエサが入った袋に悪戯をする子もいます」
犬の場合は、ペットホテルに預けることをまず検討して、お試しサービスを利用するのがおすすめだといいます。
「犬は環境が変わることに対して、猫ほど過敏ではなく、ペットホテルが嫌で食事を取らなくなったという話もあまり聞かないので、基本的にはホテル利用で問題ないと思います。お試しサービスで、ホテルの雰囲気やスタッフさんに慣れておくと安心ですね」
犬を預ける前にお散歩の有無などチェック
ペットホテルも多数あり、ケージや個室のサイズ、質感などもさまざまですので、候補のホテルが見つかったら、公式サイトなどでサービス内容をしっかり確認しておくことが大切です。
「例えば、交通量の多い都市部のホテルなどで、安全に配慮してお散歩サービスは行わないところもあります。外でなければ排泄しない子や、お散歩を何より楽しみにしている子には向かないので、事前に確認しておきたいですね」
お散歩サービスがないホテルでも、排泄のために少し外へ出る時間を取るなどの対応をしてくれるところもありますので、事前の確認と相談が大切です。
ペットホテル滞在中の愛犬、愛猫の写真や動画を、メールやLINEで飼い主さんに送信するサービスも一部ホテルで提供されています。心穏やかに観光を楽しんだり、出張での仕事を頑張ったりするために、飼い主さんと愛犬、愛猫のキャラクターにぴったりのお留守番・お泊まりスタイルを整えましょう。
ペットと一緒に泊まれるホテルや旅館という選択肢も
今回は留守番してもらう、預かってもらうときの検討順や確認ポイントを整理しましたが、ペットと一緒に泊まれるホテルや旅館もありますので、旅行を計画する際に、ペット同伴を前提に宿泊先や観光先を選んでみるのも楽しそうですね。
主な旅行予約サイトでは、宿泊先の検索条件に“ペット同伴可”を含めることができるようになっています。
◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん
獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/
取材・文/赤坂麻実
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