ボタンひとつで自動的に床中のゴミを吸い取ってくれるロボット掃除機。今や掃除機をかける時間が取りづらい多忙な家庭はもちろん、体力的にも掃除がつらい高齢者までさまざまな世帯に愛されています。その性能も、ここ20年で大きく進化したそう。家電ライターの田中真紀子さんが教えてくれました。
2002年にルンバが上陸!その当時の“弱点”とは?
「ロボット掃除機といえば、まずアイロボット社の『ルンバ』を連想するかたも多いでしょう。ルンバは日本市場にロボット掃除機がほとんど出回っていなかった2002年に日本に上陸を果たし、以来今でもロボット掃除機業界を牽引しています。
ただ、上陸当初のルンバの性能は、『壁にぶつかったら跳ね返る』『壁際に沿って走行する』といった、ランダム的走行。そのため掃除しない場所があったり、吸引力が弱くやり直しが必要だったり、『あると便利だけど、完全には任せられない』という物足りなさがありました。
ところが今では吸引力は大幅アップ。さらに、人工知能(AI)や高度なナビゲーションシステムも搭載し、間取りを把握して部屋の隅々まで掃除できるように。まさに“ロボット”と呼ぶにふさわしい高性能になってきています」(田中さん・以下同)
とはいえ、市場に出回っているロボット掃除機の中には、こんな“弱点”がある機種も。
厚手のカーペットや床のべたつきに対応できるハイスペ機種も登場
「基本的にはフローリング、カーペット、畳など、ほとんどの床に対応しますが、カーペットに対しては、毛足が長いタイプや厚みがあるタイプだと段差が乗り越えられないモデルもあります。また、ベタつきもゴミの吸い取りをメインとするロボット掃除機ではカバーできません」
ただし、こうした弱点に強い機種もあります。
例えば、後述するパナソニックの『ルーロ』は最大2.5㎝の段差を乗り越えられるため厚手のラグにもひょいっと乗って掃除してくれます。床のベタつきをスッキリさせたいなら「床拭きロボット」を選ぶのも手。
「床拭きロボットとはいわゆる雑巾がけをしてくれる掃除機で、多くの場合、空拭きと水拭きに対応します。一緒に床のホコリも取り除いてくれるので、フローリング中心の家なら、床拭きロボットをメインで使うのもアリ。また最近は、1台でゴミ吸引も雑巾掛けも済ませてくれる掃除機もあり、掃除機がけも雑巾がけも1台で済ませたい人は、こちらを選ぶとより便利でしょう」
田中さんがイチオシのロボット掃除機は、こちら。
【1】 パナソニック『ルーロ MC-RSF1000』
パナソニックのロボット掃除機は、壁際や家具のキワまで掃除しやすい三角形が特徴。
床に物があってもよけてくれる、家具のキワも得意な三角形
「三角形なので、壁際や家具のキワ、部屋の隅まで吸引できます。特筆すべきは、ロボットの性能。パナソニックが千葉工業大学未来ロボット技術研究センターの『SLAM技術」をもとにした『レーザーSLAM』で、部屋の間取りや障害物の場所を正確に把握します。その上で部屋全体のマップを作成し、マップ上をくまなく走行してくれます。
障害物の回避能力にも優れており、『床に物があるからロボット掃除機が使えない』という従来の悩みを解消してくれます。また本体をグイッと持ち上げるリフト機能により、最大2.5cmの段差も乗り越えられ、カーペット掃除もお手の物。『忙しくて掃除の時間が取りにくいけれど、洗濯物の山が片付かないしモノも散らかっているから……』とロボット掃除機をあきらめていた人にはもってこいです」
【2】アイロボット『ブラーバ ジェット m6』
床の拭き掃除を安心してお任せできるのは、こちら。床拭きロボット『ブラーバ』シリーズの最上位モデルです。
空拭きも水拭きも大得意! ベタベタした汚れもロボットにお任せ
「アイロボットはルンバだけでなく、床拭きロボットにも『スマートマッピング機能』を搭載。この機能は部屋の環境を学習して記憶し、アプリを使って掃除したい部屋を指定できます。空拭き、水拭きができ、専用のクリーニングパッドを取り付ければ、パッドに合った清掃モードを自動で選択。
水拭きのときは、水をジェット噴射してから拭き上げるので、ベタベタした汚れやこびりつき汚れ、キッチンの油汚れまでスッキリ。お子さんがいるご家庭や、家ではいつも裸足で歩きたいという人におすすめです。ルンバ『i3』や『i7』、『s9+』シリーズと連携すれば、ルンバが掃除機がけを終えたらブラーバが自動で拭き掃除をスタートしてくれます。
やや値が張りますが2台セットで買えば、掃除機から水拭きまで自動でお任せできることになります」
【3】エコバックス『DEEBOT T9+』
ゴミの吸引も、拭き掃除もすべてロボット掃除機に任せたい。だけど2台置くスペースもなければ、2台もロボット掃除機を買う予算もない――という人におすすめなのが、ゴミの吸引と拭き掃除を1台でまかなえる、こちらの製品。
ゴミを吸引する“掃き掃除”と“拭き掃除”を1台でまかなえるロボット掃除機
「アイロボットと並び、早くからロボット掃除機を手がけ、着実に進化し続けてきたエコバックス社のDEEBOT(ディーボット)。1台で掃除機と水拭きを同時に済ませられるうえ、充電機に自動ゴミ収集機を搭載しているハイスペックモデルです。
掃除が完了して充電台に戻ると、清掃時に溜まった本体ダストボックスのゴミ(約60日分)を収集機内部にある密封型紙 パックに自動で吸い上げてくれるので、ゴミを捨てる手間も削減できるのです。
さらに最新モデルは、障害物の識別精度が従来モデルの10倍になり、コード類を避ける、家具に強く当たらないなど性能もアップ。マッピング精度も従来比4倍になったことで、より正確に間取りが把握できるように。吸引+水拭きモード時は、カーペットを検知すると自動で回避するのでカーペットが濡れる心配もありません。
『部屋に物が多いけれど、家中の掃除をロボット掃除機にお任せしたい』、『掃き掃除と拭き掃除を1台で、それも完全にお任せしたい』という人におすすめです」
今はロボット掃除機とひと口に言っても、厚手のカーペット、部屋の隅、掃き掃除などなど、機種によって得意分野が異なり、その性能もそれぞれ進化しています。これからロボット掃除機を買う人、買い替える人は、ぜひ店頭で試運転したりレンタルしたりして、自分のニーズを満たす1台を見つけたいですね。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん
白物家電・美容家電を専門とするライター。雑誌やウェブなどの多くのメディアで、新製品を始めさまざまな家電についてレビューを執筆している。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
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